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長編時代小説コーナ

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Apr 25, 2008
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カテゴリ:伊庭求馬孤影剣
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 街道の両脇には、小さな集落が点々と散らばり、朝餉の煙が漂っている。

 そんな長閑な光景を横目とし、三人はゆっくりと最後の闘いの場に足を運ん

でいた。一刻(二時間)ほど、ゆるい登り道を進んだ。

 甲斐は盆地の国であるが、信濃は高地の国であった。標高が徐々に高くなっ

ているのだ。 「あれが下教来石宿ですな」  猪の吉の云う通り、小さな集落

が街道沿いに現れた。三人は宿場をぬけ更に西に向かった。

 街道の風景が湿地帯に変わってきた、釜無川に近づいたようだ。

          (十三章)

 街道の両側が再び並木道へと変わり、樹木の間から鬱蒼たる樹木に覆われ

た丘が見えてきた。大きな奇岩が望見できる、岩の周囲は欅、楢(なら)、赤松

などの大木が鬱蒼と天を仰いでいる。

 その前面に開けた湿地帯には茅(かや)が群生している、まるで緑の海原のよ

うに見える。

「いよいよですな」  猪の吉が腰の袋から飛礫を懐中に移している。

 求馬は長合羽をひるがえし、うっそりと痩身を進めている。

 なんの気負いも変化も見せないが、それだけに修羅場を潜り抜けた凄味が

いっそう強く感じられる。そんな求馬の背中をお蘭が真剣な顔で見つめていた。

 街道の切り通しの良い場所に、粗末な茶店が店を開いていた。

「お蘭、あそこで一休みいたす」

「はいな」  お蘭が緊張で硬い顔をしている。

「案ずるな、我等が近づくまでは襲っては参らぬ」

 求馬が平然とした態度で茶店の長椅子に腰を据えた。

「お出でなされまし」  腰の曲がった人の良さそうな老人が出迎えた。

「茶を頼む」  「へい」  猪の吉とお蘭も腰をおろし茶を啜った。

「亭主、あの辺りが教来石(きょうらいいし)じゃな」

「そうでございますだ」  茶店の老人の声に求馬が双眸を光らせ眺めた。

「あの近辺で不審な者は見かけなんだか?」

「何者かは知りませぬが、昨日より盛んに動き廻っておりますだ」

「そうか、人数はどうじゃ」  猪の吉が耳をそばだてている。

「はっきりとは判りませぬが、十四、五名くらいかと思いますだ」

「亭主、ここに女子と荷物を与ってはくれぬか」  求馬が二分金を差し出した。

「このお人と荷物を与りますに、こんなには頂戴出来ませんだ」

 老人が驚いている、二分金が二枚で小判一枚に相当する大金である。

「お蘭、ここで終わるまで待て、もし、二人が戻らなんだら亭主と一緒に逃れよ」

「嫌です」  お蘭が鉄火女の意地をみせ断った。

「お蘭、聞き分けるのじゃ、そちが一緒では足手まといとなる」

「悔しい」  お蘭の眼から涙の露が盛り上がっている。

「亭主、わしら二人が戻らなんだら荷物と共に近くの旅籠まで連れて行ってくれ、

その為の銭じゃ」  「へい、お引きうけ申しますだ」

 老人が茶店の奥に座り目を瞑った。

「旦那、そろそろ仕掛けやすか?」  「待て奴等を焦らすのじゃ」

「さいで、姿を現してくれれば、こちとらが有利となりやすな」

「亭主の言葉が真実ならば、一気にかたをつける」 

 求馬は自信たっぷりである。

「亭主、冷や酒を二杯頼むぜ」  闘いを前にして二人が酒を呷っている。

 百戦練磨の修羅場を潜りぬけた二人だけが出来る芸当である。

「旦那、なんでこんな場所に、あんなに大きな岩があるんでしょうな」

「大昔の火山の名残りじゃろう、七里岩は火砕流で出来た岩じゃそうだ。

また、教来石には面白い話が伝わっておる」  「面白い話ですかえ」

「日本武尊(やまとたけるのみこと)が甲府の酒折宮に居った頃に、あの奇岩

で休んだとの伝説が伝わっておる」  「それで祠が祀ってあるんで」

 二人の会話を聞き、とうとうお蘭の堪忍袋の緒が切れた。

「旦那、わざとあたしをのけ者にするのですね」

「お蘭が怒りおった、もうすぐ六紋銭も痺れを切らす頃じゃな」 

 求馬が頬を崩した、彼は闘いの潮時を計っていたのだ。

「あっしの悲しみを旦那に背負わせてはいけませんぜ。必ず戻りやすから」

 猪の吉の言葉にお蘭がはっとした、これから闘いに向かう旦那になんと申し

訳ない事を云ったものだと悟った。武士の妻なら笑って送り出すだろうに。

「旦那っ」  「・・・・」  「許して下さいな、あたしが間違っておりました」

「料簡いたしてくれたか」  「はいな」

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Last updated  Apr 25, 2008 04:24:23 PM
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