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カテゴリ:ファンタスティック・パロダイス
狼は屋根の上でにんまり笑った。 最初の長男子ブタの藁の家は口から息を吹き掛けるまでもなく鼻息で簡単に吹っ飛んだ。 次男子ブタの木の家はちょっと手こずったが思い切り息を吸い込んで吹き付けたら、見事に吹っ飛んだ。 逃げ出した二匹の子ブタを追いかけて末っ子子ブタの家までやって来た。さすがにレンガの家じゃどんなに息を吹きかけようが体当たりしようがびくともしない。狼は諦め今屋根に上って子ブタ達を三匹まとめていただこうと早くも舌なめずりしていた所だった。 「爺さんはここで煙突から中に入ろうとして子ブタ達が沸かした熱湯の鍋の中に落ちて大やけどをして失敗した。だが俺は爺さんの失敗から学んだから、もうそんな間抜けはしない。こいつら、『学ばぬ子ブタは今夜のおかず』という諺を知らないとみえる。」 狼はそう言うと屋根の瓦を引っぺがし煙突からどんどん投げ入れた。瓦が鍋を壊し、こぼれた熱湯は暖炉の火の上に撒き散らされ、凄まじい蒸気と煙と舞い上がった灰が部屋の中に充満して、ていのいい催涙ガスになるのである。子ブタ達はたまらず外に飛び出し、狼の夕食となるのである。もし驚異的な忍耐で中に留まればそれはそれで極上のローストポークが出来上がりという寸法である。 瓦を投げ込むと狼は屋根を降り出口で待ち構える事にした。 しかし、いつになっても子ブタ達は飛び出して来るどころか、楽しそうな笑い声まで聞こえるではないか。 窓から覗くと瓦は確かに暖炉に山積みになっているが、元々この煙突、室内空調の排気ダクトであり、鍋で湯を沸かすにも電磁調理機を使うか、給湯機の蛇口をひねるだけであった。 狼はあんぐり口を開けて、何かいいアイデアはないか考え始めた。 しかし、完全防犯システムのセキュリティ警報システムで通報を受けて駆け付けた狩人達にあっさり退治されてしまったのだった。 「この狼、『進歩のない狼は床の毛皮』という諺知らなかったのかなあ?」とオール電化住宅のエアコンから吹き出す心地よい風で涼み、狼の毛皮の上でくつろぎながら、子ブタ達はオレンジジュースで乾杯した。
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