1178269 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

^-^◆ 若手社員の早… New! 和活喜さん

怪盗ギャンビット1 … New! 千菊丸2151さん

ソフトバンク、阪神… New! クラッチハニーさん

向いている向いてな… New! 韓国の達人!さん

街道のハナミズキ New! Pearunさん

Comments

 人間辛抱@ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Category

Freepage List

Calendar

Jan 14, 2008
XML
カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ クール にほんブログ村 小説ブログへ 今年も応援宜しくお願いいたします。

 内藤新宿とは、家康が江戸に入府した時期、この地に勢力を張っていた

内藤清成が、北条家残党警備のために陣を敷き家康を出迎えた。

 これを愛でた家康が、この地を内藤家に授けたのだ。

 それで内藤家の中屋敷があった、更に内藤家はその後、信州高遠藩に

移封され、新宿御宴に江戸屋敷を賜った、こうした経緯(いきさつ)で、この地

を内藤新宿と呼ぶようになった。

 内藤新宿は江戸時代の、五街道のひとつ甲州道中と青梅街道に分かれる、

追分に当たるために大いに賑わった。

 品川、千住、板橋と江戸四宿に数えられ、色町としても大いに栄えたのだ。

 幕府公認の吉原とは違い、非公式の飯盛り女が春をひさいでいたが、半ば

公然と町奉行所も黙認していた。

 その理由は、幕府財政の逼迫にあった。この宿場からあがる運上金は

莫大で、宿場の繁栄は幕府にとって願ってもない事であった。

 江戸市中の暑さと比べると、嘘のように街道を穏やかで、涼風が吹き抜け

ている。街道の闇からひとつの影法師が、村松三太夫に近づいてくる。

 通りすがりに、「お主、人を殺めてきたな」 と乾いた声をかけられた。

 村松三太夫が足を止め、闇を透かしみた。

 黒い着流しの浪人がうっそりと佇んでいた。

「物取りかえ」  村松三太夫が腰を落とした。

「血の臭いと、荒々しい気配は断つことじゃ」

「なにっー、鵜飼流の村松三太夫と知っての雑言(ぞうごん)かえ?」

「お主が、闇世界の殺し屋の村松三太夫か」

 対手は臆した様子もみせずに乾いた声をかけ、三太夫が苛立った。

「おいらを知って難癖をつけるとは、いい度胸をしているぜ」

 声が途絶えるや、自慢の赤鞘から大刀が闇の中を刃風を唸らせ鞘奔った。

 ふわりと浪人の躯が後方に飛びさがり、凄まじい剣気が三太夫の躯に襲い

かかった。初めて対決する凄腕の浪人である。

「鵜飼流、見極めた」

 闇に融けた浪人が、気負いのない声で応じ、大刀を抜き左下段に構えた。

 三太夫の垂れ下がった目蓋の奥の眼が鋭くなった。

 素早く正眼に構えなおした、膠着する時がゆるゆると流れ、三太夫がじりっ

と前進をはじめた。対手は微動だにせず、三太夫の接近を待っている。

 微かに着流しの裾が風になびいた。

 鵜飼流は対手の胸元に鋭い突きを入れ、体勢の崩れを見逃さず、上段か

ら頭蓋を真っ二つに割る、凄まじい剣法である。まさに薩摩の示現流に似た

一太刀勝負の豪剣であった。

「うおー」  三太夫が雄叫びの声を夜空に放ち、必殺の突きが浪人の胸元に

伸びた。浪人の躯が闇夜に飛び跳ね、逆に三太夫の頭上に落石のような斬撃

が襲いかかった。素早く躱したが、攻撃の速さで右頬を削がれ激痛が奔った。

「くそっ」  三太夫も屈せず大刀を旋回させ、着地した浪人の背中に必殺の

一撃を見舞った。だが、浪人の大刀が三太夫の大刀を跳ね飛ばしたのだ。

 どう躱されたのか全く判らない業を見せ付けられたのだ。

 既に浪人は痩身を正面に向け、先刻同様に、うっそりと佇んでいる。

「おめえさんは何者だ」

「殺し屋稼業に、名乗る謂れなんぞはない」

 浪人はなんの感情も示さず乾いた声で応じた、高い鼻梁と乾いた相貌が

三太夫の視線に映った。

 生まれて初めて恐怖を覚えた。頬の傷跡から首筋に伝わる血の感触が

恐怖をつのらせる、三太夫が敏捷に躯を後退させた。

「逃げるのか」  揶揄の声が響いた。

「勝負は、あずけるぜ」

 三太夫が油断なく正面を見据え、素早い動きで暗闇に姿を消し、あとも振り

向かずに駆け去った。

 懐紙で血糊を拭った浪人の横顔が、月明かりに照らしだされた。

 それは、伊庭求馬であった、彼は所用で八王子からの帰路の途中であった。

 村松三太夫とすれ違う時、余りに荒々しい気配で呆れて揶揄う積もりで声を

かけたのだ。それ以上の何ものでもなかった。

「馬鹿な勝負をしたものだ」  嘲(あざけ)りの自嘲を浮かべ、求馬も三太夫の

跡を辿る格好で江戸へと向かった。

血風甲州路(1)へ








お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Jan 14, 2008 11:36:55 AM
コメント(11) | コメントを書く
[伊庭求馬孤影剣] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.