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Oct 11, 2013
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「小栗上野介忠順」(105)


 一行が満足し艦長室に戻ると、榎本釜次郎が性急に訊ねた。

「開陽丸はどうでございました」

「大いに満足いたした」

 上野介が開陽丸の印象を述べ、不敵な言葉を発した。

「幕府の主力艦とし薩長共に見せたいものじゃ。一度、馬関海峡を航行し、

この戦闘艦の威容を奴等に誇示したいものじゃな」

 上野介がそう述べ、排水量二千五百九十トン、三本マストの最新鋭艦が

馬関海峡を航行する威容を想像した。

「剛さん、何を考えておられる」

 栗本安芸守が興味深く上野介を見つめ訊ねた。

「いやさ、幕府海軍の将来構想を考えていたのさ」

 上野介が剽悍な眼差しを和ませた、空気を裂いて飛翔するクルップ砲から

撃ち出された砲弾が、長州の台場を粉砕する様子が、脳裡を過っている。

「お奉行に質問がございます。幕府海軍には何隻の艦艇がございます」

 艦長の榎本が顔を引き締めている。彼は幕府所属の艦艇の隻数が知りた

かった。この開陽丸を幕府海軍の旗艦とし、強力な幕府海軍を造り上げる。

 これが榎本釜次郎の考えであった。

 軍艦奉行の上野介は榎本の質問の意味が理解できる。

「古船も含めれば艦隊としての運用は可能じゃ」

「お奉行、艦隊として運用するには各艦の速力が問題に御座います。速力の

遅い艦と一緒に運用いたせば、艦隊の威力が損なわれます」

 榎本釜次郎が乾いた声で答え、上野介が内心で唸っている。

(数ではないのか) 初めて知った上野介が暫し熟慮している。

 その様子を日焼けした副艦長の沢太郎左衛門が興味深く眺めている。 

「お奉行、如何成されました」

 榎本が不審そうに声を懸け、それに促されるように上野介が口を開いた。

「先ず比較的に新しい艦名から申そうかの。回天、蟠竜、千代田形、富士山形、

高雄、翔鶴丸、朝陽、観光じゃな。観光は老朽艦じゃ、お主の言う艦隊には使

えぬな。運送船としては長鯨、神速、咸臨丸、美香保、これら十二隻じゃ」

 流石は何度も軍艦奉行を経験した上野介である。澱みなく答えた。

「開陽丸を加え戦闘艦は八隻に成ります、勿論、観光は除外いたします」

 榎本釜次郎の眼光が炯々と輝いている。

 運送船は観光を含め五隻となる、これなれば十分に艦隊としての機能を

発揮できる。

「ご奉行、八隻の艦隊を馬関に向かわせ、防長二州を砲撃いたしせは勝てま

す。一戦、戦わせますか」

 榎本の高揚した意見を無視した上野介が、

「十三隻を使って兵員を送り込むとしたら、何名位可能じゃ」

 その問いに副艦長の沢太郎左衛門が代わって答えた。

「割り引いても四千名は可能に御座いいます。勿論、行動範囲は日本に限りま

す。長州藩に艦砲射撃を行い、洋式陸軍を上陸させますか」

「随分と面白い戦いが出来ます」

 榎本釜次郎も白い歯を見せている。

 上野介が晴れ晴れとした顔を挙げた。

「榎本君、君が幕府艦隊の指揮を執る日も、そう遠い事ではあるまい。

それまで開陽丸で艦隊戦術を研究して下されよ」

 その間、塚本真彦は無言で榎本釜次郎と沢太郎左衛門の態度を見つめてい

た。一同は大いに満足し、開陽丸を後にした。

 道々、三人はいま見た開陽丸の威容な姿を蘇らせている。

「殿、失礼ながら艦長の榎本釜次郎殿、少し過敏に過ぎますな」

 用人の塚本真彦が直言した。

「将たる器は少し鈍な人物が適しておる、そちの申す通り沢太郎左衛門の

方が将才があるの」

 上野介が破顔して答えた。塚本の言う通り榎本釜次郎は知識や万国公法な

ど熟知した立派な将である。これは否定できないが、事、戦ともなると明敏過ぎ

て戦機を危うくする恐れがあると上野介も看破していた。

「剛さん、まだ時は充分にござるよ。それまでに決めれば宜しい」

「そうじゃな、瀬兵衛さん。忠告は胸に仕舞っておくよ」


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Last updated  Oct 11, 2013 01:07:02 PM
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