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カテゴリ:ニャン騒シャーとミー八犬伝
諏訪の町で一人八犬士を探す小文吾は、旅芸人一座の座長、尺兵衛が慌てふためいてやって来るのに気付いた。 「小文吾様、一大事です。あさけのが・・・・」 そう言って彼は小文吾に旦開野が残した一通の手紙を手渡した。
****** 犬田小文吾 様 私こと旦開野は小文吾様の下から離れ、私の本懐を遂げるため一人旅立ちます。 小文吾様にいただいた温情は決して忘れませぬ。 小文吾様、また八犬士の方々が無事ご使命を果たされることを、遠くの空から祈っております。 旦開野 ******
小文吾は意味を理解できず、混乱しながら尺兵衛に怪訝な顔を向けた。 座長の尺兵衛は驚くべき事実を明かした。
甲斐の国
女は右袖をまくり上げ道節をまっすぐ見つめた。 道節はその腕に牡丹の痣があるのを見つけて尋ねた。 「お主の名は?」 女、いや男は言った。 「私の名は、犬坂毛野。」
一刻後、二人の男は人気のない小さな祠で話し込んでいたが、一方の男はどう見ても女としか見えないため、傍目には夫婦が何やら語らっているようにしか見えなかった。 「何?小文吾に会った?」 道節は驚いて聞き返した。 「はい、私が大怪我を負ったとき助けていただきました。犬塚信乃様もご一緒でした。」 そう言って毛野は犬塚信乃が病の床に臥せる浜路という娘を訪ねて甲斐の国へ向かったことを話した。 信乃もこの同じこの甲斐の国にいる、しかも浜路の名を聞き道節は仰天した。 腹違いの妹の浜路は半月ばかり前に、彼の腕の中で果てたのだ。 信乃の許嫁の浜路は網乾に刺されて既にこの世にはいないが、同じ浜路の名を持つ娘に会いに行った因果の深さに毛野は驚きの表情であった。 「俺たち五人の剣士は武蔵の国で別れ、小文吾と信乃は相模箱根方面に八犬士を探して旅立ったのだ。お主なぜ小文吾にお主が犬坂毛野で八犬士の一人であることを打ち明けなかった?」 毛野はこのようなことを言った。 毛野の母親は千葉氏の重臣である粟飯原胤度の妾の子であったが、同じ千葉家の家臣である馬加大記(まくわり だいき)の策謀により、籠山逸東太(こみやま いっとうた)の手で胤度は討たれしまった。そこで母は毛野を連れ相模箱根の犬坂村に逃れ、毛野を女装させて旦開野と名乗らせ女田楽師として身を隠したのだった。 父の敵の籠山逸東太は今は関東管領扇谷定正に仕えることを知り、仇討ちを果たそうと甲斐の国を抜けようとしたのだった。 毛野は八犬士に加わるより、自分の本懐を第一と考えたのだ。 「俺も扇谷定正に父を殺され復讐を誓っているのだ。俺は追っ手を逃れて扇谷に近づくために甲斐を回って武蔵の国に向かう所だ。どうだ手を組まぬか?」 道節が毛野にそう持ち掛けたとき、祠の戸が開き三人の猫族の者が現れた。 年配の猫族の女が言った。 「さっきからこの裏で聞かせてもらっていたけど、あんた達犬塚信乃さんのお知り合いかい?」 道節と毛野は思わず身構えたが、女が犬塚信乃と犬飼現八、犬川荘助たちと関わったことを話すと心を許した。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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