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Mar 17, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「闘牙の三十郎さま、奴が伊庭求馬にございますか?」 「そうです」

 いろは屋五兵衛の声で襖の翳から、長身で全身鋼のような男が現れた。

 左眉に黒子があり、まぎれもない六紋銭の手練の闘牙の三十郎である。

「わたしどもは甲州道中の繁栄のために、水野忠邦さのに命運をたくしました。

その最大の敵が手中に入って参りましたな」

「いろは屋殿、絵図は正確に描いてもらいますぞ」  「なんとー」

「奴の息の根は我等が絶つ、脇道の途中での」

「・・・・」  いろは屋五兵衛が三十郎の言葉を息を飲んで聞いた。

「宜しいな、お頭には拙者から報告いたす」

 闘牙の三十郎はそれのみを告げ音もなく姿を消し去った。

「こいつは驚いたね」  猪の吉が部屋に通され、分厚い座布団のうえで大はし

ゃぎしている。流石は大名家のつかう本陣宿だけはある。

 見事な床柱、贅をこらした調度品、お蘭までが興奮の面持ちであたりを眺め

廻している。求馬だけが乾いた顔で柱に身をあずけ何事か思案している。

「旦那は、珍しくありゃせんか?」 

「わしは、この手のものには興味がない」 と、一言で一蹴した。

「ご免くださいまし」  廊下より女の声がして襖が開いた。

 廊下には、ずらりと綺麗どころが居並び、女中の手で豪華な膳部が運ばれて

きた。器は漆塗りの蒔絵がほどこされいる。

「一献いかがですか」  求馬の杯を満たし、それぞれが猪の吉とお蘭にも

酌をした。一口飲み干した猪の吉が満足の声をあげた。

「この山奥で下り酒かえ」

「さあ、空けてくださいまし」  求馬は口もつけず杯を伏せた。

「飲まれませんのか?」  芸子が眉を曇らした。

「主人の五兵衛殿に申しあげよ、我等は高島藩の威光をふりかざし、ただ酒を

飲もうとする魂胆はない。一宿の恩義にすがったまでじゃ、この膳部をさげて

もらおうか」  「お客さま、かたい事は言いっこなしですよ」

 芸子が、徳利をもって求馬に媚びるような眼差しを送った。

「芸妓の分際で無礼であろう、下がれ」  求馬の一喝が部屋に響いた。

「あれ、恐ろしい」  綺麗どころが、その剣幕で慌てて逃げ去った。

 お蘭と猪の吉が驚いて求馬を見つめている。

「猪の吉、八王子の宿で一緒になったくの一に気づかなんだか?」

 求馬の言葉に猪の吉の顔が険しくなった。

「あのお駒と名乗った女が交じっておりやしたか」  無言で求馬が肯いた。

 廊下に足音が響き、番頭が慌てて部屋に現れた。

「なにか不都合な事でもございましたか?」

「番頭、主人殿に伝えてくれ。一宿の無理を申したがこのような接待は望まぬ

と、左様に主人殿に申してくれ」

 求馬の痩身から殺気に似た憤りが湧きあがっていた。

「判りましてございます、そのようにお伝えいたします」

「我等は普通の泊まり客じゃ。そのような夕餉を頼む、先ずは酒じゃ」

 求馬の剣幕に驚いて番頭が部屋を辞していった。

「へーい、これが庶民の夕食かえ。さっきのご馳走とは雲泥の差だね」

 猪の吉が、ぶつぶつ言いながら杯を口にしている。

「猪の吉、そろそろ相手も本腰を入れ始めたようじゃ」

 求馬が独酌しながら語りかけた。  「なんぞ不審な事がありやしたか?」

「飛礫の猪の吉もぼけたか」  求馬が親指を天井に向けた。

「ここの主人の五兵衛と云う男は、一筋縄ではゆかぬとみた」

「何か不審な点でもございやしたか」  猪の吉の双眸が鋭くなっている。

「はじめ通された部屋の隣りに、不審な気配がいたした」

「そいつは男ですかえ」  肯いて求馬が膳部の鮎の塩焼きに箸をつけた。目の

下六寸の見事な鮎である。

「これは何ですか?」  突然、お蘭が悲鳴をあげた。

「うじ虫ですか」  「それは、へぼと云うものじゃ。地蜂の子じゃ」

 猪の吉が恐る恐る口にいれ味を確かめている。

「うん、案外といけますよ、酒の肴にはもってこいだね」

「嫌ですよ、あたしは食べませんからね」  お蘭が気味悪そうに皿をよけた。

「おいらが頂きやすよ」  「猪の吉、真剣に話を聞いたおるか?」

「旦那、もっと陽気にやりやしょうぜ」

 猪の吉が茶化しながら、注意深く天井の様子を探っている。

「お主の云うとおりじゃな」  何者とも知れぬ気配が先刻かなする。

 求馬が薄い笑いを浮かべ、小指をたてた。

「しかし勿体ないことをしやしたぜ、あのお駒なら今夜の相手にしたのにね」

「お主でも女に興味があるか」  求馬が珍しく相手となっている。

「少々、女の躯が恋しくなりやしたよ。思いきり泣かせてみたいものですな」

「猪さんてそんなに助平だったの」  すかさずお蘭がちゃちゃをいれた。

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Last updated  Mar 17, 2008 11:58:36 AM
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