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Jun 30, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬無情剣

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      「騒乱江戸湊(71)

 火付盗賊改方長官の、山部美濃守の下知が下ったのだ。

 先陣をきる同心や捕吏は、密かに要地に散って待機する手筈であった。

 山部美濃守は与力の河野権一郎と同心の天野監物、若山豊後の四人で、

天野監物の懇意の浅草御門に近い、四季屋の二階に陣取っている。

 欅の大木が深緑を繁らせ、二階を覆い隠した絶好の場所である。

「組頭、まだ刻限までは十分にあります。一杯やりましょうか」

 河野権一郎が昔のならいで組頭と呼び、山部美濃守の返答を待った。

「天野、大徳利を四本に旨い肴を適当に頼んでくれ」

「畏まりました」

 すかさず天野監物が階段の途中から声をかけた。

「亭主、大徳利を四本頼む。それになにか旨いものを見繕ってくんな」

「へい、活きの良い平目と浅利がお勧めにごぜえます」

 暫くし平目の刺身の盛り合わせと浅利の酒蒸しが、卓上に並んだ。

「皆、勝手にやれ」

 山部美濃守が早速、平目の刺身に箸を伸ばした。欅の葉の間から心地よい

風が吹き抜けてゆく。

「出動の刻限は宵の五つ(午後八時)じゃな」

 一本の徳利で顔を染めた山部美濃守が肘枕で横になった。

「わしは一眠りする。六つ(午後六時)には起こせ」

 と、命ずるや高鼾をかきだした。

「豊後、もう一本やろう」

 天野監物が声を低め呟いた。

「いい加減いたせ」  お頭の河野権一郎が注意を与えた。

「これで最後にいたします」

 こうした機会でないとただ酒にはありつけない。

「わしも一眠りするが、刻限には起こしてくれろ」

 河野権一郎も横になり、すぐに鼾をかきだした。

 残った二人は浅利の酒蒸しを肴にまだ飲み続けている。

「天野さん、水茶屋と賭場の用心棒は何名くらいでしょうか?」

「おいらにもわからねえ、地獄の龍が居ったら面倒じゃな」

「奴がいたら、今度こそ決着をつけてやります」

 若い豊後が顔を引き締めている。

「豊後、無理をするな、奴はおれ達では無理じゃ」

「逃せと言いますか?」

「跡をつけるのさ、闇公方の隠れ家に逃げ込む筈じゃ」

 天野監物が不精髭のはいた精悍な顔で断じた。

 暮れ六つの鐘の合図で一同は、厳重な身支度を整えた。山部美濃守は

塗笠に羽織をまとった。

 既に捕吏は突棒、袖搦、指股を携え出動の下知を待っていた。

「天野さん、我等は賭場を襲う組ですよね」

「そうじゃ、今晩こそ由蔵をお縄にして闇公方の正体を暴いてやる」

 刻限となり、総勢六十名の火付盗賊改方の面々が観音堂の前に集結した。

「よいか、わしは水茶屋を襲う、他の者は由蔵の賭場を襲うのじゃ。腕のたつ

用心棒もおろうが、必ず由蔵を捕縛いたせ」

 山部美濃守が凛とした声で叱咤激励した。

「者共、提灯に灯りを点せ」

 河野権一郎の声が響き、火付盗賊改方の精鋭が奥山に押しだした。

「組頭、あの建物が河内亭にございます」

 薄闇の広がる奥山で河野権一郎が指をさした。

「うむ、数寄屋亭、観音亭、神無月亭、それに万八亭へと続くのじゃな」

 既に建物には灯りが点っている、淫靡で官能的な男女の営みが始まっている

頃である。そうして観るとなんとなく男女の官能の吐息が聞こえるようであった。

「わしは半数を率いて水茶屋を襲う。河野、お主は残りを引き連れ賭場の手入

れを頼むぞ」  

 山部美濃守が厳しい顔で厳命した。

「心得申したが、組頭の人数が不足にござる」

「天野、案ずるな。町奉行所の人数と合流する手筈となっておる」

 流石は先手組の組頭だけある、世が世であれば将軍の先鋒部隊として

真っ先に敵陣に突っ込む部隊であるのだ。

 まさに火付盗賊改方は戦闘部隊であった。

 山部美濃守が小道を右にとった。続々と火付盗賊改方の提灯の列が

坂を上って行く。

「天野、先頭に立て」

 河野権一郎の下知で賭場に向かう組も一斉に押しだした。


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Last updated  Jun 30, 2011 11:38:57 AM
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