1178239 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

チーズスフレ New! 千菊丸2151さん

向いている向いてな… New! 韓国の達人!さん

街道のハナミズキ New! Pearunさん

^-^◆ 思わず にっ … New! 和活喜さん

プロ野球〜ソフトバ… New! クラッチハニーさん

Comments

 人間辛抱@ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Category

Freepage List

Calendar

Jan 22, 2008
XML
カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ クール にほんブログ村 小説ブログへ 今年も応援宜しくお願いいたします。

「畜生め」  猪の吉が無念の言葉を洩らし、五感をすまし辺りを窺がった。

人の気配は感じられない、一刻(二時間)ほど隠れ潜んだことになる。

 ようやく草叢から身を起こし眼を剥いた。死骸から錏頭巾が消えていた。

「恐ろしい奴がおるものだ」

 足音を忍ばせ、死骸を改めた。いずれも獰猛な面をした男共であるが、証拠

となる頭巾が持ち去られている。猪の吉も、その場から素早く消えうせた。

 この事件は江戸中に広がり、読売が奇妙で不気味な事件とし、面白可笑し

く書きたて、大いに煽(あお)ったのだ。

 大目付の嘉納主水は先手組に属す、火付盗賊改方に大名、武家屋敷一帯の

巡回警護を命じた。武家地の殺人事件は、町奉行所の管轄外であったのだ、

 町奉行所は武家地と寺社地を除いた町人と町屋で起こった事件の究明、逮捕

が任務であり、それを思っての処置であった。

 最も驚いたのは、諏訪高島藩の藩主忠政と嘉納隼人正であった。

 七名の異体の知れない、死骸が藩邸の近くで発見されたのだ。

「伊庭殿が、手にかけらた六紋銭の忍び者と推測いたします」

「当家から帰る途中の出来事じゃな」

 諏訪忠政が、何事か思案している。

「隼人正、岩村に命じ絵図が盗まれたと大目付殿に報告いたせ」

「そのような報告は、水野忠邦のてまえ如何なものでしょう」

 隼人正が主人の忠政に反駁した。

「構わぬ、大名家に起こった事件は大目付殿の職掌、当家より報告があれ

ば、当然嘉納主水殿は、忍び者の死骸の件を水野忠邦に話される筈じゃ」

「成程、水野忠邦は絵図争奪が失敗したと悟りまするか、もっとも、既に

知っておりましょうがな」

 隼人正が、濃い髭跡をみせ笑い声をあげた。

「そうじゃ、奴等は必死で絵図を奪った者を探索いたす筈じゃ」

「そこに、伊庭求馬殿の存在が顕かになれば我等の思うつぼにございますな」

 嘉納隼人正が、剽悍な眼差しを綻(ほころ)ばした。

 外桜田門には大名小路と呼ばれる一画がある、そこに老中首座の水野屋敷

があった。水野忠邦は八つ(午後二時)に下城し、己の部屋で書見をしていた。

 残暑の夕暮れが迫り、庭先が翳る時刻に水野忠邦が声をかけた。

「加地三右衛門を呼んで参れ」 と、近習に命じた。

 用人、加地三右衛門が、紬(つむぎ)の小袖に格子縞の袴姿で現われた。

 相変わらず、細い眼が用心深く瞬いている。

「ご前、ご用にございますか?」

 水野忠邦は麻の単衣に、袖なしの羽織り姿で書物から眼を離した。

 天保改革の実践者である彼の部屋は、行灯が明るく輝き、贅沢きわまる

調度品が並び、眩(まばゆ)いばかりである。

「高島藩より大目付の嘉納主水に、絵図が奪われたとの届出があった」

「真にございまするか」

「昨夜、高島藩邸の近くに、七名の死骸が発見されたの。六紋銭の忍び者

じゃな」  水野忠邦が淡々と尋ねた。

「左様にございまする」  加地三右衛門が肯いた。

「またもや奴等は失敗を重ねた、いずれにせよ、恐ろしい敵が現われよった」

 水野忠邦の眼光が、鋭く加地三右衛門に注がれ、加地三右衛門が俯いた。

「誰じゃ、金塊の秘匿絵図の存在を知る者は、我等の他に絵図のことを知る者

は居ない筈じゃ」

「高島藩とて油断は出来ませぬぞ、奪われたと吹聴いたせば、永遠に絵図は

彼等のものですぞ」

「浪人者をつかったか?・・・高島藩は凄腕の浪人を飼っておるのか」

「拙者にも判りませぬ」  加地三右衛門が低く呟いた。

 水野忠邦が、話題を変え加地三右衛門をみつめた。

「嘉納主水の話によれば、浪人は水際立った腕の持ち主との事じゃ。六紋銭の

者共は、いずれも一刀のもとで斬り倒されていたと云う」

「そのような浪人が居るとは信じ難いことです」

「三右衛門、お真紀の方を暗殺した村松三太夫が申しておった。暗殺を終え、

甲州道中に行く途中、腕のたつ浪人と出合ったそうじゃ。その浪人と斬りむすび

不覚にも、頬を削がれたという。あの三太夫を手玉にとった浪人が気にかかる」

 水野忠邦は、先日の村松三太夫の顔を思い浮かべていた。

 あの村松三太夫の言い置いていった、浪人の事が気になった。

「三右衛門、わしは絵図が欲しい、それに高島藩の届出が真実か確かめたい。

本所に潜みおる六紋銭の山彦の彦兵衛と繋ぎをとれ、昨夜の浪人の様子を

詳しく知りたい。手配いたせ」

「畏まりました」

 加地三右衛門が、猫のように足音を消して去った。

血風甲州路(1)へ






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Jan 23, 2008 08:11:57 AM
コメント(9) | コメントを書く
[伊庭求馬孤影剣] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.