離れて暮らしていた老母が天に召された。
危篤の知らせに私は妙に落ち着いていた。それは、数日前にそれを予感させるような夢を見たからだ。「虫の知らせ」というやつだろうか...
救急で運ばれた際には仮死状態だったそうだが、その後もちなおし私が会った時には少し話もできた。しかしICUで見た母は顔色こそよかったものの、その目にはすでに光がなかった。生気を感じられなかったのだ。駆けつけた親族は安堵していたが、私は内心「今夜にも逝くのではないか」との確信めいたものを感じていた。
その予感は現実となった。日が変わっての早朝に母は旅立った。
私には少年時代からそうした繊細な感覚があり、それをはっきりと自覚していた。
スピリチュアルなものごとを全否定する人がいるが、重力や磁力があるように、目に見えない不思議な力があることを、私はこれまでの人生経験から確信している。
その力は誰に対しても、プラスにもマイナスにも作用する。またその力は、いつ、どのように発現するか事前にはわからない。
だから私は人生が怖い。まだ決まっていないはずの未来が怖い。
私ほどの臆病な人間は、隠れて静かに日々を送るほかない。
「死」は必ず来る。
あとは人生の終焉をどう迎えるか、それが問題だ。
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