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Jan 10, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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             (二章)

 江戸の盛り場は、両国広小路である。とくに夏の川開きは有名であった。

旧暦の五月から八月末までは、両国橋界隈は辻売りの茶店、食物屋、見世物

小屋が、ずらりと並び人々は涼を求めて集まったものだ。

 この時期は花火が最大の呼び物で、両国橋は花火見物の人で押しあってい

た。豪商たちは大川に屋形舟を浮かべ、ご馳走を持ちより、三味線小唄で綺麗

どろこを共にして風流に花火を楽しんでいる。

 今宵も両国橋には人々が涼を求め、花火見物でごったがえしている。

 蒼い大川の水とは対照的に、夜空が暗くみえる。橋の両側には大小の花火

見物の舟が、舳先を並べ客たちが夜空を眺めている。

 花火があがるたびに、「鍵屋ー」  「玉屋ー」 と大声が川面に響いている。

 そんな中に一艘の屋形船が、よしず張りを片側だけ開け花火見物をしてい

る。大桜が夜空を彩り、しだれ柳が夜空を染めた。

「旦那、花火が綺麗ですよ、川風も涼しく心地がいい」

 弁慶縞の浴衣姿が色っぽい、二十代後半の美形である。

 彼女は日本橋の近くに住まいする、小唄の師匠であった。屋形舟の中央には

痩身の浪人が、黒羽二重姿で箱膳の刺身を肴に、まったく花火には興味を示

さず、黙然として酒を楽しんでいる。 

 花火の明りに高い鼻梁がみせ、無言で飲み続けている。

「旦那、あたしにも一杯下さいな」

「お蘭、そろそろ腰をあげるか?」

「そんな、これからですよ」

 さされた杯を干し、お蘭が浪人の杯を満たした。

「美味しそう、いただきますよ」

 折り箱の握り寿司をほうばり、うっとりと浪人の横顔を見つめた。

 浪人は元公儀隠密の生き残りで、伊庭求馬と名乗る凄腕の男であった。

 昔どおり白面の相貌を見せ、花火の明りで輝く大川の川面に視線を

這わせている。 

「お蘭、近頃、猪の吉が顔を見せぬな」

「猪さんが顔を見せぬのは、世の中が泰平の証拠ですよ」

 お蘭が求馬の痩身に躯をあずけた。

 伊庭求馬は、数年前に隠密から足を洗った。それまでは地獄の修羅場を

何度となく潜り、最愛の女性を二人も犠牲としてきた。そんな時期に大目付

の密偵として働いていた、お蘭と知り合い彼女の家に居候を決め込んでいた。

呈の良い食客である。 

「ところで大目付殿からは、何の連絡もないか?」

「嫌ですよ。あたしは足を洗い、今は旦那の女です」

 お蘭がすねている、何さ、今は大目付の嘉納主水さまとは刎頚の付き合いを

しているのに、胸裡で呟いた。そんな時、突然、罵声が響いた。

「馬鹿野郎」

 酔った男が一艘の小船に向かって怒鳴っている。見ると若い男女の乗った

小船に文句を云っているようだ。

「おいらは四谷の権三親分の若い者で、稲光の金兵衛だ。人の舟にぶっかって

侘びがねえのかえ」

「済んません」  若い男女を乗せた船頭が謝っている。

「おめえじゃねえ、そこの色男に文句があるんだ」

 見るからに悪党面をしたやくざ者である、金をせびろうとする魂胆のようだ。

「およしな、弱いもの苛めは」

 お蘭が見かねて啖呵をきった。

「誰かと見れば色っぽい姐さんじゃねえか、おめえさんが相手になるかえ」

「四谷の権三親分は、金貸しの悪と聞いてるが、子分もなかなかの馬鹿だね。

ここは花火見物の場所だよ、さっさと帰んな」

 負けずにお蘭が挑発した。付近の舟の客が艶っぽいお蘭の啖呵に聞き惚れ

ている、花火なんぞより面白い見せ物だ。

「この女(あま)、舐めた口を利いたな」

 金兵衛が凄んだ、求馬が杯を干し素知らぬ顔をして腕がしなった。

 杯が夜空を裂き金兵衛の額に当たり粉々に散った。

「わっー」  打撃で眼が眩んだ金兵衛が舷側から、大川に水飛沫をあげた。

「助けてくれー」

「わーっ」と付近の小船から笑い声があがった。 

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Last updated  Jan 10, 2008 10:42:36 AM
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