1178261 ランダム
 HOME | DIARY | PROFILE 【フォローする】 【ログイン】

長編時代小説コーナ

長編時代小説コーナ

【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! --/--
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

龍5777

龍5777

Favorite Blog

怪盗ギャンビット1 … New! 千菊丸2151さん

ソフトバンク、阪神… New! クラッチハニーさん

向いている向いてな… New! 韓国の達人!さん

街道のハナミズキ New! Pearunさん

^-^◆ 思わず にっ … New! 和活喜さん

Comments

 人間辛抱@ Re:何故、安保法制が必要なのか。 (08/09) どうもお久しぶりです。 新型コロナウイル…
 http://buycialisky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) cialis muscle paincialis daily use side…
 http://buycialisky.com/@ Re:改定  上杉景勝(12/11) cialis 5 mg prezzo in farmaciaanti cial…
 http://buycialisky.com/@ Re:騒乱江戸湊(04/28) cialis in spanien kaufenavoid counterfe…
 http://buycialisky.com/@ Re:「改訂  上杉景勝」(04/21) what happens if a woman takes viagra or…
 http://viagraky.com/@ Re:士道惨なり(11)(12/10) offshore viagra &lt;a href=&quot; <sma…

Category

Freepage List

Calendar

Mar 5, 2008
XML
カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
にほんブログ村 小説ブログ 歴史・時代小説へ クール にほんブログ村 小説ブログへ 励みになります、応援宜しくお願いいたします。

「旦那、やはり小仏峠で待ち伏せですせ゜」

「ぬかったの、猪の吉」  珍しく求馬が笑いを浮かべた。

「畜生、今度会ったらただでは済ませねえぞ」

 猪の吉が悔しそうに、お駒の消えた街道を眺めている。

「色気をだした報いだね」  お蘭が可笑しそうな笑い声をあげた。

「失敗を笑うものではない、猪の吉は好意で風呂に行ったのじゃ」

 求馬の叱責を受け、お蘭の顔が変わった。猪の吉が自分の為に風呂に行っ

たと悟ったのだ。みるみるお蘭の顔が泣き顔となった。

「ご免ね、猪さん」  猪の吉が風呂に行った後、求馬の躯にすがりついたお蘭

であった。強く抱擁され唇を吸われ乳房を揉まれた、束の間のあいだであった

が、お蘭は久しぶりに興奮し、幸せを味わったのだ。

「師匠、気にしなさんな、久しぶりに女の裸を拝見させてもらったんだから」

「猪さんの助平」  「折角のご好意なんでね、ちらっと盗み見ただけで」

 猪の吉の言葉に、お蘭が頬を染めた。

 ぽっんと大粒の雨が落ちてきた。  「とうとう降りだしましたぜ」

 猪の吉が空を仰いでいる。三人は大木の翳に身を隠し雨具をつけた。

 求馬は袴をつけ長合羽を羽織り、猪の吉は道中合羽、お蘭は油紙の道行き

衣を着込み、首筋から雨が染み込まないように、三尺手拭を首に巻いた。

 真昼間だというのに、夕暮れ時のように辺りが暗くなり、猛烈な土砂降りが

襲いかかった。  「旦那、あっしが先駆けし小仏宿で待っておりやす」

 一声の残し猪の吉が小仏集落をめざし駆け去った。

 求馬とお蘭は、寄り添いながら街道の横の小道に下りた。そこは大木の下で

樹木の葉が繁り、雨を防いでいた。雨水が坂道を流れ足元が滑る。

「旦那、宿に着けますか?」  お蘭が気弱い声で訊ねた。

「大丈夫じゃ、そこに標識がある」  求馬が顎をしゃくった、見ると苔むした

石の道しるべがあった。小仏宿と朧に判別できた。

 二人は辺りの景色を確かめる術を忘れ、足元を見つめ小道を伝え下りてい

た。 「お蘭、着物の中は濡れぬか?」  「はいな」  気丈に返事を返し菅笠

を片手で押さえ薄暗い木立の翳を歩んでいた。

 益々、雨雲が厚くなり、時折、雷鳴が轟きだした。雲間から稲光が奔りぬけ

お蘭が不安そうに空を仰ぎ見た。またもや轟々と雷鳴が鳴り響き稲光が奔っ

た。  「お蘭、どうやら道に迷ったようじゃ」

 求馬が笠をあげ周囲を見渡している。まだ正午を少し過ぎた頃じゃな、猪の吉

が、さぞ心配しておろうな。そう思いつつお蘭を励まし雨中の小道を急いだ。

「おう、廃屋があるぞ、雨が止むまで一休みいたす」

 求馬の声でお蘭が前方を見つめた、今にも崩れ落ちそうな廃屋が眼に入っ

た。二人が廃屋に辿り付き内部を覗きみた、所々に雨漏りの跡がある。

 求馬が揚がりこみ、仔細に探っている。二畳ほどの物置らしい部屋が奥に

あり、そこは雨漏りがしていない。  「お蘭、道行き衣を脱ぐのじゃ」

 求馬が一文字笠の滴を払い長合羽と草鞋を脱いでいる。

 お蘭も菅笠と草鞋を脱ぎ座り込み、濡れた顔と髪を手拭で拭っている。

「寒くはないか?」  「大丈夫です」  「そちの柳行李を貸せ」

 お蘭の差し出した柳行李と己の行李を求馬が確かめている。

「大事はない、にかの物は濡れてはおらぬ」

 求馬がほっとした声をあげ、柳行李を隅にそっと置き物置の扉を半分閉めた。

「風が防げよう、着物は濡れてはおらぬか。行李のなかの着物に着替えよ」

「道行き衣のお蔭で大丈夫ですよ」  お蘭が雨を吸った三尺手拭を絞り扉に

ぶら下げた。ようやく二人は休息の時を得たのだ。

 求馬が腰の煙草入れを抜き、にやりと破顔した。

「煙草も無事じゃ」  彼は嬉しそうに煙管に刻みを詰め火を点けた、紫煙が

部屋に漂った。雨足が益々烈しくなっている。

「ここで野宿じゃな、お蘭、これをよく噛んで食べよ」

 求馬が小さく硬い物を口に入れてくれた、噛むほどに味わいが深まる。

「これは貝柱の干し物ですね」

「そうじゃ、猪の吉が万一の場合に用意してくれたものじゃ」

 二人の体温で物置が暖まってきた。

「お蘭、壁に背をもたせ足を伸ばせ、足の裏を揉みほぐすと疲れがとれる」

 求馬も壁に背をもたせ足を伸ばしている。

「くすっ」とお蘭が笑った。  「どうかしたのか?}

「こんな二人の姿を見たら、猪さん、吃驚するでしょうね」

「埒もない事を申すな」  お蘭が脚絆と手甲をはずした、着物の裾が乱れ、

足首の白さが求馬を魅了した。

血風甲州路(1)へ






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  Mar 5, 2008 11:19:21 AM
コメント(9) | コメントを書く
[伊庭求馬孤影剣] カテゴリの最新記事



© Rakuten Group, Inc.