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Jan 15, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 数々の修羅場を潜りぬけた求馬にとって、村松三太夫を斬ることなど児戯

に等しい行為であるが、無用な殺生と思い止まったにすぎなかった。

 夜空の彼方が、仄かに明るく輝いている、ようやく内藤新宿が近いと感じな

がら道を急いだ。


 神田駿河台にある大目付、嘉納主水邸の門前に求馬の痩身が現われた。

 白壁に囲まれた屋敷は、三千五百石の大身に相応しい堂々たる邸宅である。

 相変わらず、駿河台一帯は蝉時雨でかしましい。

 求馬の痩身が脇門に近づくと、顔見知りの門番が慌てて奥に駆け込んだ。

 すぐに用人の根岸一馬が笑顔で現われた。

「伊庭さま、久しぶりに存じます。主人が待ちかねておられます」

 根岸一馬の案内で廊下を伝い、奥の壷庭に面した書院に通された。

「伊庭殿、久しい」

 この屋の主人、大目付の嘉納主水が濃い髭跡の相貌を綻ばしている。

「ご貴殿も、お元気そうで結構」

「まずはお座りあれ」

 促され、求馬は佩刀の村正を右に置き座布団に腰を据えた。

「お屋敷が騒めいておりますな、いかが為されました」

「流石は、伊庭殿じゃ」  主水の肉太い顔に厳しい気配がみえる。

「お忙しい時に訪れましたな」  求馬が供された茶を啜り気遣った。

「目付共を送りだしたところにござる」

「何か、ござったか?」  求馬がさり気なく訊ねた。

「伊庭殿、貴殿は大奥で上様ご寵愛の、お真紀の方さまをご存じか?」

「確か駿河町の呉服問屋、越後屋の娘とは聞いておりますな」

「左様じゃ、ご懐妊でのお宿下がりをしておりましたが、昨夜、多摩の別邸

で暗殺され申した」

「多摩の別邸で」  求馬が双眸(そうぼう)を細めた。

「何かご存じか?」  

 見逃さず主水が訊ね、求馬は昨夜の出来事を語る羽目となった。

「鵜飼流の村松三太夫にござるか、その男が下手人かも知れませぬな」

 主水が癖である顎をさすって考えこんだ。

「併し、解せませぬな、何ゆえに上様の側室を狙います」

 求馬が壷庭の樹木に視線を這わせ訊ねた。見事に刈り込まれた庭から、

夏の日差しが、ちらちらと洩れている。

「判りませぬが、何時の時代でも大奥は魔物の住む場所。所謂、権力の

亡者が集まる場所にござるよ」

 主水の云う意味は、元公儀隠密であった求馬にも理解できる。

「伊庭殿、本日は目付の報告を待つだけじゃ。一杯、飲みながら話がしたい、

幸い、新鮮な鮎で送られてきましてな」

「江戸での鮎と申さば、多摩の鮎にござるな」  「左様」

 この時代、江戸で食する鮎は多摩川で捕れたものが多い、特に笹塚の鮎は

有名で、江戸城にも献上されるほどに珍重されていた。

 献上される鮎は、大きさが決められていた。眼の下六寸(約二十センチ)の

鮎を揃えた云われる。この時期には、鮎担ぎという職人が活躍した。

 捕れたての新鮮な鮎を竹籠に入れ、天秤棒に提げ、十里の道を駆け内藤

新宿の問屋まで届ける稼業であった。

 このように、新鮮な鮎を食べる習慣が、江戸では定着していたのだ。

 二人の前に膳部が運ばれ、鮎の塩焼きが二匹のっている。

「さて飲みながらお話いたす、お互いに独酌と参ろう」

 二人は独酌を始めた、鮎を頭から咀嚼(そしゃく)した主水が感嘆の声をあげ

た。  「流石に美味い」

「さて昨夜、それがしが取り逃がした村松三太夫が、下手人なればなにが目的

でござる」  求馬が魚肉を口に運び訊ねた。

「天保の改革を進めておられる、水野忠邦殿は最近、上様に疎まれておられる」

「・・・・」  求馬は黙して独酌をしている。

「余りにも強権的な改革で大奥の女共は、猛反発をしております。奢侈の禁止も

大奥までおよび、反対の急先鋒が暗殺されたお真紀の方さま」

「上様の寵愛をよいことに、水野殿を讒訴されましたか?」

 求馬が杯を干し主水をみつめた。  

「推察どおりにござる」  主水が、苦い顔つきで肯定した。

「水野殿は、上様の信頼が厚いと聞きおよびますが」

「女子の力は侮れぬ、大奥は老中の阿部政弘殿を推挙いたしております。

上様も最近は、首座を阿部殿にと考えておられる節が見受けられます」

「当然、水野殿も反撃にでますな、それが、お真紀の方の暗殺。考えられる

図式ですな」  求馬が平然ときわどいことを口した。

「頭の痛いことじゃが、水野殿は真田忍びを養っておられる」

 嘉納主水が、顔を曇らせ驚く事を口走った。

「影の軍団と異名をとる集団にござる」

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Last updated  Jan 15, 2008 06:43:08 PM
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