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Jan 16, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「ほう、力ずくで改革を遣り遂げるつもりですか?」

「左様、彼等は信州上田に代々土着いたす、六紋銭と名乗る忍び集団に

ござる。頭は山彦の彦兵衛と申す、残忍、残酷な男にござる」

 主水が怒気をふくんだ声で語った。

「伊庭殿、拙者にかわり諏訪三万石の高島藩に出向いてはくれませぬか」

「・・・-」  求馬が無言で肯いた。

「拙者の弟が、高島藩の江戸家老を勤めております。同じ、駿河台なれども、

拙者は迂闊には動けませぬ」

「ご貴殿に、ご舎弟が居られましたか?・・・それで、高島藩に何がござる」

「最近、判明いたしたが、高島藩には代々に渡り武田の隠し金塊の絵図が

伝わっております。先日、六紋銭に襲われ申した」

「なんとー」  求馬の相貌が厳しくなった。

「玄公金秘匿絵図、これが秘かに伝わっております。それに眼をつけた者が

こともあろうに首座、それを奪い金塊を捜しだせば、己の身は万全となります」

 主水が深刻な顔色で語り終えた。

「何か心配事でもござるか?」

「諏訪高島城に異変を起こさせる、そうなると藩の存続が危うくなります」

「成程、絵図を奪うか藩を改易に追い込み、金塊を見つけるか、いずれの道

でも水野忠邦殿は権力を一手に握れますな」

「弟の隼人正に連絡をとっておきます。拙者の代人として高島藩に出向いては

頂けぬか、貴殿の身元は拙者が書状をしたためます。ご承知下さるか?」

「水野忠邦、いささか遣りすぎですな。女子を暗殺し力ずくで絵図を奪う、町人

たちからも怨嗟(えんさ)の声があがっております。それがしにお任せあれ」

 求馬が気負いもなく請負った。

「有り難い、拙者は村松三太夫を召し取りましょう。奴を捕らえれば黒幕の

正体が判明いたす」

「嘉納殿、万が一に備え飛礫の猪の吉と、お蘭の手を借りたいと思います。

我等三人の身元保証と道中手形を用意下され」

「何と貴殿は、諏訪高島城まで足を伸ばされるつもりですか?」

 主水が驚きを隠さずに訊ねた。

「玄公金秘匿絵図の玄公とは、信玄の諡号とみました。金塊は諏訪湖の何処

かに隠されておると推測いたす、事と次第によっては甲州道中を旅し、高島城

まで行く事になりましょうな」

 求馬が平然とした口調で断じた。

「恐れいった、それらは拙者が責任をもって用意つかまつる」

 流石は元公儀隠密の手練、読みの深さに驚嘆する主水であった。

「本日は久しぶりに美味い鮎を頂戴いたした、これにてご無礼つかまつる」

 伊庭求馬が、乾いた声を残し嘉納邸を辞して行った。

「根岸」  「はっ」  すかさず用人の根岸一馬が現われた。

「お真紀の方、暗殺の下手人と思われる男が判明した。鵜飼流の遣い手の

村松三太夫と申す者じゃ」

「ご前、伊庭さまの情報にございまするか」

「そうじゃ、村松は必ず水野殿と接触いたす。心して見張るのじゃ」

 ここでようやく嘉納主水は、攻勢に転ずる糸口を見つけ出したのだ。

「根岸、伊庭殿と飛礫の猪の吉、それに、お蘭の身元保証と甲州道中の手形

を、大目付の権限で用意いたせ。くれぐれも水野忠邦殿には悟られぬなよ」

「畏まりました。それを伊庭さまにお渡しする手段はいかがいたします」

「日本橋の、お蘭に届けよ」

           (三章)

 黒羽二重姿の求馬の痩身が、神田明神下に向かっている。

 相変わらず、虚無感が全身から立ちのぼっている。辺りは向日葵の鉢植え

や、朝顔が並び彩が鮮やかである。

 求馬の行く先は、猪の吉の住処の小便長屋である。異臭が漂ってきた。

 求馬の視線の先に、汚い棟割長屋が見えた。長屋の路地は三尺ほどで、

真ん中に洗い物の水を流す溝があり、ドブ板がかかっている。長屋は九尺二

間の間取りで、奥に四畳半の畳部屋があった。

 路地の両側にも、この頃、流行の朝顔の盆栽がならび、彩り鮮やかに咲き

誇っていた。江戸っ子の洒落っ気である。

 求馬が猪の吉の部屋の前に足を止め、「猪の吉、おるか」 と声を懸けた。

 腰高障子が開かれ、 「矢張り、旦那ですかえ」 声と同時に猪の吉が顔を

みせた、相変わらず敏捷そうな体躯をしている。

「八つ半(午後三時)じゃが、外で一杯やろう」

「こいつは嬉しいね」

 猪の吉の顔が嬉しそうに崩れた。格子縞の単衣をいなせに着こなした猪の吉

を従え、小粋な居酒屋の縄暖簾をくぐり、黒光りする醤油樽に腰をおろした。

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Last updated  Jan 16, 2008 11:28:47 AM
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