カテゴリ:映画・演劇(とりわけミュージカル)評
女性五人劇。
ちらしの写真は、たいそう綺麗なアロハシャツを着たおすまし美女たちだが、舞台は思い込みはずれの修羅場つづきで、それぞれの女性たちのそれぞれに意外な男づきあいの話が畳みかけてくる。 女性の観客はきっと、5人のうちの誰かの話に 「あぁ、自分も」 と思うのだろうし、男はきっと、自分が日頃見られない楽屋裏を覗くように楽しみ、そして人によっては女の一言にヒヤッとするかもしれない。 南洋の島のリゾートホテルで台風に閉じ込められた掃除婦とモト掃除婦。 女5人の状況喜劇だから、ストーリーで見せるというより、人物像がかってに動き出して絡み合う感じ。だから、続篇ありだよね、と期待が高まる。 セリフが生きている。とくに、ヤンキー娘っぽい弓場芙美江の日本語は、ぼくの大学2年生の娘のしゃべりを聞いているみたいでリアルだ。 うまい台本だなと思ったら、作・演出は桑原裕子さんという若手の女性だった。 その弓場芙美江を演じる岸田 茜さん (カラー版 右下のお嬢さん) は、ちらしでは おっとりと微笑んでいるのけれど、舞台では冒頭から激しいセックスシーンで (といっても一瞬の再現ひとり芝居なんだけどね)、そのあとはリズミカルに女性版のプー太郎ちゃんをよく演じてくれました。 日焼け化粧の妖精。 前回 本多劇場の 「欺瞞と戯言」 で岸田さんが演じた田舎淑女とは対照的な役柄があてがわれていて、岸田茜さんを名女優に育てようという周囲の愛を感じるのですね。 臆病そうで、間の悪そうな池 葉子。 斉藤とも子さんが、あたかも 「わたしって、地がこれなんです」 というノリで演じるのだが やがて、自分の配偶者がことばと言い回しでいかに自分をなぶり尽くすかを再現してみせる場面は、観るものの心を鷲づかみしてきて、舞台が一気に しまった。 駒塚由衣さんは多辯なる寝取られ女を、林田麻里さんは寡黙な寝取り女を、そして大西多摩恵さんは一見フツウに見える女、苛烈な過去を胸の奥に しまうフツウの女を演じる。 5人のキャラがしっかり立っているから、舞台上で次々といろんな組み合わせで進む掛け合いが、観聴きするだにたのしい。 高まり鎮まる風雨の音響や、ガラスが割れて (という設定のもと) カーテンが突風にあおられるシーンも、スタッフ苦心の力作。 演劇のなかには、ごくまれに、できれば千穐楽まで全回観たくなる秀作があるけれど、「熱風」 はそういう作品。ぼくにとってはミュージカル 「ミー&マイガール」 なみの名作と言えましょう。 岸田茜さんの魅力が全開のお芝居だものね。 (トム・プロジェクト制作の 「熱風」 は、赤坂レッドシアターで1月29日まで上演。) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
Jan 24, 2013 06:34:51 AM
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