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Jan 19, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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「矢張り、それがしの跡を付けておりましたか」

 求馬が残念そうな顔つきをした。

 岩村弦四郎が死骸を改めていたが、  「矢張り、六紋銭ですな」 と一枚の

銭を求馬に手渡した。

「これが、例の六紋銭にござるか?」

 求馬が仔細に調べていたが、やおら歯で六紋銭を咬んだ。

「おうー」  一座から驚きの声があがった、六紋銭が見事に半ばから居り曲が

り、内部から紙片が現われた。求馬が無表情に紙片を示した。

「ご覧なされ、こ奴の名にござる」

 隼人正が手にした、紙片には山犬の藤兵衛と小さく記されていた。

「影の軍団の所以(ゆえん)が判り申した。奴等はかなりの大世帯、この六紋銭

は奴等の鑑札でありましょうな」

「隼人正、そちは二枚の六紋銭をもっておったの、調べてみよ」

「はっ」  忠政に命で隼人正が二枚の六紋銭から紙片を取り出した。

「先日、襲って参った者は、蝮の五兵衛に猿の吉兵衛と名乗る男にございます」

 忠政が行灯に視線をむけ考えこんだ、蝋燭の芯が微かな音を出している。

「伊庭殿の申すとおりじゃな、我等が絵図をもっていては犠牲者が増える」

 忠政が求馬の相貌を真正面から見つめた。

「この、有様をみても絵図を預かってくれますかな?」

「累代の家宝を、今夜、初めて現われた男に託すとは蛮勇にござる。併し、

信じて頂けるならば、命を賭(と)してお与りいたす」

 求馬の返答に忠政が肯いた。

「隼人正、伊庭殿に懐剣をお渡し申せ」

 諏訪藩主忠政の命で、隼人正が懐剣を求馬に差し出した。

「この中に絵図が、隠されておりますか」

 求馬が見事な拵えの懐剣を手にし、乾いた声を発した。

「成程、懐剣にしては軽い」  瞬時に仕掛けを見破った。

「伊庭殿、この絵図をどこに隠します?」

 隼人正が、剽悍な眼差しで尋ねた。

「隠しはいたさぬ、それがしが身につけまする」  「・・・-」

「これから、ご貴殿は絵図を身につけ、何をなされる?」

「岩村殿、甲州路を道中いたす。それがしが絵図をもっておると知ったら、

水野忠邦は六紋銭に命じ、それがしを襲って参りましょう、それがしの務め

は、六紋銭の抹殺にあります。全て冥途に送ってやりましょう」

 なんの気負いもなく求馬が言い切った。

「それは、余りにも無謀に過ぎますぞ」  隼人正が声を高めた。

「死生天にあり。これが、それがしの生きざま、生に執着はござらん」

「死生天にありか」  諏訪忠政が呟いた。

「伊庭殿、貴方は一人で影の軍団と闘うと申されますか」

 岩村弦四郎も驚きを隠さずにいる。

「すでに大目付の嘉納主水殿にお願いいたしてごさる、道中手形が手に

入りしだい、江戸を離れ諏訪高島城に向かいます」

 求馬の白面の相貌が乾いている。

「甲州道中の行程は、約五十五里。小仏峠、笹子峠の難所を控えた街道で

すぞ、そこをお一人で上諏訪の高島城に行かれますのか」

 求馬の凄腕は承知しているが、さすがの嘉納隼人正も仰天した。

「難所や街道、宿場には奴等が待ち伏せておりましょう、それを楽しみに

旅をいたす所存。だが、万一の場合、それがし一存で絵図を処分いたしたい

が、ご了解いただけますか?」

 求馬が忠政に顔を向け、糺(ただ)した。

「処分とは、如何なることにござる?」

 隼人正が、訝しげに質した。

「水野忠邦の手に落ちるようなら、絵図をこの世から抹殺いたす」

「伊庭殿の存念は承知いたした、必ず江戸に戻ると約束いたされるか、

それなれば万一の場合は、絵図の処分を一任いたそう」

 青年藩主、諏訪忠政は求馬に好意をもったようだ。

 九つ(午前零時)過ぎ高島藩の、脇扉が開き、痩身の求馬が姿をみせた。

辺りは漆黒の闇が支配し、森閑とした静寂につつまれている。

「旦那だ」  盗人被りの猪の吉が、裾を絡げて草叢から眼を光らせた。

 藪蚊が遠慮会釈もなく襲ってくる。  「畜生め」  誰にいうでもなく愚痴を

こぼし、去り行く求馬の痩身をみつめている。

 突然、闇に煌きが奔り抜けた。

「襲ってきやがったな」  猪の吉が飛礫を握り足音を消して駆けた。

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Last updated  Jan 19, 2008 11:12:27 AM
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