●仮眠効果
●仮眠効果(Sleeper Effect)++++++++++++++++++++++++++++++++++心理学の世界に、「仮眠効果」という言葉がある。「スリーパー効果」ともいう。仮眠効果というのは、脳の中に入った情報が、しばらく仮眠したあと、効果をもち始めることをいう。子どもの世界では、こうした現象が、よく観察される。たとえば子どもをほめたとする。そのときは、子どもは「フン」と言って、軽く受け流す。私の言ったことを深く考えない。が、しばらく時間がたつと、つまりしばらく子どもの脳の中で仮眠したあと、そのほめた効果が現れたりする。「あのとき、林先生(=私)が、ぼくにこう言ってくれた!」と。よく昔の恩師の話をしながら、「あのときあの先生が言ってくれた言葉が、おとなになってから、ぼくの励みになった」という人がいる。それも仮眠効果の現れとみてよい。++++++++++++++++++++++++++++++++++++●情報の熟成情報というのは、脳の中に入った段階では、ただの(情報)。それに加工を加えて、情報は情報としての意味をもつ。(加工を加えることを、「思考」という。)それまでは、たとえていうなら、座右に積み上げられた本のようなもの。必要なときは取り出して読むが、そうでなければ、やがて脳みその中から消えていく。が、ときとしてその情報そのものが、ひとり歩きすることがある。ここでいう「仮眠効果」というのも、そのひとつ。たとえば私が子どもをほめたとする。そのときは、その子どもはそれを、軽く受け流す。私が言った言葉に、重きを置かない。たとえば、「君の空間思考力には、ものすごいものがある」と、私が言ったとする。そのときは、子どもは、「そんなものかなあ……」と思ってすます。が、しばらくしたあと、「空間思考力はすばらしい」という情報だけが、脳みその中で熟成され、それが今度は、子どもの脳みその中で充満するようになる。そしてこう思うようになる。「ぼくは、空間思考能力にすぐれている!」と。これは情報が、(仮眠)というプロセスを経て、効果をもたらしたことを意味する。言いかえると、つまり教える側からすると、この仮眠効果をうまく使うと、子どもの指導がうまくできる。コツは、ポイントをとらえて、うまくほめる。(叱ったり、欠点を指摘するときは、この方法は使ってはいけない。)そしてその場では効果を求めない。(求めても意味はない。)それをブロックのように組み立てていく。「君は、コツコツとやるところがすばらしい」「式なんかも、だれが見ても、わかりやすい」「考え方が緻密だね」と。こうした情報は一度仮眠したあと、(私は「熟成」という言葉の方が好きだが……)、子どもの脳みその中で、大きくふくらんでくる。子どもの自信へとつながっていく。もちろんそのとき、子どもは、私に誘導されたということは、覚えていない。ほとんどのばあい、情報源は忘れてしまう。だれに言われたかは、たいていのばあい、記憶に残らない。しかし情報だけが、脳みその中に残り、その子どもを前向きにひっぱっていく。これを「仮眠効果」という。(はやし浩司 家庭教育 育児 育児評論 教育評論 幼児教育 子育て はやし浩司仮眠効果 スリーパー効果 情報の熟成 暗示 子どもの指導 林浩司)Hiroshi Hayashi++++++++May. 09+++++++++はやし浩司