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カテゴリ:ファンタスティック・パロダイス
西暦2165年、イギリスの物理学者アイザック・オールドグラム博士は人類史上初となるタイムマシンを発明して、世紀のタイムトラベル実験に旅立とうとしていた。
この模様は本国イギリスから全世界にテレビ中継され70億人が固唾を呑んでこの人類史上最大のショーを見守っていた。 これはアポロ宇宙船から人類初の月面着陸の中継などとは比べるべくもない、途方もない大イベントだった。人類が成し得る科学的イベントとしては、100光年離れた星からの宇宙中継くらいには匹敵するのではないだろうか? 「博士、全世界が息を凝らしてテレビ画面にくぎ付けになっています。成功の自身はありますか?」 インタビューするアナウンサーさえ声が上ずり、全世界のテレビのスピーカーからもその緊張の度合いがはっきりと分かった。 オールドグラム博士はにっこりと余裕の笑顔を見せて言った 。 「大丈夫、これまで十分にテストを行い何度も成功させているし、誰も世界一の大嘘つきにはなりたくないですからね?」 アナウンサーは少し安堵の表情を浮かべながら次の質問をした。 「ところで博士。今日はいつごろの時代に行かれるおつもりですか?」 博士は少し眉をあげ得意そうに言った。 「私はこの記念すべきイベントでは是非現代科学の黎明期と言える500年前のイギリスに行き、全世界の皆さんにその当時の科学から現代の科学がどこまで進歩して来たかこという事を是非ご覧に入れたいと思っています。」 「という事は500年前ですから1665年ころという事ですね?」 アナウンサーは興奮しながら言った。 「ま、そういう事ですね。ではそろそろ皆さんにご覧に入れましょうか。」 博士はそう言うと早速自ら開発したタイムマシンに乗り込んだ。 博士が乗り込んでしばらくするとタイムマシーンはブーンと大きく唸りだし、激しい震動とともに不意にテレビカメラの前から消えてしまった。 だが事前に過去から現在にテレビ映像を送る役目をする中継ブイが時間軸空間に設置されていたので、その後はモニター画面からタイムマシンの中の様子が映し出された。 しばらくの間、博士の姿は二重にも三重にも重なりあってほとんど確認できない状態が続いたが、ようやく鮮明な画像となって博士がモニター画面に映し出された。 「西暦2165年の世界の皆さん。ここが我がイギリスの500年前の時代です。」 確かに映る景色は、今まで当時の新聞や絵画でしか見られない景色であった。 博士は証拠となる品々を、しかしその時代に影響のない物を選んで収集し始めた。ちょっとした変化でも時代が過ぎると何百倍にも増幅されて現代に影響するかも知れないからである。彼が集めたのは当時の新聞、店の広告、公共機関のチラシ、コインや紙幣といったものであった。 歴史的パラドックスを生み出すことは決して許されないのだ。 あらかじめ当時の服装で変装していたため、別段彼を気に留める事もなく行き交う人々は傍を通り過ぎて行った。 博士は十分な証拠を集めるとふと傍の庭から飛び出した枝にぶらさがった木の実に目が留まりもぎ取った。 「世界の皆さんこれが1665年のリンゴの実です。食べてみましょう。ううーん、やはりこの時代のリンゴもうまい。」 そう言って博士はリンゴをかじりながらタイムマシンに乗り込み現代へと戻って行った。 タイムマシンの扉を開いてテレビカメラの待つ彼の研究室に意気揚々と戻った博士は愕然とした。テレビカメラはおろか研究室もなく、町は寂れ果て、人々の様子は貧困に満ち、薄汚い小さな雑貨屋が一軒建っており石油ランプの灯火がメラメラと揺れていた。 タイムマシンの時代表示は確かに西暦2165年なのだが。もしかして1880年頃の大不況時代に来てしまったのではないかと思ったが、博士はある恐ろしい事に気付き手に持ったかじりかけのリンゴを見つめた。 「もしや、このリンゴはニュートンが落ちるのを見て万有引力の着想を得たあのリンゴだとしたら?」 - 記 - ロンドンでペストが大流行した1665年から1年半を、当時23歳のニュートンは故郷のウールスソープに逃れ(後にこの期間を「驚異の諸年」や「創造的休暇」と呼ばれる)、そこで微分積分、プリズム分光、万有引力の着想など後の世に多大な影響を与える業績を残している。 Copyright (C) 2014 plaza.rakuten.co.jp/zakkaexplorer/ All Rights Reserved. 「雑貨Explorer」 今回のキーワードは「ニュートン」で、34,282件ヒット。 ニュートンって弾力性か何かの単位?
これもニュートン。調べてみなければ・・・・・
ワインは全然知らないけれど、ニュートンってブランド?
でもニュートンと言えばこの人。母方の祖父はアインシュタインとも親しかったドイツのノーベル賞受賞物理学者マックス・ボルン。
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