源氏物語の登場人物は、決して異邦人ではない。今日の我々と地続きの世界に住む、人間である。
ただ時代のせいか、いかに物語全体が別れと死に彩られているとはいえ、涙の量が多すぎると思える箇所も少なくない。気がつくと枕が浮かぶほど濡れていたなどという表現にぶつかると、言葉の綾だとわかっていてもいささか食傷してしまう。
もっとも、次のような箇所は今日でも秀逸だ。須磨の帖である。
帝「私が死んだら、そなたは源氏と別れたほどにも悲しんでくださるだろうか」
言われて涙する朧月夜。
帝「はてさて、それは、どちらのために落とす涙であろうのう……」
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Last updated
2011.08.20 23:09:01
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