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Mar 18, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「小仏宿の露天風呂でおいらが会った、お駒てえ女はなんとも色っぽい躯を

していたね。おっぱいなんて大きくてね、六紋銭の女でも一晩でいいから、

抱いてみたかったね」  猪の吉が声を張り上げた。

 日頃の猪の吉に似合わぬ様子をみて、お蘭が笑い声をあげ、その途端に

お蘭が頬を染めた。求馬に抱かれたことを思いだしたのだ。

 お蘭にとり露天風呂のなかでの秘め事は初めての経験であった。

「猪の吉、あの女も六紋銭のくの一じゃ。いずれは現れよう、その時は存分に

可愛がってやれ」  求馬が猪の吉をけしかけている。

「そういたしやすか」  猪の吉が笑い声で応じた。

「畜生、今度会ったら、ただてはおかないからね」

 屋根裏に潜んでいる曲者が歯噛みをした。それはお駒であった。

「ところで旦那、明日は脇道をぬける積りでございやすか?」

「あえて虎穴に踏み込む積りじゃ」  「六紋銭が襲ってめえりやすな」

「望むところじゃ。お蘭、そちも覚悟いたせよ」

「はいな、旦那となら地獄の果てまで御供いたしますよ」

 屋根裏のお駒が三人の会話を聞き、素早く立ち去った。

「猪の吉」  「判っておりやす」

 声と同時に、猪の吉が素早く部屋を抜け出でていった。

 いろは屋の暗闇で猪の吉が、身を隠し見張っている。いつの間にか茶色の

忍び装束に身形を改めていた、衣装を裏返しとすると忍び装束となるのだ。

これは、昔の稼業で会得した業である。

 猪の吉が懐中から、手拭をだし盗人被りとなった。  「現れたな」

 いろは屋の屋根に人影がみえる、物音を消し素早い身ごなしで小路に飛び

おりた。猪の吉が眼を凝らしている。

 人影は軒下の翳から包みを引出し、着替えをしている。その衣装を包み

背中に背負った、そこには旅慣れた感じのお駒の姿が現れた。

 見事な変身である、彼女は小路に出て旅籠町を歩んでゆく。

 刻限は五つ半(午後九時)頃となっているが、旅籠にあふれた旅人が軒下に

屯している。そこで一夜を明かす積りのようだ。お駒は物慣れた様子で小さな

居酒屋に入っていった、軒下に薄汚れた提灯が風に揺れている。

 なんでも屋と消えかけた店の名前が描かれていた。

(奇妙な村だぜ、いろは屋に、なんでも屋かえ)猪の吉が独り言を呟き、衣装を

裏返しに着替えた。一瞬の間に町人姿となり、ふらりと居酒屋に入った。

 店内は薄暗く貧相な面の小男が、ここの亭主のようで、旅姿の客が所在なげ

に酒を前にしている。お駒は隅に座って徳利をかたむけていた。

「親父、熱燗を頼まあ」  猪の吉がお駒の隣りの醤油樽に腰をおろした。

「あら、先日の旅の人ですか、猪の吉さんと言われましたよね」

「そうだよ、おめえさんは小仏宿で会った確か、お駒さんとか云いなすったね」

 猪の吉が驚いたふうに訊ねた。

「奇遇ですね」  お駒が言葉を返し形のよい唇に杯を運んでいる。

 亭主が熱燗の徳利と湯呑みを置いた。  「へぼの佃煮はあるかえ」

「へい」  「一皿、くんな」  「おかしな食べ物を注文されますね」

「こいつが美味い」  猪の吉が嬉しそうに頬を崩した。

「やけに軽装と思いましたら、荷物がないんですね」

「どうせ野宿だから、草叢に隠してきたのさ」  「旅慣れたものですね」

「おめえさん、宿はとれたのかえ」  「見れば判りそうなものでしょ」

「おめえさんも野宿かえ、まっ、一杯受けてくんな」 猪の吉が熱燗を勧めた。

 お駒が無言で受けた。  「お駒さん、おめえさんどこで野宿だえ」

「これから見つけますのさ」  「ヘボだ」 亭主が皿を置いてさがった。

 猪の吉がへぼを頬ばった。  「気味の悪い物を食べるんですね」

 お駒が奇妙な顔をして猪の吉を見つめた。

(この男は一筋縄ではいかない)お駒が胸裡で呟いていた。

「亭主、厠は何処だえ」  「裏にあるよ」  「ちょいと借りるよ」

 猪の吉が裏に消えた。瞬間、お駒の眼がまたたき、懐中から何かを取り出し、

猪の吉の徳利に入れた。  「臭せえが、川の音が風流だね」

 猪の吉がもどり、湯呑みを空けた。「はいな」  お駒が徳利を差し出した。

「こいつは嬉しいね、美人のお酌だ」  ご満悦で猪の吉が飲んでいる。

「猪の吉さんは、何処に行かれます」  「前に話したように甲府だよ」

 猪の吉が、お駒に徳利を差し出した。  「有難う」 お駒が受け、

「わたしにも熱燗をおくれな」と、亭主に声をかけた。

「やけに躯が暑いね、親父、へぼは強壮薬かえ」  猪の吉が声をかけ徳利の

脇に顔を伏せた。  「おいら、眠くなったぜ」  「どうしたのです」

 お駒の声を遠くで聞き、それっきり猪の吉の意識が失せた。

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Last updated  Mar 18, 2008 11:40:03 AM
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