カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
今ごろ……ですが、3月21日に千穐楽(せんしゅうらく)をひかえる劇団四季「オペラ座の怪人」を観てきました。
クリスティーヌを演じる苫田亜沙子さんの声を聴くたびに電流がはしるミュージカルでした。 じつは英語版のCDがお気にいりで、平成13年にニューヨークへ出張したとき、期待感いっぱいで劇場へ行ったのですが、 そのときは、どうにも乗れなかった。 つまらないディテールをなぜか鮮明に記憶しているほうなのですが、 ブロードウェーで観劇ごとに客全員に配られる例の配役紹介小冊子に、代役を案内する紙片が3枚もはいっていました。 開演前に代役起用のおわびが放送されると、ホールじゅうからため息がもれたのを記憶しているのですね。 あれはいま思えば、クリスティーヌか怪人、ひょっとしたら両方が代役起用だったのかもしれません。 直前にやはりブロードウェーで見た「シカゴ」が、英語が難しすぎてほとんど分からなかったのに比べると、 「オペラ座の怪人」はわたしのような外国人にも分かりやすい英語で、それはよかったのですが、 乗れなかった……。 終わったあと、すぐ前の列にすわっていた青年が相棒と、 「xxxが聴きたくて来たのにさ」 「そうだな、だめだったな」 というようなことを言いながら、代役をしめす紙片を床に投げつけていたのも、覚えているのです。 ああ、ブロードウェーで観た公演は、あれはかなりひどかったんだ。 劇団四季公演をいまごろ観て、わかりました。 あぁ、やっぱりもっと早く観にくるべきだった……。 クリスティーヌの苫田亜沙子さんが歌いだすと、舞台が輝きはじめるような。 苫田さんの声の質はほかの出演者をぜんぜん抜いていました。 怪人役の佐野正幸さんも藝の幅の広さを感じさせるめりはりがありました。 そして今回は、「怪人」に魅入られるように感情移入してしまった。 あまり大っぴらに書けないけど、ぼくにもあるひとがいて。 妻子があり、そして歳もとってしまったぼくには、いま以上に近づくことはできないけど。 できることなら彼女の手をひいて舟にのり、隠れ家に行きたい。 音楽にみちた隠れ家に。 彼女は、ぼくのクリスティーヌだったんだ。 しょせん結ばれえず、そして立派な若い男性とひとつになるべきひとだけど、 でも、それでも、クリスティーヌの思いがほしい……。 だから、クリスティーヌが怪人に口づけしたとき、ぼくは電流にみちて蛍のように発光しました。 ひとそれぞれの楽しみ方ができる作品だから、多くのひとから愛されつづけてきたのですね。 例によって最後に苦言を述べると、クリスティーヌに役を譲らされる年かさのプリマドンナを演じた△さん。 あえて実名まで挙げませんが、ソプラノふうの声の質が不愉快。 たしかに、クリスティーヌを引き立てる役なので、うますぎてはいけない設定ではありますが、 聞き苦しいくらい下手であるべき配役ではないはず。 ストーリー設定上の劇中劇のオペラ。 たしかにそこにほんとの実力のあるソプラノ歌手をもってくる予算は存在しないでしょうが、 せめてひとに不快感を与えないレベルの歌が歌える女優さんをもってきてほしかった。 △さんは、たしかに声量はありますけど、それだけでした。 感動の舞台であったことはたしかな劇団四季公演でしたが、△さんが紛れ込んだばかりに画龍点睛を欠いてしまいました。 千穐楽(せんしゅうらく)公演だけでも△さんをはずし、ほんとのオペラ歌手をもってきて、最高の舞台で終えられないものかとおもいますが、 ……今さら無理でしょうね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Mar 16, 2007 08:23:37 AM
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