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テーマ:たわごと(26728)
カテゴリ:いろいろ
血管外科という、全国にもあまりない診療科(といっても手術専門で外来は担当しないようだ)のドクターと話をする機会があった。取材じゃなくて飲み会だったが。
脳血管外科とか心臓血管外科は聞いたことあるけど、ただの血管外科。 「珍しいですね」とたずねたら、「ええ。全身の血管をくまなく見られるんですよ!」 と子供のように目を輝かせる。 あ、こいつ血管オタクなんだなと合点がいった。 閉塞性動脈硬化症で人工血管置換術を受けた知りあいのイラストレーターさんの手術を執刀したのが彼だったのだが、偶然、自分の勤務先の版元が出している医者向け雑誌の愛読者で、レーターさんと医者、それぞれと関係のある自分というトリオでなぜか一緒に飲むことになった。 「すごいんよ~。この科の先生達ってみんなマッチョで、体鍛えてて、いい体してんのよお~」 と筋肉オタクのレーターОさんが大分弁丸出しでいきなり肉体賛美がはじまる。おいおい、外科医ならまず腕を褒めなさいよ。 彼女は娘の彼氏(アメフト選手)に横恋慕するほどのガタイのいい男子フェチである。 ドクター「まあ、外科は体力勝負ですからね」 体毛が濃いタイプらしいこのT先生、夜になるとすでにヒゲがかなり濃い。指にも腕にも毛がびっしり! それでマッチョなわけね。はあ。 私「ちなみに、Оさんの手術はどれぐらいかかったの?」 ドクター「(Оさんを見ながら)5時間、でしたね?」 レーター「私は覚えてへんよ。後でそう聞いただけで」 私「うわあ、やっぱり大手術だったんですねえ。その間、ずっと立ちっぱなし?」 ドクター「あ、でも5時間はぼくらの仕事では短いほうです。10時間とか普通ですか ら」 レーター「飲まず喰わずで?」 ドクター「途中で一端出てパン食べたりします」 私「え? 患者を放置して?」 ドクター「いやいや、複数のドクターが入ってますから、交代交代で」 私「血みどろの術着のまんま?」←スプラッタ平気発言 ドクター「まさか。一旦着替えますよ」 しかしこの手術、命に別状はないらしいが、聞けば聞くほどすごくて、術後も常に感染症との戦いなんだそうだ。そうだよなあ、体の深部に異物が入ってて、しかもその中を血液が通ってるんだもんなあ。事実、Оさんも術後1週間熱が下がらず、再手術の危険性があったらしい。 「この症例で後日、論文を書くとするとでしょう。その場合『術後1年、今だ感染せず』って書き方になるんですよ。それほどリスクが高い」 ひえええ~。これだけ医学が進歩しても、感染は完全には避けられないわけ? こと論文にはいたわりの言葉や情けは無用だけど、こう書かれるとまるで感染するのを期待されているような気がするよ。まあガンもそうだよなあ。5年生存率。 医療分野は細菌との戦いの時代はとっくに終わって、とっくにウイルスとの戦いなのかと思っていたが、今だ細菌と闘っている分野もあるわけね。あ、病院や施設内の日和見感染とかも細菌が原因だな。先端医療はもう想像も及ばないところに来ているのに、単純な予防すらできないのも現実か。 私「人工血管がそのまま何年かすると生体に生まれ変わるとかないんですかね? ブラックジャックにあった、体内に入ったままのメスをカルシウムがコーティングして鞘をつくっていたみたいな」 宴席なので、バカな質問を堂々とする自分。 ドクター「笑。ないですねえ。できたらノーベル賞ものでしょうねえ」 私「でも生体由来の臓器っていま研究すごいですよね」 ドクター「血管まではどうですかねえ」 私「皮膚を培養して、こうくるっとチューブ状に縫いあわせても、それは血管に使えない?」 ドクター「ははは、面白いこと言いますねえ」 はっ、酔っぱらってバカな質問しましたか? ねえねえ、私バカ? レーター「T先生はね、自分がいい男見るのが好きなので、毎日病室に若い研修医の先生連れて遊びにきてくれたんよ」 私「へええ。定期回診以外にも」 レーター「うん。毎日夕方。私、本当にこの先生とラブが芽生えるとおもったもん」 私「ないない(笑)。でも、先生、まめですねえ」 ドクター「そうするとОさんが元気になるから。僕らはなるべく患者さんの治ろうとする免疫力を高めてやるのも仕事なので、そのためならなんだってやりますよ」 レーター「な? ええ先生やろ?」 私「Oさん、それはね、ラブでなく免疫あげるためだよ」 私は「なんだってやる」という発言にBL的妄想を巡らせてしまったのだが、手術が終わってもそれだけじゃ終わらないのがドクターの仕事、免疫高めるために患者のご機嫌までとらなきゃならないのは、大変だなあと思い至った次第。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2008.01.26 23:25:57
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