1178067 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

^-^◆【助言の光】支… New! 和活喜さん

いさまろの【1億円稼… New! Isamaroさん

明日から、大型連休… New! 千菊丸2151さん

どんなことでも真剣… New! 韓国の達人!さん

フリマとかPayPayの… New! Pearunさん

Comments

 人間辛抱@ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Category

Freepage List

Calendar

Jul 14, 2011
XML
カテゴリ:伊庭求馬無情剣

にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ クール にほんブログ村 小説ブログへ 

   
   「騒乱江戸湊(83)」

「左様にございます」

 報告を終えた天野監物の顔も赤くなっいた。初めて大目付に直に報告し、

興奮の極みにあるようだ。

 求馬は茶を啜り、静かに茶碗を置き主水に語りかけた。

「今回の件は初めから、火付盗賊改方が眼をつけておった事件にござる。

闇公方や地獄の龍の存在、奥山の賭場や水茶屋もしかりにござる。それも

多くの犠牲者を出しながら、ようやくここまでこぎつけたのです」

「それは拙者も存じております」

 主水が改めてむさくるしい姿の二人に視線を這わせた。

「天野、若山、両人ともご苦労であった。改めて礼を申すぞ」

 主水の言葉に、天野監物と若山豊後が感激のあまり平伏した。

 求馬が外の気配を窺っている。

「どうか成されたか?」   

 見逃さず主水が声をかけた。

「闇公方の隠れ家を捜りに参った、猪の吉の帰りが遅うござる」

「なんと、猪の吉が遣りましたか?」

 主水が思わず膝を乗りだした。

「まずは間違いないものと思っております」

 求馬の言葉で主水の顔に喜色が浮かび、すかさず手を叩いた。

「御用にございますか?」

 待っていたように用人の根岸一馬が顔をだした。

「根岸、六名分の酒肴を用意いたせ」

「畏まりましたが、人数が多うございますな」

「間もなく猪の吉も参ろう。この両名が奥山の秘密を解き明かしてくれた、

その祝い酒じゃ。根岸、そちも一緒いたせ」

 求馬が頬を崩した。こうした心くばりが主水の人柄であった。

「天野、若山、膝をくずしゆるりといたせ」

 二人がどうしたものかと遠慮している。

「遠慮のう膝をくずされよ」

 求馬の助言で正座から胡坐に変え、二人がほっとした様子をみせた。

 数名の腰元がお膳を持って現れ、それぞれの前に膳部を並べて去った。

「我が家の仕来りは独酌じゃ。遠慮のう飲んで食べよ」

 主水が真っ先に独酌をはじめ、求馬も杯を口にした。

 天野監物と若山豊後が嬉しそうに杯を干している、大目付の屋敷で酒を

御馳走になる栄誉が身に染みた。

「伊庭殿、大川に浮かんだ人足の死体や大工等の行方不明は、全て奥山の

地下蔵から始まったことですな」

 主水が大杯を干し訊ねた。

「左様」  求馬が短く応じた。

「両名に命ずる、明日、極秘裡に丘を掘り起し死体を改めよ。構えて悟られ

まいぞ」  主水が下知を与えた。

「畏まりました」

 請けたまった両人の顔が輝いた。大目付直々の命令である。

「さて、地下蔵の大量の武器の処置はいかが計らいますかな」

「嘉納殿、暫くはそのままにお願いいたす。いずれ動きがあります、そこを

一網打尽といたします」

「了解いたした」  主水がすかさず答えた。

 屋敷の玄関が騒がしくなり、根岸一馬が書院を辞していった。

「遅くなりやした」  

 根岸の案内で猪の吉が姿をみせた。

「首尾は?」  求馬が性急に訊ねた。

「上首尾にございやす」

 猪の吉の精悍な顔がゆるんで見える。

「ご苦労じゃ。猪の吉、座って飲め、飲みながら聴こう」

 主水が野太い声をあげた。

 猪の吉が下座で数杯独酌し、美味いねえと感に堪えない声をあげた。

「聴こうか」  求馬が促した。

「旦那の言われた通り、探索の輪を広げたことが功を奏しやした。下谷御徒町

の古屋敷が奴等の隠れ家と分かりやした」

「何か証拠でも見つけたか?」  すかさず主水が訊ねた。

「嘉納の旦那、古屋敷の裏門に船着き場がございやす。そこから両国界隈の

顔役の、菊次郎一家の子分が、食糧などを運び込んでおりやす」

 猪の吉の言葉に天野と若山の二人が仰天した。天下の大目付を旦那よば

わりする猪の吉の態度に驚いたのだ。

「伊庭の旦那には叱られやしょうが、屋敷に潜り込んで捜りをいれやした。

五十嵐次郎兵と言う五十年配の男を頭に、十名位の浪人が屯しておりやす。

その中に地獄の龍も混じっておりやした」

「なんと、地獄の龍も居りましたか」

 若山豊後が驚きの声をあげた。  「さいで」

 求馬が自分の杯に視線を落とし、何事かを思いだそうとしている。

「伊庭殿、どうかなされたか?」  

 主水が見逃さずに声をかけた。

「五十嵐次郎兵。どこぞで聞いたことのある名にござる」

「ご貴殿が知っておられるなら、なかなか手強い男でしょうな」

 主水の顔も引き締まっている。


騒乱江戸湊(1)へ






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Jul 14, 2011 12:14:52 PM
コメント(32) | コメントを書く
[伊庭求馬無情剣] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.