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カテゴリ:ヤング・マイロン
第三の刺客はキジトラ猫の女に剣を振り下ろした。
その女は至近距離ではなすすべもなくただ眼を見開くだけで彼の刃を正面から身に受けた。 ブーン 重く、しかし鋭く空気を切り裂く音が暗い通路に不気味に響き、剣は彼女を切り裂き足もとの地面に激しい音を立てて火花を散らした。 彼はその瞬間驚きにうろたえていた。 彼の刃は空間を何もなく通り過ぎ、そのまま地面までぶつかり、その反動で持っていた手から剣ははじき飛ばされ、広場の反対側の壁でガチャン、ガチャンと激しい音を立ててようやく止まったのだ。 一瞬何が起きたのか分からずキジトラの女を見たが、その女はまだ先ほどと同じ様に茫然と立ち尽くしていた。 次の瞬間彼の体は大きく飛ばされ、広場の壁に張り付けられ身動きができなくなった。腕も肩も背中も足も、まるで蝋で固められたようにピッタリと壁に張り付いてなすすべがなかった。 すると先ほどの通路から何者かが入って来て、それを見た彼は驚愕した。 なんとネコファムだったのだ。 「あら、まんまと囮に襲いかかるなんてお気の毒さま。」 彼女はそう言うと最初に刺客が襲ったネコファムをくるりとひっくり返して見せた。それは先ほどマイロンに眠り薬を首に撃ち込まれた刺客だった。 「あの薬は強力だから、解毒剤を打たない限り永遠に目覚めないでしょうね?」 ネコファムは言った。 「うっ、うっ、うっ」 彼はわめき散らそうとしたが声は何も出てこなかった。 「私が話して良いというまで勝手に話すことは許しません。」 ネコファムはぴしゃりと言った。 そこに今度はあのキジトラ猫の女と、さらに小柄なヒマラヤン猫の若者が広場に足を踏み入れて来た。 「それにしても見事に引っ掛かったものね。ネコファム姉さんがこの男を操り人形の様に歩かせ、私がこの男にネコファム姉さんの幻影をかぶせ、おまけに私自身の幻影を立たせていたらまんまと引っ掛かるんだもの、陰で見てて思わず笑っちゃったわ。」 マーメッチはまた思い出して笑い出しそうになるのをこらえながら言った。 「こちらからベールを着ているあなたを見つける事はできないけど、あなたからネコファムさんたちの魔術によるお芝居は見えるわけだから、きっと飛びついて来るよと言ったんだけど本当にそうなっちゃた。」 マイロンはそう言いながら舌をペロッと出し、この間抜けな刺客が少し気の毒になった。 「マイロン、あなたの言った通りだったわね。」 そう言ってネコファムは笑って続けた。 「マイロン、こんな悪夢じゃなくもっと楽しい夢が見られるように眠らせてあげなさい。」 ネコファムの言葉にマイロンはコクリと頷き、懐から先ほどの眠り薬を取り出した。 Copyright (C) 2013 plaza.rakuten.co.jp/zakkaexplorer/ All Rights Reserved. 「雑貨Explorer」 今回のキーワードは「囮」で1,927件ヒット。 囮物語?囮でも物語になるのか~?
世の中結構囮の物語あるんだ。
これも。でもこれ囮刑事からすると時代物版になるではないか?
これは正に囮だな。 でもこんなのに食いついた鮎がちょっと可哀想。
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