カテゴリ:Q輔とU子と「家電」
怖い話「昔懐かし家電列伝④ ラジカセ」 君が貸してくれたカセットテープから、不気味な女の声がする。 小学生の頃、ある友人から、そう言われたことがある。 それは、前日に僕が友人に貸してあげたばかりの、 中森明菜の「飾りじゃないのよ涙は」の入ったカセットテープだった。 気味が悪いから返すよ、と友人は僕にそのカセットテープを不機嫌に押し返してきた。 友人いわく、曲のサビの部分をよ~く聞くと、 「助けて」 と、ささやく女の声がする、と言う。 君の家には幽霊がいるのではないか、と言う。 僕は、まったく気が付かなかったけどなあ・・・。 ちなみに、そのカセットテープは、一昨日の晩、僕が夕食の時間に、 テレビの歌番組から流れてくるヒット曲を「録音」したものだった。 最近の若者に「録音」と言っても、なんのこっちゃ分らぬかも知れないが、 ビデオもまだ高価だった当時は、 テレビのスピーカーに、ラジカセをこれでもかとピッタリと近づけて、 再生ボタンと録音ボタンを同時に押して、 テレビ番組の音声のみ「録音」するという、惨めな行為をよくしたものです。 まあ、現代で言うところの「違法ダウンロード」みたいなもんです。(違うわっ!) 昭和も令和も、やってることは、変わりゃしねえ。 ちょっと呼び名が変わっただけです。 「ダウンロード」=「録音」 「インストール」=「ダビング」 「保存する」=「カセットのツメを折る」 ちょっと呼び名が変わっただけです。(違うわっ!) 僕は、この心霊テープを録音した時の状況を思い返してみた。 このテープは、一昨日の晩、僕、姉、妹、そして母の四人で、夕食のカレーライスを食べている時、 見ていた歌番組で、僕のお気に入りの歌手が登場したので、僕が慌てて録音したものだ。 もちろん、録音中はテープに外部の雑音が入らないよう、 私語禁止。食器の音禁止。僕は、家族に通夜式のような静けさを強いた。 これ、昭和あるある。 で、実際に、その心霊テープを聞いてみた。 飾りじゃないのよ涙は~、ほっほ~ 「助けて。」 好きだと言ってるじゃないの、ほっほ~ た、確かに、不気味な女の声が聞こえた。 念のため、もう一度聞いてみた。 飾りじゃないのよ涙は~、ほっほ~ 「ソスケテ。」 好きだと言ってるじゃないの、ほっほ~ んん?? ソスケテ??? よ~く聞くと、そう聞こえる。 ・・・なんだか、嫌な予感。 僕は、その嫌な予感を確信に変えるべく、 何度もテープを巻き戻し、耳を澄ませて曲を聴いた。 飾りじゃないのよ涙は~、ほっほ~ 「ソスけて。」 好きだと言ってるじゃないの、ほっほ~ 飾りじゃないのよ涙は~、ほっほ~ 「ソースけて。」 好きだと言ってるじゃないの、ほっほ~ 飾りじゃないのよ涙は~、ほっほ~ 「ソースとて。」 好きだと言ってるじゃないの、ほっほ~ 飾りじゃないのよ涙は~、ほっほ~ 「ソースとって。」 好きだと言ってるじゃないの、ほっほ~ ソースとって。 ソースとって。 ソースとって。 ソースとって。 ソースとって。 ソースとって。 友よ。 うちには、幽霊なんていません。 うちには、 カレーにソースをかける母がいます。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2019.05.19 08:31:10
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