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さあ、これから、世紀の恋愛につながる文通のスタートです。
大きな夢を持って音楽の道を志している内山金子さんの歳は勇治(本名)(裕而はペンネーム)より三歳年下であることがわかりました。 愛知県の豊橋とはどんなところだろう?福島に比べればはるかに暖かく、海の幸に恵まれたところに違いない。そして名古屋といえば、東京、大阪に次ぐ大都会だ。必ず良い先生に教えてもらえるだろう。 まずはお礼の言葉。 ※※※ 心のこもったお手紙、どうも有難うござゐます。同じ音楽の道を志す方からの言葉を私は本当に嬉しく読みました… まずは音楽を沢山沢山聴くことです。出来れば楽譜を見ながら。そうすれば楽譜に書かれているフォルテとかピアノとかクレッシェンドなどの表現記号やテンポの指示を演奏家がいかに解釈しているかが分かります。同じ曲でも演奏者によってその解釈は随分と違ふものです。沢山聴いて、自分が一番よいと思う演奏を更に聴くことです。声楽家を目指すなら、まずこれをお勧めします。 そしてそれから自分なりの表現を取り入れて練習なさることをお勧めします。物真似は駄目です。最初は真似でよいですが、本当の芸術家になるためには、自分の個性を活かさなければ絶対に駄目です。勿論発声練習は大切です。声楽家として基本中の基本です。それを毎日やってゐらっしゃるそうですから、貴女はきっと立派な声楽家になれると思ひます。とにかく勉強、勉強、そして熱です。音楽に対する情熱を持つことが一番大切です。好きこそものの上手なれ、と言ひますが、そのとおりです。 勉強といふと、何か面白くない面倒なことと思ひがちですが、それは無理矢理押し付けられる学校の授業などです。好きならば、本当に好きならば、勉強はとても楽しいです。私は昼間銀行に勤めてゐますので、勉強したり作曲するのは夜になります。作曲していると時間の経つのも忘れてしまいます。深夜の二時、三時になるのはいつものことです。 でもときに飽きたり、迷ひが出たりします。それを乗り越えるのは信念と情熱です。熱があれば、そして絶対に音楽家になるのだといふ確固たる信念があれば、苦しい時もきっと乗り越えられるでせう。留学だって決して夢ではないと思ひます。本当に留学したいのなら、私があちらに行って一、二年して落ち着いたら、貴女の留学のお手伝ひも出来ると思ひます。 何か精神論になってしまいました。実際には色々な勉強があります。音楽を聴くことに飽きたら、本を読むのも良いと思ひます。理論書や教科書だけでなく、音楽家の伝記なども、音楽家としての生き方を学ぶ上でとても参考になります。いつか貴女の歌を聴かせて頂きたいと思います。そのときは私の作った歌を歌って下さい。こうして知り合へた友のために曲をプレゼントしたいと思ひます。少し時間を下さい。近いうちに必ず曲をお送り致します。 私の容姿のこと、褒められるのは初めてで、恥ずかしいです。新聞の写真は二年ほど前のものですが、今も変わりません。ご覧のとおりのいたって平凡な男です。 こうしてお手紙を頂ひたのも何かの縁、互いに音楽の道を志す者として、頑張りませう。 新聞には近々渡欧するように書かれていたようですが、今の予定では暫く(半年から一年位?)東京に出て外国語会話などを学んでから、渡欧するつもりです。早ければ来月にでも上京したいと考へてゐます。そのときまで貴女が東京にゐらっしゃれば、きっとお会ひ出来るだろうと思ひます。お時間がありましたら、またお便り下さい。 古関勇治 内山金子 様 ※※※ 手紙に書かれていた、東京の住所を書きました。 留学のお手伝いのことなど、こんな安請け合いはしないほうが良いかとも、裕而さんも思ったようですが、それ以上に、無性にこの乙女を励ましたかったそうです。 彼女のための作曲は、安請け合いでななく、何か彼女のために曲を書こうと思ったそうです。 暫く作曲してなかったので、人に偉そうなことを書いても自分が怠けていてはいけない、と思ったそうです。 さらに 金子、何と読むのだろうと気になります。かねこ? きんこ? きっとかねこだろう。 息子の正裕さんは、お父さんの楽曲をあまり聴かなかったようです。 繰り返しレコードで聴いたのは、「オリンピック・マーチ」くらいだったそうです。 だから、若い頃の正裕さんは、お父さんの偉大さを理解していなかったそうです。お父さんの楽曲は、ある意味で、過去の音楽だったそうです。流行りの音楽からすると、距離があったそうです。 そんな正裕さんがなぜ「君はるか」を書こうと思ったのか?それは、お父さんお母さんが、現代の普通の若者と同じように青春を過ごしていたことを、百数十通にのぼる文通の手紙で知ることができたからです。普通の若者であったお母さん、お父さんの姿をあらためて知りたいと思い、記したいと思ったからです。 表面的にはたくさんの資料が残っています。しかし、ご本人たちがどんな思いで生きてきたのかは、あれほどの栄光にも関わらず、自らは語っていません。 あなたは、親の初恋を知っているか? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.05.16 23:45:37
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