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Mar 15, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 前方から、空馬が近づいてきた。

「帰り馬です。あっしが交渉しやすんで師匠を乗っけやしょう」

 目敏く猪の吉がみつけ求馬に了解をもとめた。

「そうじゃな、頼む」  「へい、判りやした」

 法被に褌姿の髭面の馬子に猪の吉が声をかけた。

「兄さん、帰り馬かえ」  「そうだよ」  「景気はどうだえ」

「崖崩れで商売あがったりだぜ」  番役頭の云ったことは本当のようだ。

「上野原まで戻っちゃあくれまえかね」  素早く一分金を握らせた。

「つり銭がねえよ」  「いいってことよ」

「こいつは有り難い」  髭面をくずした馬子が馬の鼻面を上野原に向けた。

「師匠、さあ乗ってくだせえ」  お蘭が済まなそうに馬の背に乗った。

「上野原宿のどこだえ」  「旅籠は決めてねえよ」  猪の吉がうけた。

「そいつは無理だ」  馬子が気の毒そうな顔をした。

「何故だえ」  「崖崩れで旅籠に泊まれねえ旅人があふれていますぜ」

「馬子、いろは屋に着けてくれ」  求馬が指示を与えた。

「お侍は知り合いですかね?」  馬子が不審そうに訊ね返した。

「いや、本陣宿と聞いておる」

「無理とは思うがね」  馬子が独り言を呟き馬を急がせた。

「旦那、大丈夫ですかね」  流石の猪の吉も心配顔をしている。

「高島藩の嘉納隼人正殿の添え状がある、当たって砕けろじゃ」

「なるほど」  猪の吉が嬉しそうに白い歯をみせた。

 宿場に入った。馬子のいうとおり宿場は人であふれている。

「旦那、このままいろは屋に馬を止めてもいいんで」  「かまわぬ」

 馬子が雑踏をぬってひときわ立派な旅籠の前に馬を繋いだ。

「五八さん、そんな所に馬を繋がないでおくれ」

 旅籠から男衆が駆けより馬子に文句を云っている。

「お客の頼みだよ」  求馬が進みでて、「番頭は居るかの」

 何時もの乾いた相貌をみせ低く訊ねた。

「貴方さまは何方です」  「いいから番頭を呼んでくるんだ」

 求馬の威圧に押され男衆が驚いて奥に駆け込んだ。馬子が興味深く見守っ

ている。ほどなく恰幅のよい五十前後の男が姿を現した。

「わたしがこの屋の番頭でございます。何か御用と承りました」

 慇懃無礼な言葉づかいで三人を眺めた。

「この旅籠は諏訪高島藩の本陣宿じゃな」  「左様にございます」

 求馬が懐中から、嘉納隼人正の添え状を差し出した。手に取り読み下した

番頭の顔色が変わった。

「これは恐れおおい事を申しあげました、すぐにお部屋の用意をいたします。

どうか玄関にお回り下さい」小腰をかがめ三人を案内した。

「これは驚き桃の木だ」  馬子が驚いた顔をして去っていった。

「此れ、誰か急いで足濯ぎの桶をお持ちなされ」

 番頭の声で女衆が、慌てて足濯ぎの桶を三人の前に並べた。

 求馬が一文字笠を脱ぎ、二人も笠を脱ぎ道行き衣と道中合羽を脱いだ。

「さあ奥にお通り下さい、主人がご挨拶とお待ちもうしております」

 番頭の案内で奥の部屋に通された。棒縞の袷をまとった痩せた老人んが

待ち受けていた。

「この屋の主人の五兵衛にございます。知らぬこととてご無礼をいたしました」

「いや、突然に押しかけ造作をかける」  求馬が再度、添え状を差し出した。

 いろは屋の五兵衛が、目をとおし平伏した。 

「確かに江戸家老さまの筆跡にございます」

「顔をあげられよ、我等もこのような仕儀となろうとは思いもせぬこと、一宿の

恩義にあずかりたい」

「ただ今、用意をととのえてございます。まず茶なぞお飲み下され」

 女衆が三人の前に茶碗を置いて去った。

「頂戴いたす」  求馬が作法どおり喫しおわった。

「主人殿に伺いたい、我等は一日も早く諏訪高島城に向かいたい。聞けば鶴川

宿の街道が封鎖されたと申すが、脇道はござらんか?」

「ございますが、素人の方が通り抜けられるか、心配にございますな」

「矢張り、脇道がござるか?」

「桂川の脇を伝って行きますと野田尻宿に出る道がございます」

「桂川とは相模川のことかな?」

「左様にございます、ここより桂川と呼び名が変わります」

「明朝は野田尻宿に向かう所存、判り易い絵図などをお願いいたす」

 求馬の願いに、五兵衛が肯いた。  「何とかいたしましょう」

「有り難い」  求馬が破顔し一瞬、双眸を細めた。

「お部屋の用意が整えましてございます」  襖ごしから声がした。

「さらば今宵は泊まらせて頂く、この事は諏訪因幡守さまにお伝えいたす」

 求馬が佩刀の村正を手にし、三人が番頭の案内で部屋から去った。

 それを待っていたかのように、隣りの襖がするっと開いた。

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Last updated  Mar 15, 2008 12:32:43 PM
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