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真実一路

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2021.01.11
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カテゴリ:映画

アマデウス ディレクターズカット【Blu-ray】 [ F.マーリー・エイブラハム ]

この映画に魅せられる人には、自身をアントニオ・サリエリに重ね合わせる人が少なくないのではないか。凡庸に生まれながら、特別な才能への憧れを捨てられずに生きる人たちだ。私もその一人なのだが...
1980年代後半はモーツァルト没後200年に沸いていた時期だった。ちょうどその頃公開されたこの映画に、私はどっぷりはまっていた。そして映画とともにその音楽にも浸りきっていた。しかし、2002年に公開されたこの「ディレクターズ・カット版」は観ておらず、ほんとに久しぶりの鑑賞。

この作品はピーター・シェーファーの戯曲の映画化だ。モーツァルトがサリエリの暗躍により毒殺されたというのは刺激的な話だが、日本の『忠臣蔵』と同じで、わかっている史実をもとに創られた物語である。
この「ディレクターズ・カット版」は、意外にも劇場公開版とは全体の印象が違う。この戯曲は、サリエリがモーツァルトの才能に嫉妬し、宮廷の音楽家同僚とともに彼に嫌がらせをしたり、さらには奸計をもって彼を死に至らしめるという内容。その流れは同じなのだが、D・C版では、才能に関してえこひいきをした神に対しサリエリが挑戦状を叩きつけ、その結果(モーツァルトの死)に生涯苦しみ続ける彼の苦悩がよく伝わる形になっている。

物語の進行は自殺を図った老齢のサリエリが病院に運ばれ、病室で神父に自身が行った行状を告白するという体裁をとっている。
昔観たときにはさして気にもしなかったのだが、D・C版を観ると、この形式にこそこの映画の重要なテーマが集約されていることがわかる。つまり、人と神との関わりであり、不条理な現実に翻弄されたとき、人は神とどう向き合うのかという話なのである。
モーツァルトが生きた時代、欧州は近代化への激動期にあった。それまでのキリスト教会の厳格な価値観に代わって、自由・平等・博愛の理念が広がり、それは市民革命の原動力ともなった。モーツァルトはフリーメーソンであったわけだが、サリエリ⇔モーツァルトの対立の構図は、そのまま教会⇔フリーメーソンリーといった権威と自由の対立をも映しているように思われる。

モーツァルトの死因はわからないが、天才に早世の傾向があることは知られていることと思う。神は人に自身の力の一部を与えることがある。しかし、同時にその代償も要求するのだ。それに彼は稀に見る才能に恵まれたが、困窮する庶民でもあった。一方、サリエリは神を呪うが、宮廷での地位に恵まれ貴族同様の生活をしていた。恵まれた環境にあったわけだが、人はなかなか自身を客観視できないもの。
復元されたカット場面のなかで私が一番よかったのは、ウィーンの街中で庶民が行き交うにぎやかな通りを映したシーンだ。その通りを、酒を飲みながら軽快に歩くアマデウスの気楽さがいい。彼は天才だが、やはり庶民だったのだ。





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Last updated  2021.01.11 16:14:45
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