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カテゴリ:ヤング・マイロン
キョンは集まった者たちに最後の確認をした。
「いいわね?ゲコクさんやアズキン、ネコファムやマイロンを信じましょ。そしてジャウジャウさんたちが間に合う事も。」 彼女はまだバンブーの別部隊が東の湖ではなく、北側城壁の下にそびえる絶壁から侵入する事を誰にも教えてはいなかった。 これはこの作戦の最後の希望であり、仲間にさえ明かすことのできない秘密だった。 彼女はこの別部隊の行動はゲオルグにさえ感知できていないと確信していた。彼はキョンが秘密の通路を登って来る時につぶやいた嘘の話をそのまま信じていたのだから。やはりザンガード寺院にあったあの粉は、本来法力を強化する働きのあるサンクリッド鉱石の一種にもかかわらず、逆に法力が及ぶのを防ぐ働きを持っているのだ。魔法薬学の権威である彼女はサンクリッド鉱石の加工のどこかで手を加える事により、真反対の性質を持たせることができるのであろうと推測していた。 今までその様な性質を持つ物は知られておらず、それを作り出したザンガード寺院の僧侶たちに対して少なからぬ恐れさえ感じていた。彼らはその粉により秘密の部屋を連合軍の魔術師から見えなくして生き延びたのだろう。 しかし、この粉が今回の作戦の重要な役目を果たすとは、これを生み出したヘイウッド原理魔術の僧たちや霊体となって生き残り五百年の時を超えたゾーゲンも思いもしなかっただろう。 ゲコクはようやく城壁の下に達した。 絶壁と城壁の間にはわずかながら身を横たえる事が出来るほどの場所があった。 彼に続いて続々と仲間たちが彼の傍に立ち、一旦ここで休憩することにした。彼らはもとはといえばほとんどが一般市民であり、厳しい戦闘訓練などは受けているとはいえ、こうした崖を登る事は初めての者も多いのだが一人の滑落者もなく無事に全員たどり着けた事が何よりだった。 それにキョンの提案で魔法を跳ね返す不思議な白い粉を各自が懐に携えているのが効いているのか、誰にも感づかれていない事にも安堵していた。まさか命がけでこの様なところからやってくるだろうなどとは思いもしていないだろうが。 アズキンはゲコクのもとにやってくると朗らかに言った。 「ほら日が昇り始めましたよ。何だかあの朝日を見ているとこれからの希望と力が湧いて来るような気がしますね?」 ゲコクもここまでやり抜いた満足感から思わずうなずいた。 「そうだな。みんなよく頑張った。あともう少しだ。アズキン、君はこの国に平和を取り戻したらその後どうするつもりだね?」 アズキンは太陽に向かって両手を広げ大きく深呼吸をすると振り向いて言った。 「俺、自己流だけど武術の訓練をして暮らしていたんです。病気の母さんや幼い弟妹たちの面倒を見ながら。だからレーオ達は武術魔法学校で勉強出来たけど俺は行く事ができなかったんです。母さんの病気はマイロンが治してくれたし、この国の兵士に雇ってもらってちゃんとした訓練を受けさせてもらえないかと思っているんです。」 そう言ってアズキンは朝日と同じくらい顔を赤らめた。 「うん、君なら立派にやって行けるよ。」 ゲコクはアズキンの肩を叩きながら微笑んで言った。 「ゲコクさんはどうするんですか?」 「私か?私は山に帰ってまた家族とのんびり暮らすつもりだ。もう戦いはまっぴらだからな。」 ゲコクは束の間のアズキンとの会話を楽しんだあと、再びいつもの厳しい顔に戻り、気を引き締め直して部隊に告げた。 「みんなそろそろ休憩はおしまいだ。これからはもうほとんど休む暇などないと思う。あの太陽が真上に上る頃ジャウカン達もやって来ていよいよ作戦が開始される。そしてあの太陽が西の空に沈む頃、みんなで勝利の美酒で酔いしれよう。」 Copyright (C) 2013 plaza.rakuten.co.jp/zakkaexplorer/ All Rights Reserved. 「雑貨Explorer」 今回のキーワードは「夜明け 休憩」で38件ヒット。 BGMはやっぱり欲しい、そんな気持ちになってしまう。
永六輔、中村八大コンビの歌に坂本九とくれば。
こういっちゃ失礼だが、YMOの中で彼が一番地味だったが、久しぶりに名前を聞く。
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