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Jun 17, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬無情剣

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      「騒乱江戸湊(60)

       (無常剣奔る)

「旦那。由蔵の奴は動きやせんな」

 猪の吉が痺れをきらしている。

 回向院の出開帳が済んでから、由蔵の動きが符丁をあわせたように

ぴたっと動きを止めている。

 博打場も閉まったまま未だに開く様子が見えない。

 万八亭の監視を命じられた天野監物が、先刻、姿をみせ監視を続けるのか

中止するのか訊ねてきた。

 求馬は続行を命じた。彼は嘉納主水からの指示を待っていたのだ。

 しかし、由蔵や女将までが動きを止めたことで迷いはじめていた。

 このままては埒があかない、強行手段に訴えるのみと考えがまとまった。

「猪の吉、わしは万八亭に乗り込むつもりじゃ」

「そいつはいいや、何時ですかえ?」

 猪の吉が眼を輝かせた。

「今宵じゃ」   「それでこそ旦那だ、それであっしの役目は?」

「お主は動くな」

 その言葉に猪の吉か顔色を変えた。

「そいつは殺生だ、あっしも連れていって下さいよ。梅吉の弔い合戦も済んで

おりやせん」  猪の吉が顔を染めて喰ってかかった。

「猪の吉、わしの狙いは万八亭の女将じゃ」

「まさか手込めにしようって訳ではないでしような」

「そのまさかじゃ」

 求馬が顔色も変えずに断言し、猪の吉が唾を飲み込んだ。昔の求馬は平然

と女を犯してきた。それが努めなら、どんな女でも抱く男であった。たとい性病

に冒された女でも抱いてきたのだ。

「殺生ですぜ、師匠はどうなさるんで」

「お蘭には内緒じゃ。女将のお波を犯して闇公方の棲家(すみか)を吐かせる」

「旦那・・・」

「わしの生き様は承知しておろう」

 猪の吉は言葉を失った、昔の求馬の壮烈な生き様を何度となく見てきた

猪の吉である。それ故に二度も最愛の女性を敵の手で失ってきたのだ。

「死生天にあり、これが旦那の生き様でしたね」

「分かってくれるの」  猪の吉には返す言葉がなかった。

 求馬は愛刀の村正を片手に玄関に向かった。

「お蘭は外出中じゃ、戻ったらわしは仕事だと伝えてくれ」

 そう言い残し猪の吉の前より消えた。求馬の孤影が雑踏に交じっている。

 日本橋河岸より天秤棒に桶をかついだ棒手振の男達が、一斉に下町に向か

って駈けてゆく。

 彼等は朝一番の稼ぎを終え、初鰹を担いで下町の長屋に商いに行くのだ。

 本来、初鰹の季節は終わっているが、一般庶民にとってはこれからが初鰹の

季節であった。長屋では女房どもが大皿や丼を持ち出し、彼等を待ち受けてい

る。振り売りの男衆は軒下に桶を置き、一尾なりの鰹を切り身として小分けして

売り歩くのだ。初鰹は江戸っ子にとり、一番に人気のある食材であった。

 求馬はそうした喧噪のなか、大名小路をぬけ神田駿河台へと向かっていた。 

 鬱蒼と繁った樹木が陽光を遮っている。そんな光景に逆らうような着流し姿で

ゆったりと目指す嘉納屋敷へと向かっていた。

 今夜の行動を嘉納主水だけに知らせておこうと考えてのことであった。

 求馬の痩身をみた門番が消え、かわって用人の根岸一馬が出迎えた。

「嘉納殿はご在宅にござるか?」  「お待ち申しておられます」

 根岸一馬の案内で書院に招かれた。主水が書見をやめて待ち受けていた。

 坪庭の池には花菖蒲が咲き乱れ、野鳥が飛び交い長閑な初夏のよそおいを

見せている。

 求馬が闇公方の一件に進展がみられられないことを報告した。

「矢張り思ったとおりでござったか」  主水も合点している。

「嘉納殿、奥山一帯には秘密がありますな。先日の火盗改方の惨殺から推測す

ると、そうした結論になります」  

「たかがやくざ者の由蔵を見張っておるにしては犠牲者が多い、そこが心に引っ

かかっておりました」

 主水の顔つきも厳しくなっている。

「奥山の動きが止まっております。闇公方の消息は相変わらず解りませんが、

由蔵の許に凄腕の浪人が二名加わったと、猪の吉より報告を受けております」

「闇公方の由蔵への肩入れが異常にござるな」

「嘉納殿も、そう感じられますか」

 求馬が薄い笑いを頬に刻んだ。

「何故に闇公方は由蔵を守らねばならぬ」

 主水が濃い髭跡をなでさすり呟いた。

「由蔵は闇公方の重大な秘密を握る男かも知れませんな」

 求馬が重大な示唆を述べたが、今の二人にはそれを裏付ける証拠がまったく

なかったのだ。


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Last updated  Jun 17, 2011 08:31:25 PM
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