|
カテゴリ:源義経黄金伝説2010版(短縮版)
■源義経黄金伝説■第6回
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 Manga Agency山田企画事務所 ★you tube「マンガ家になる塾ー漫画の描き方 ★「マンガ家になる塾」★ 3 観客席の中央にいる源頼朝が、急に怒鳴っている。 「あの白拍子めが。この期に及んで、ましてや鎌倉が舞台で、この頼朝が面前で義経への恋歌を歌うとは、どういう心根じゃ。この頼朝を嘲笑しているとしか思われぬ」 頼朝は毒づいた。それは一つには、政子に対するある種の照れを含んでいる。 「よいではございませぬか。あの静の腹のありようお気付きにありませぬか」 政子はとりなそうとした。薄笑いが浮かんでいることに、頼朝は気付かぬ。 「なに、まさか義経が子を…」 「さようでございます。あの舞いは恋歌ではなく、大殿さまに、我が子を守ってほしいというなぞかけでございます」 「政子、おまえはなぜそれを……」 疑惑が、頼朝の心の中にじっくりと広がって行く。 今、このおりに頼朝に、自分の腹の内を探らせめる訳にはいかぬ。 あのたくらみが、私の命綱なのだから。政子は俯きながら黙っている。 「……」 「まあよい。広元をここへ」 頼朝の部下、門注所別当・大江広元が頼朝のもとにやってくる。 「よいか、広元。静をお前の観察下に置け。和子が生まれ、もし男の子なら殺すのじゃ」 [では、殿。もし、女の子ならば、生かして置いてよろしゅうございますな」 「……それは、お前に任せる」 広元はちらりと政子の方を見ていた。 頼朝は広元と政子の、静をかばう態度に不審なものを感じている 政子は静を一眼見たときから、気に入っていた。その美貌からではなく、義経という愛人のために頑として情報を、源氏に渡さなかった。 その見事さは、一層、政子を静のファンとした。 また、京の政争の中に送り込まれるべく、その許婚を殺されたばかりの、政子と頼朝の子供大姫をも味方に取り込んでいた。 義経の行方を探索する人間は、何とか手掛かりを取ろうと静の尋問を続けた。 が、それは徒労に終わった。 尋問した者共も、顔には出さなかったが、この若い白拍子静の勇気を心の中では褒めたたえていた。 観客席の中で、静の動静を悩む者が、もう一人。 静の母親磯禅師(いそのぜんし)が、固唾を呑んでその舞いを見ていた。 裏切られた。そういう思いが心に広がっている。愛娘と思っていたが、 「あの静は、この母が苦労を無にするつもりか……」 やはり、血の繋がりが深いものは…。 この動乱の時期に女として生き残って来た者の思いが、頭の内を目まぐるしく動かしている。 その思いは、しばらくの前のことに繋がる。 禅師は、政子の方を見やった。 続く2010改訂 作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所 Manga Agency山田企画事務所 ★you tube「マンガ家になる塾ー漫画の描き方 ★「マンガ家になる塾」★ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2010.03.22 11:55:38
コメント(0) | コメントを書く
[源義経黄金伝説2010版(短縮版)] カテゴリの最新記事
|