1179306 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

ソフトバンクの勢い… New! クラッチハニーさん

数年ぶりに居酒屋さ… New! よりすぐりさん

ウィキッド 誰も知ら… New! 千菊丸2151さん

約束! New! 韓国の達人!さん

個人情報が洩れそう… New! Pearunさん

Comments

 人間辛抱@ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Category

Freepage List

Calendar

Mar 20, 2008
XML
カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ クール にほんブログ村 小説ブログへ 励みになります、応援宜しくお願いいたします。

 求馬は昨夜の豪勢な接待を断った、宴席の代金も含めて払ったのだ。

 明け五つ(午前八時)に二人は猪の吉の安否を気遣いながら、いろは屋を出発

した。空が鈍色におおわれているのが案じられる。二人はゆっくりと進んだ。

「お蘭、猪の吉の用意した、非常食も忘れずに持参いたしたか?」

「はいな」  充分に休んだせいかお蘭の顔色はよい、二人は桂川を眼下に見お

ろしながら街道を進んだ。

「甲斐とは山国とは聞いておったが、聞きしにまさる景観じゃな」

 求馬も感心の面持ちをしている。街道の両側は鬱蒼たる樹木に覆われ、

 名もしらぬ山々が、連綿として続いていた。

 お蘭は、いつもの旅姿の道行き衣と菅笠に杖をもって求馬に肩を並べている。

一方の求馬は黒羽二重の着流しに、左肩に柳行李を振り分けとし担いでいた。

 お蘭は歩みながら、猪の吉の事が案じられてならなかった。併し、求馬が何も

語らないために遠慮していた。あの猪の吉が六紋銭に後れを取るは思えない

が、何故か心が騒いだ。旅籠を出て一刻半(三時間)ほど歩き通した。

「旦那、あそこが地蔵堂でしょうかね」  お蘭が上気した顔で指を差した。

 小さな地蔵堂の傍らに茶店が見えた。  「あそこで少し休もう」

 二人は茶店の腰掛に腰をおろし茶を注文した。

「旅のお人、何処に行かれますぞな」  店の老婆が不審顔で尋ねた。

「野田尻宿じゃ」  求馬が渋茶を啜り答えた。

「崖崩れで通れませんぞな」  老婆が気の毒そうに二人を眺めやった。

「お婆さん、この地蔵堂から脇道があると聞いてきましたよ」

「知っていなすったか、ひどい路じゃ。万一、路に迷われたら桂川に沿って

西に向かわれるがよい」  「有難う」  お蘭が礼を云った。

 二人は街道を外れ、老婆に聞いた箇所から潅木を分けた。急勾配の小路が

続いている。まるで獣路のようである。

 降りたつと桂川の碧い水がごうごうと音を響かせ流れる様は壮観な眺めで

ある、ふり仰ぐと街道はまったく見えない。

 西方を眺めると曲がりくねった隘路が続いている。

「お蘭、足元に気をつけよ」  「はいな」

 路の左手は桂川で右手は潅木が生い繁った、急峻な崖がつづいている。

 途中には流木が路をふさぎ、何度となく迂回しながら先を急いだ。

「旦那、なんだか気味の悪い路ですね」 

 お蘭があたりを眺めまわし、薄寒そうにしている。

「辛抱いたせ、もう少し先にいったら休息いたす」

 途中から求馬が、用意してきた鉈をふるって路を開いている。

「まあー、綺麗」  突然、目の前がひらけお蘭が感嘆の声をあげた。

 桂川の急流が緩やかに広がり、垂直に崖が天まで届くかのように切り立って

いる、崖の中ほどに生えた松の大木が路を覆っている。

 もう、一刻は進んだ筈である、砂利や小石まじりの河原が広がっている。

「お蘭、疲れておらぬか?」  求馬が気遣っている。

「はいな、旦那と二人だけでこんな場所に来れるなんて夢のようです」

「猪の吉が居ったら、妬くじゃろうな」  二人は並んで岩に腰をおろした。

 やや天候が持ち直したようだ、厚雲が途切れ青空がのぞいている。

「猪の吉はどうしたかな」  求馬が低くつぶやいた。

「旦那も、矢張り心配なんですね」  お蘭が顔を曇らせた。

 求馬が昨夜の、いろは屋での出来事を語って聞かせた。

「曲者が忍んでいたんですか」  道理でとお蘭は合点した。

 日頃の猪の吉らしくない、女の話が気になっていたのだ。

「六紋銭に捕まったなんて事はないでしょうね」

「あの男のことだ、今頃は跡を追っておろう」

 求馬の相貌にも翳りが見える、急に心細さがお蘭を襲った。

「お蘭、じっとしておれ」  求馬が低い声で囁いた。  「・・・・」

「わしの合図で岩陰に身を伏せるのじゃ」  「六紋銭ですか?」

「判らぬ」  求馬が村正の鯉口を緩めている。

「伊庭求馬とみた、ここは地獄の路。待っておった」

 突然、不気味な声が木霊した。  「お蘭、身を伏せるのじゃ」

 小声で注意を与え、「六紋銭か、またもや命を捨てに参ったか」

 冴えた声をかけ孤影をゆっくりと河原に向かって進めた。

血風甲州路(1)へ






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Mar 20, 2008 11:08:28 AM
コメント(7) | コメントを書く
[伊庭求馬孤影剣] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.