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神奈川県の藤沢市議会が総額一億七千万円をかけ、議会史を発行しようとしている-。「このご時世にどうかしている」と、驚き憤るメールが本紙に届いた。確かに議会史の計画ではこの概算が示されていた。なぜこんな金額になるのか。 (吉岡潤) 市議会で編さんの方針が決まったのは九月。来年の市制施行八十周年を記念する議会史を二〇二〇~二三年度の四年間で編さんする計画で、議会事務局は概算で約一億七千万円の事業費を示した。 この計画を知って驚いた市民からは、予算化中止を求める陳情が出された。 陳情書を提出した福井雄一さん(76)は「既刊の議会史がどれほど役に立っているか、検証してから事業の必要性を検討すべきだ」と批判。「市民を無視して議会が暴走しているとしか思えない」と手厳しい。四月まで市議だった酒井信孝さん(39)も「他の予算を削り、多額の費用をかけてやるものか」と計画に驚いたという。 なぜこんな額になるのか。議会事務局は「前例に準じた」という。全三巻を作った五十周年記念の議会史作成時の予算は約一億一千万円。これを基に試算した金額とする。内訳は、監修者二人と編集委員三人の報酬や執筆謝礼などに二千万円、担当職員の給与など人件費約六千百万円、民間ビル内に借りる作業室の賃料四千三百万円、印刷製本費約四千万円など。今回は令和への改元もあり、平成の三十年を振り返る内容になるという。 ちなみに議会事務局が県内の自治体を調べた資料によると、十九市で過去に議会史を発行したのは藤沢市を含んで七市。発行費用は横浜市約一億一千万円、川崎市約九千五百万円、相模原市約一億五千万円などで横須賀市は市制百周年記念事業として全九巻を約一億九千万円で作っている。 県外の同規模の三十三市も調べたところ、議会史を作っているのは十六市。残る半数は発行しておらず、自治体によって判断が分かれているようだ。 十二日の議会運営委員会は予算化中止の陳情を全会一致で不了承とした。ただ、議員らは「過去の問題を客観的事実として残すことは大切」と記録の意義を強調する一方、金額については「費用縮減が必要」と注文。これを受けて、議会事務局はすべてを製本せずにデジタル化したり、来年度は庁舎内に確保するのが難しい作業室を翌年度以降に移したりする縮減策を提示している。 議会史編さん委員長を務める竹村雅夫市議(民主・無所属クラブ)は「議会史の重要性を市民に理解してもらえるように努めたい。費用や内容はこれからの議論」と説明する。 地方議会の課題に詳しい神戸学院大の上脇博之教授は「地方自治において、議会が市民の声を受けてどのように動いたのかという記録を残すことには意味がある」と、議会史の意義を認めた上で、こう指摘する。「バブル景気のころに作られた金額を上回るようでは理解を得にくいだろう。納税者に理解してもらうには、知恵を絞って費用圧縮のための具体的な考えを早く提示する必要がある。多数会派や首長らに都合のいい内容にならないようにする点も肝心。節約して有意義なものにするよう努めなければならない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2020.01.15 02:02:04
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