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カテゴリ:ヤング・マイロン
サンクリッド鉱山のアシオ山山頂では、鉱山の劣悪な環境で重労働を強いられて疲弊しきっていた者たちも、かなり回復してどうにか動けるようになってきた。いくらジョーバンたちの手下が間抜けだとしても、囚人たちが逃走した痕跡が全くないのに気づき、山頂を調べてみる気にならないとも限らない。
脱出から三日が過ぎて、今までは何事もなく過ごせたが、これからは十分に気をつける必要がある。そろそろ山頂から麓に通じる火山の風洞を抜けて、この人たちを安全な場所に無事に送り届ける頃合いである。 「ナスコボス様、そろそろ下山をすべき時かと。」 ナスコボスが幼い頃からの武術の指導者であり、コータッツ王の腹心であるシモン将軍が言った。 「そうですね。皆さんも回復されて来たので、そろそろ出発する事にしましょう。」 そう言ってナスコボスは兵士の隊長に下山の準備と救出した人たちの装備を整える様に伝えた。 アシオ山は火山で、大昔の噴火でできた風洞が至る所にあり、その一部は麓まで通じている。ナスコボスは小さい時からよくここを探検していたので、あらゆる抜け道を知っていた。 「ペパー、ペパーはいる?」 男勝りの彼女がまだ小さい頃、いつも子分にして遊んでいた幼馴染のペパーを呼んだ。彼女の子分だったとは言えペパーも成人してコータッツの兵士として入隊して、今や小さな部隊を任せられるほどになっていた。 「ああペパー、私に何かがあればあなたがこの方たちを先導してちょうだい。いいわね?」 彼女同様風洞を知り尽くしたペパーにそう言うと、ナスコボスはいよいよ洞窟に足を踏み入れた。 洞窟は狭く、通路は固まって表面がゴツゴツした溶岩で覆い尽くされていた。所々真っ赤に燃える溶岩流が灼熱の牙をむいてくる場所もあり、慎重に歩を進めた。途中比較的広い場所で二回ほど休憩を取った後、最後のそして最も危険な渓谷の崖までやって来た。 「姫、小さい時分に私でさえ知らないこんな所で遊んでいたのですか?」 シモン将軍はそう言って舌を巻いた。大人でも足をすくませそうな小道で、人一人が縦に並んで進むのがやっとだった。 「そうよ。ここは私の縄張りだったの。」 彼女は先頭を行きながら澄ました顔で言った。 その時、小道の百メートルばかり先の曲がり角から人影が出てくるのが見えた。 彼女はすぐに立ち止まり伏せるように後ろに合図をした。 しかし、人影は一人、二人と増え総勢二十人ばかりで、どうやらジョーバンの手下の様だ。彼女は振り返りペパーにすぐに引き返して、みんなを別の洞窟に案内するように指示した。 「将軍?みんなが安全に逃げられるまで、私たちでここを守りましょう。」 「姫、ならば私が前に行きます。場所をお代わりください。」 「ちょっとこの狭さじゃ無理ね。まあ見てなさい、将軍に鍛えられた私の腕を存分に見せてあげますから。」 「相変わらず姫もじゃじゃ馬ですな。」 その場に残った二人がこんな会話をしていると、手下たちも二人に気づいたようで、急いでやって来た。 「お前たち。どこへ行く。ううん?お前の顔は確かアクダイ軍から回って来た人相書きで見たような・・・・・、そうだナスコボスだ。」 ナスコボスに気づくと、その手下は怒鳴った。 「お前が奴隷を逃がしたんだろ?おかげで俺たちの仲間が鉱山で働かされる羽目になったぜ。奴隷はどこだ?」 「奴隷などいません。私はここに城下の様子を探りに来ただけです。あなたたち、そこを空けないと後悔する事になりますよ。」 「やかましい。お前をとっ捕まえて頭のところに連れてってやる。そうすりゃアクダイ様のお怒りも少しは和らぐかも知れんからな。」 男はナスコボスの言葉に激昂するといきなり彼女に襲いかかった。 しかし、ここは渓谷沿いの人一人がどうにか通れる狭い小道である。お互いが向かい合い、一対一の対決をするしかない状態でナスコボスに勝てるわけもなく、次々に手下たちは谷底に姿を消していった。まさにナスコボス側から見れば小気味よい勝ち抜き戦の状態になった。 Copyright (C) 2013 plaza.rakuten.co.jp/zakkaexplorer/ All Rights Reserved. 「雑貨Explorer」 今回のキーワードは「ペパー 下山」で見事1件ヒット。 でもなんでこんなキーワードでヒットするかなあ? こんなキーワードを入れる方もそうだけど、出てくる方出てくる方だ。 ちなみにペパーはビートルズのサージャント・ペパーズ・ロンリーハーツ・クラブ・バンドのペパーから取ったのだ。決してペッパー警部ではない。 「このまま下山せずもう1つ先のピークまで。そんな良好なコンディションへと導いてくれるオールラウンドモデルです。」 確かに「下山」はあるが「ペパー」が見つからない。なんで?まあいいか?
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