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Sep 29, 2011
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カテゴリ:伊庭求馬活殺剣
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     「影の刺客」(25)

「天野の旦那、驚かないでおくんなせえよ。これはご法度の阿片(あへん)を

吸う唐渡りの道具でございやす」

「この場所で阿片を吸わせるつもりかえ?」

 猪の吉の言葉に天野監物が厳しい顔をした。

 ここはいやしくも火付盗賊改方の組屋敷である、そこで阿片とは、

「堪えてくだせえ。あっしも嫌なんですが旦那のお指図には逆らえやせん、

これを此奴に吸わせれば四半刻ほどで極楽往生しやす」

 猪の吉が説明しながら、煙管のような道具にとろりとした液体を流し込み

火を点した。異臭が牢内に漂った。

「死なれたら元も子もないぞ」

 天野監物が心配顔をしている。

「旦那、此奴はもう長くは保ちやせよ」

 猪の吉が煙管を銜え咳きこんだ。

「大丈夫かえ」

「任せておくんなせえ」

 猪の吉が辛丑の頭を膝にのせ、乾いて干乾びた口元に吸い口を銜えさ

せた。吸い込む気配がし、辛丑の顔色に赤みが差し恍惚となってきた。

「辛丑(しんちゅう)、分かるか?」

 猪の吉が辛丑の耳元に囁きかけた。

「お頭か?・・・面目ない」

 意識が朦朧となっている辛丑が低い声を洩らした。

「これを吸って元気をだすのじゃ」

 再び、猪の吉が何事か囁いた。

「忘れてはおりません、この勤めが済んだら松平定信を殺ります」

 その言葉に天野監物と若山豊後が顔を見つめあった。

「我等、辛組と庚組は深川森下町の古寺に隠れております」

 再び、辛丑が低く呟き、三人の顔色が変わった。

「豊後、大変な情報を洩らしおったな」

「天野の旦那、此奴は息を引きとりましたぜ」

 猪の吉が乾いた声で告げた。

 深川森下町の古寺が奴等の隠れ家と聴いた、二人はそれどころでは

なかった。

 その場所は本所と入り組んだ場所で、北に竪川が流れ南には小名木川

がある。竪川は西で大川と結ばれ、一つ目橋を潜り抜けると大川に出られ

る。そこには両国橋が目の前にあり、大川を横切ると外濠に至るのだ。

 更に二つ目の橋は本所相生(あいおい)町四丁目で、そこからは六間堀が

小名木川へと繋がっていた。いわば水路の要地である。

 この堀割りは深川六間堀から東に三つ又に岐れ、一帯は荒地となっい

た。その西側は埋立地で荒涼とした人っ子一人居ない一帯が続いていた。

「多分、弥勒寺(みろくじ)の近辺じゃ」

「厄介な場所ですね、小名木川から万年橋を潜ると大川に出ますね」

「豊後、奴等が大川の対岸に向かえば、永久橋と箱崎橋がある。そこから

日本橋川を遡ると日本橋じゃ」

「天野さん、奴等は外濠ばかりか内濠まで使うことが出来ますね」

「そうじゃ、日本橋からお城に向かうと金座の後藤家がある一石橋に

突きあたる」

「そこからは内濠になりますね」

「だから昨夜は我等の裏をかいて永田町に出没したのじゃ」

 天野監物と若山豊後が、深刻な様子で語り合っている。

「大層な場所に隠れ家がありやすね」

 猪の吉が興奮で顔を赤らめている若山豊後に話かけた。

「何処でも現れ、何処からでも逃げおうせる場所ですよ」

 若山豊後の言う通りである。

「天野さん、組頭に報告にあがりましょう」

「待て豊後、まずは頭に報告してからじゃ」

 天野監物が頭の河野権一郎の顔をたてるべく豊後を制し、猪の吉に

視線を廻した。

「猪のさん感服したよ、阿片とは気づかなかった。礼を言うよ」

「あっしではありやせんよ、全ては伊庭の旦那の考えです。今回の件を旦那

にお報せいたしやす」

「そうしてくれるかえ、おいらが礼を申し上げておったと伝えてくんな」

「分かりやした。そのようにお伝えいたしやす」

 猪の吉が小腰をかがめ風呂敷包みを抱えて立ち去った。

「我等が北を警戒していると知って、反対側の南で曲者を取り押さえるとは

な、我等では考えも及ばぬことじゃ」

 二人はお頭の河野権一郎の詰所を訪ねた。

「白状したか?」

 河野権一郎の顔に期待感が滲んでいる。

 天野監物が一部始終語り伝えた。


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Last updated  Sep 29, 2011 11:59:30 AM
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