離島の未来、利尻で模索 NPO法人代表・大久保さん 東京から転居、腰据えて移住支援
2021/1/8(金) 9:49配信 北海道新聞 日本に約420ある有人の離島の情報を紹介するNPO法人「離島経済新聞社」(東京)代表の大久保昌宏さん(41)が昨年12月、宗谷管内利尻町に居を構えた。東京を拠点に全国の離島を巡る中、利尻島の風土に魅せられて新たな活動場所に選んだ。コロナ禍で各地の離島の観光業は大打撃を受けているが、「今の時代だからこそできることがある」と、持続可能な離島の未来を模索する。 昨年7月、利尻町の旧沓形中校舎を改修した町定住移住支援センター「ツギノバ」がオープンした。カフェやコワーキングスペース(共有仕事場)を備え、離島経済新聞社が町から運営を委託されている。 大久保さんは2018年からセンター開設の構想に加わり、昨年春から徐々に生活の拠点を東京から利尻町に移し始めた。同年暮れには家を借り、近い将来、家族も呼び寄せる予定だ。「島に来る人たちの挑戦を応援したい」と話し、今後は移住のための空き家の仲介や子育て支援にも取り組む。 全国的な新型コロナの感染拡大で昨年は利尻島も主力の夏観光が低迷した。全国的にも同じように観光客が途絶えた離島は多い。大久保さんのもとには各地の島民から不安の声が寄せられるが、悲観していない。新たなライフスタイルが離島に根付く可能性を見いだしているからだ。 東京生まれ、東京育ち。2010年、友人3人とともに離島経済新聞社を設立した。広告制作の仕事をしていたその直前、知人が移住した瀬戸内海の広島県大崎上島を訪れ、それまで全く知らなかった離島の暮らしに触れたのがきっかけだった。通りすがりにあいさつをしてくれる小学生、「ここは宝島だ」と誇らしげな農家のおじさん―。人と人のつながりが濃密で、地域に誇りを持って暮らす人たちと接し、離島に魅了された。 今は「ritokei(リトケイ)」というウェブメディアや発行部数約1万2千部の季刊紙で離島の暮らしや経済の情報を伝え、離島の地域づくりの支援事業や離島同士をオンラインでつなぐ催しも展開する。コロナ禍前から、島で暮らしながらオンラインで仕事をする「在島ワーカー」も特集し、「地方には都会にない魅力も課題もある。だからこそ、新たな仕事を創出できる伸びしろがある」と言う。 「ツギノバ」の名には「地域の歴史を引き継ぐ、次ぎの未来をつくる」という思いを込め、島で新たな仕事や生活を始める人と地域をつなぐ拠点にするつもりだ。「魅力ある土地で身の丈に合った仕事をする。そんな移住が広がってほしい」と願う。利尻島