テーマ:中国&台湾(3301)
カテゴリ:中 国 界
悔しいが、きょうの日経の中国電力事情の報道にはビックリした。
わたしなりに真偽のほどを確かめてみたら、実際そういうことらしい。 ことしの中国、とくに上海周辺や広州周辺 (華東・華南地域) は過去最大の電力不足になるだろうというが、その理由に驚いた。 運転可能な石炭火力発電所でも、値上がりした石炭を燃やして発電すればするほど赤字になるからと、運転をとめている発電所が多数あるからだ。 常識的にいえば、石炭火力は発電単価が原子力と並んでもっとも安いので、できるだけ稼動させるものだ。 ベトナムなど新興国では、新設火力発電所はガスタービン発電所よりも発電単価の安い石炭火力が好まれる。 その常識にまったく反する現実が、いま中国で進行中である。 発電と送電を分離して、送電会社が個々の発電所から電力を買い取るという形に “改革” した中国。 二酸化炭素の排出量を減らすべしという題目を無視できず、電力量あたりの二酸化炭素の排出が多い石炭火力は電力買取価格を低く抑える統制が行われている。 いっぽう中国政府が政策的に推進したいと考えているのがガスタービン発電で、そういう発電所からの電気の買取価格は十分高く設定してある。 石炭の国際価格が昨年から再び急騰し、これに合わせて中国の国産石炭の価格は上げられた。 石炭価格は統制をゆるめて値上がりをゆるし、石炭火力の電力の買取価格は統制しつづけて低く抑えるというアンバランスのおかげで、石炭火力発電所は発電すればするほど赤字ということになった。 なまじっかな改革をして発電と送電を分離したせいで、発電所ごとのコストをドンブリ勘定できなくなった。 石炭火力発電所の経営責任者としては、赤字を抑えようと発電所の運転を渋ることになる。 それで、電力が足りなくなる。 統制と自由化が、まだら状態であるがゆえに、起こる悲劇。 石炭価格や電力買取価格のような社会の基本は、政府が率先して調整し、産業振興に努める ―― というのが、社会主義の素朴なイメージだが、これを意外なかたちで裏切ってくれた。 石炭火力発電所に投資した海外企業は、資産を売りに出すなどして赤字撤退を余儀なくされているという。 だから言わんこっちゃない。中国に長期投資はするなと言ってきたのが、また当たった。 日本経済新聞 平成23年5月24日 7面 ≪電 力 不 足 中国 「今夏最悪に」 国有送電大手見通し 【北京=多部田俊輔】中国国有送電大手の国家電網は5月23日、夏の電力不足が過去最大の4千万キロワットに達する可能性があるとの見通しを明らかにした。原子力発電40基分に相当する。 日系を含め多くの企業で操業に支障が出始めており、中国経済に悪影響を与える恐れも出てきた。 中国では発電量の7割以上を石炭に頼るが、石炭価格上昇で発電会社の収益が悪化し、各社が発電そのものを抑制している。政府が物価抑制のために電力料金の引き上げに慎重なことも影響している。 これまでの夏の最大の電力不足は2004年の3,500万キロワットだった。 電力不足の深刻度には地域的なばらつきがあり、浙江や江蘇、広東省など製造業が盛んな地域を中心に、中国の3分の1超にあたる10省・直轄市以上で深刻な電力不足が起きる見通し。 国有大手企業も23日、稼働日の休日への変更や操業時間の短縮を受け入れ、住民用の電力確保に協力する方針を表明した。一部の日系自動車大手の操業にも支障が出始めた。 中国の発電用石炭価格は前年同期比で2~3割上昇したが、電力卸料金の引き上げは数%。5大発電会社の1~4月期の火力発電事業の営業赤字は1,300億円に達した。 政府は一部地域で卸料金の引き上げを認めたが、発電会社側は不十分だとしている。≫ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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