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Jan 17, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 大徳利を頼み、求馬は冷奴と泥鰌の蒲焼を注文した。

「おいらも、一緒でいいよ」

 猪の吉が奥に声をかけ、求馬の横に腰をおろした。

「お主と飲むのも久しい」

「そうでござんすね」

 猪の吉が求馬の杯を満たし、求馬も猪の吉に酌を返した。

「うめえゃ」  猪の吉が舌鼓をうって、嬉しそうに訊ねた。

「旦那、仕事ですかえ」  求馬が肯き双眸が鋭くなった。

「また、厄介なことを引き受けなさいやしたね」

 求馬が嘉納主水の依頼を声を低めて語った。

「六紋銭の忍び集団ですかえ、それにしても老中首座てい者は何時でも

悪ですな」

「権力は魔物じゃ、一度、握ると離せなくなる」

 白面の相貌をみせ、求馬が他人事のように答えた。

「あっしも、今度の改革には反対ですぜ。お偉方は賄賂で潤い、貧乏者だ

け泣いている。改革も地に堕ちたもので」

 忌々しそうに杯を干した。

「わしは今宵、高島藩上屋敷を訪れるつもりじゃ。六紋銭の忍び者が見張っ

ておろう、わしの正体が判明したら不味い」

 その言葉で猪の吉は、求馬の訪れてきた用件を察した。

「あっしが、翳ながら旦那の助っ人をいたしやすよ」

「遣ってくれるか」

「任せておくんなせえ」  猪の吉が胸をたたいて請負った。

「それで、あっしの役割はなんですかえ?」

「六紋銭が現れたら、わしが斬り捨てる。お主は、わしの跡をつける者がいた

ら始末を頼む。だが、決して無理はするな、先の長い仕事になろうからな」

「旦那の跡を追わねえように始末をつければ、宜しいでござんすかえ」

「そうじゃ。わしが無事に逃げおうせたら、お主も無理をせず長屋に戻れ」

「それで旦那は、いつ頃に高島藩に行かれますんで?」

 求馬が蒲焼を口にし思案し、猪の吉も心得て独酌している。

「五つ半(午後九時)に高島藩を訪れる」

 求馬が乾いた声でつげ、杯を呷った。

「承知、あっしは駿河台の中野神社に半刻前に隠れておりやす」

「中野神社?」  求馬が不審そうに猪の吉を見つめた。

「高島藩の近くにある、無人の小さな神社でござんすよ」

 それを聴いた求馬が、二分判金を猪の吉の前に置き立ち上がった。

「わしは戻る」  黒羽二重の痩身が暖簾を掻き分けて消え去った。

「さて、おいらの出番までは時があるぜ」  猪の吉が胸中で呟いた。

 二分判金もあれば、大いにお釣りがある。二枚で一両であった。

「親父、下り酒はあるかえ」

「旦那、そう大きな声で注文されては困りますぜ。最近はお上がうるそくて

叶いませんゃ、知られたら店は廃業ですぜ」

 小太りの親父が、店内を見廻した。

「これは済まねえ、こんな店まで目をつけているのかえ」

 猪の吉が驚きながら、下り酒を飲んで長屋に戻った。


 真昼の残暑の名残りがのこり、蒸し暑い夜である。駿河台の高島藩邸に

孤影が佇んでいる、白壁からは松や欅の枝が張り出し闇をいっそう濃くして

いる。孤影の主は伊庭求馬であった。

 あいも変わらず黒羽二重の着流し姿である、彼の目前に高島藩の破風造

りの屋根が黒々と横たわってみえる。

 当時の大名家は格式として、屋敷の構えまで幕府から細かく指示を受けて

いた。因みに、もっとも格式の高い十万石以上の屋敷は、入母屋造り、一重

の長屋門に、唐破風の出番所が造られ大扉には、鋲釘が打たれていた。

 時代を経るにつれ、格式が重んじられていたのだ。

 求馬は五感をすまし、周囲の気配を窺がっていた。隠密として鍛えあげた、

彼の五感に不審な者の気配は感じとれない。

 求馬の着流しの裾があおられ痩身が軽々と白壁を飛び越えた。

庭先に膝をつけ周囲を見廻した、警護の士が手槍をかかえ巡回する様子が、

闇の中でも見える。

 求馬は痩身を中奥の大木の翳に潜めた、警護の士が近づいてきた。

「伊庭求馬と申す、大目付殿の依頼にてご家老殿に御意をえたい」

 唐突の忍び声に驚き、警護の士が手槍を構えた。

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Last updated  Jan 17, 2008 04:48:16 PM
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