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龍5777

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Jul 1, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬無情剣

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      「騒乱江戸湊(72)

 見張りのやくざ者が、賭場に駈け戻る姿が見えた。

「発見された。駈けよ」

 それを見た天野監物が声をあげ、三十名の男が猛然と小道を駈けた。

「親分、火付盗賊改方の手入れだ」

 血相を変えた手下が息を乱し賭場に戻ってきた。

「なんだって」

 由蔵の獰猛な顔が険しくなった。

「何事が起った」

 奥から塩屋茂兵衛が冷酷な顔をみせた。

「塩屋の旦那、とうとう火付盗賊改方が出張ってきやしたぜ」

 塩屋茂兵衛が俊敏に暗闇に飛びだした。火付盗賊改方の定紋を描いた

提灯を先頭に、火付盗賊改方の面々が猛烈な勢いで迫ってくる。

 樹木の間を通し、水茶屋に向かう提灯の灯りも見える。

「畜生、奴等がとうとう動きだしたか」

 由蔵の取り乱したわめき声が聞こえる。

「親分、このまま逃げては闇公方さまに笑われるぜ、よいか皆、片っ端から

皆殺しにする」

 賭場には十五名の浪人が用心棒として待機している。いずれも腕のたつ

連中である、由蔵の配下も三十名はいる。

「親分、相手は三十名くらいじゃ。あんたは捕吏を相手にしな、同心は我等が

あたる」

 塩屋茂兵衛が素早く身支度をととのえ、柄杓(ひしゃく)で冷酒をあおった。

「御用じゃ、神妙にお縄につけ」

 足音も荒々しく捕吏が強盗提灯を振りかざし賭場を包囲した。

「豊後、踏み込むぞ」

「天野さん、気を付けて下さいよ」

 二人とも浅利又七郎の道場で免許を許された猛者である。

 その二人の前に強盗提灯に照らされ、一人の浪人が姿を現した。

「伊庭求馬なる男はおるか」  

 余裕の声で挑発した、それが塩屋茂兵衛であった。

「そのような者は居らぬ、温和しく縛につけえ」

 天野監物が素早く愛刀を引き抜き正眼に構え叫んだ。

「そのような腕では拙者が斬れるものか」

 塩屋茂兵衛が鼻先で嗤いを浮かべ大刀を八双に構えた。

「ゆくぜ素浪人」

 声と同時に天野監物が袈裟斬りで仕掛けた。茂兵衛も素早く反応し、

刃と刃が火花を散らした。それを合図に用心棒の浪人が一斉に襲いかかった。

 捕吏の二人が血飛沫を噴き上げ草叢に転がった。

「野郎共、いまだぜ」

 由蔵の声に背を押され、長脇差を引き抜いたやくざ者が捕吏に襲いかかっ

た。暗闇が支配する奥山に喚声があがり、火付盗賊改方と由蔵一家とが血で

血を洗う闘いが始まった。しかし、流石に捕吏は手慣れている、巧妙に突棒や

指股でやくざ者の足元をすくい、転倒するところを押さえこみ縄をうっている。

 由蔵が長脇差を手にし、塩屋茂兵衛の許に近づいてきた。

「旦那、大丈夫ですかえ」

「心配は無用じゃ」

 すでに塩屋茂兵衛は三人の同心に手傷を負わせていた。

 一方の天野監物は乱戦で塩屋茂兵衛の姿を見失い、浪人二人を血祭りとし

た。若山豊後は一人を斃し、年若い浪人と対峙していたが、若山豊後の小野派

一刀流が完全に相手を圧倒していた。

 眼を血走らせた相手の攻撃を、右から摺り気味に抑え顔面を斬り裂いた。

「糞っ」

 新手の浪人が猛然と上段から豊後の頭上に、空竹割りの荒業を見舞ってき

た。それは猛烈果敢な攻撃であった、豊後は地面に躰を転がし躱した。

 浪人の顔が不気味に歪み、留めとばかり大きく大刀を上段に振りあげた。

 その途端、苦悶の声を漏らし草叢に倒れ込んだ。

「豊後、大事はないか?」

 天野監物が加勢に駈けつけ、背後から仕留めたのだ。

「済みません」

「謝るのはあとにいたせ」

 激闘が一刻ほど続き、用心棒の浪人と由蔵配下が血まみれとなり捕縛され、

辺りに血生臭い静寂が戻った。

「死骸の数を数えよ」

 河野権一郎の下知が響いた。

「お頭、由蔵と代貸しの金兵衛に凄腕の浪人の姿が見当たりません」

 天野監物が不審そうに声をあげた。

「なんと、捜しだすのじゃ」

 河野権一郎が声を荒げた。

 その頃、由蔵と金兵衛に塩屋茂兵衛は、火付盗賊改方の重囲を破り、

堀割に身を潜めていた。


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Last updated  Jul 1, 2011 11:35:37 AM
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