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わたしの部屋

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2021.08.11
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カテゴリ:事件


わたしが初めてタバコを吸ったのは、成人式の帰り。
もう数十年も前のことだ。

この年代は、嫌煙権云々など細かいことは一切ない
喫煙者にとって、まこと自由な古き良き時代。

喫茶店でたばこを吸いながらコーヒーを飲むのは普通のことだった 。
公園や道端でも自由に吸えた。

で、式場を出て、近場のタバコ屋で早速ロンピーを買った。
おとなの気分は、まずタバコからと思っていたからだ。

ウキウキして早速火をつけようとしたら
丁度そこへ、
自転車のおまわりが通りかかった。

怪訝そうにじろじろ見られると、さすがに動揺するよね。
いくら品行方正、善良な区民だからって、
おまわりにジロリと見つめられちゃ、ヤッパシ

まずいことに眼が合って、
咄嗟的にそらせちゃったのがまずかったか?
するとあやつ、わたしが未成年だと確信したのであろう。

やおら自転車のスタンドを立てて

つかつかと、わたしの前に立ちはだかり
頭の先から足のつま先までジロジロ嘗め回して

「身分証…」と、手のひらを上に向けて手招き。

わたしはしどろもどろ
いままで尋問なんかされたことが無い純情な若者だよ。
若干うろたえたって仕方ない。

おまわりは勝ち誇って
「身分証!…」やや語気を強めた。

わたしが、ポケットをグズグズとまさぐり
震える手で免許証を
オズオズと差し出すと

あやつ、わたしと免許証を交互に見比べ
顔が赤くなったり青くなったり、ワナワナ…
ちょっと動揺したもよう。

それでもあやつ、わたしの清廉潔白を認めたくないのか
またしても頭の先からつま先まで嘗め回して
免許証を持ち上げて透かしたり…

くぅ~~っと、下唇震わせて
「けっ、ケッコウデス‥‥」

動悸が静まったわたしは

おもむろにタバコを取り出して、火を点け、
おまわりがヨロヨロとして立ち去る
後ろ姿を追いながら

スゥ~ッと吸い込んで、
とっ、
思わずコホッと咳込んで
鼻がつんつん痛くなり、涙がにじんだ。

人生最初の一服は

田舎の父が、
旨そうに、紫煙をくゆらすのとは
えらく違って

にじんだ涙のせいか、幾らかしょっぱかったのを覚えてる。


一句
藪入りや 孝行息子の 隠れモク

久々の藪入り、お母ちゃんは
うちの息子は真面目でホント孝行息子でねぇ…ご近所に自慢。
で、喫煙なんて姿は、絶対見られちゃなんね!


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Last updated  2021.08.11 13:59:48
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