カテゴリ:美術館・画廊メモ
ちらしを見て、それなりに期待していたが、それを大幅に上回る高レベルの作品群。
審美のセンスも一級だし、江戸絵画スタイルを体系的に網羅してある。 それでいて、浮世絵版画は1点もない。あるのは、菱川師宣も歌川豊国も広重も、肉筆浮世絵ばかり。しかもシミひとつない一級品ぞろいだ。 みごとなコレクション。感服した。 肉筆浮世絵のなかでも、鳥文斎栄之(ちょうぶんさい・えいし)の 「遊女と螢図」 は、遊女の着くずれた胸もとや白い脚が妖しいほどに色っぽいが、ふしぎに凛とした品があり、優雅である。 鳥文斎栄之という絵師を意識したことがなかったが、500石の旗本の出で、美人画で喜多川歌麿をおびやかす存在だったと。 * 伊藤若冲の 「菊図」 と 「松図」 は、みごとな構図美にうちのめされた。 葛 蛇玉(かつ・じゃぎょく)の 「鯉図」 も、ぬっとした鯉が生臭いまでに生きている。 円山応挙の 「美人図」 (安永元年、1772年) は、肉筆の美人画ながら、浮世絵とは異なる気品、ひとつ上級の彩色美があり、上村松園や鏑木清方にまっすぐに連なる。いや、松園や清方と同時代にいるかのよう。一級の美術の超時代性。 超時代のもういっぽうに、琳派の神坂雪佳がいて、徳川時代の作品のなかにひとり大正末の作品で気を吐く。 酒井抱一の 「十二ヶ月花鳥図」 12幅であるが、なんと抱一にはこういう12幅ものが他にも5セットあるのだと。以前見たのは、そういう別の1セットなのだろう。 浦上(うらかみ)玉堂の「千山萬翠図」は、さくさくきびきびした描線がリズミカル。 山本梅逸(ばいいつ)の「畳泉密竹図」は、ふたつの瀑布とそのしもの渓流がひろびろとした画面をつくり、掛物のそとに広がるスケール感がみどころ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jun 9, 2013 04:00:06 PM
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