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カテゴリ:BL小説
『情熱の温度』木原音瀬 あら、画像が違う。あ、文庫はレーターさん違うんだ。読んだのは山田ユギさん版。 これまで読んだ木原さんの作品のなかでは、もっとも古いものになるのかな。発行が99年で、同人誌からの再録だから、下手すると10年ぐらい前の作品かも。でも、先日偶然ブックオフで発見した一冊は、商業デビュー作が収められた本だった。これも楽しみ。 あ、それよりおなじオークラ出版のノベルズ『プレイス』が、いつも行く新刊書店で平積みになっていて驚いた。初版(99年)のまま。デッドストックでも見つかったのかな。 さて今回のカップルは、 教え子×教師 年の差17歳 最初はどっちもノンケ 生きていることにすら自身がもてない、さえない高校教師(受け)が、勢いで女子生徒に告白→その生徒のBF(攻め)から牽制→自殺未遂→救った相手が攻めの父親(父子家庭)というきっかけで、自分のせいで入院することになった父親の代わりに、攻めの家事全般の面倒を見ることになった受け、という設定だけど、最初は自殺未遂とバレバレの行動+リスカの痕を目撃し、それを阻止するために面倒をみられるフリをしている攻めだが、あまりに要領悪く、人付き合いもヘタ、口ベタないい大人をほうっておけなくなって、かまっているうちにラブが芽生える……というストーリー。 視点交代しての高校編(攻め視点)と、その後編(受け視点)にSS1本だけど、後半、受け視点のお話が、例によって最後はぐっと涙腺を押される話になっている。 他の人の小説だと、周囲の環境設定が希薄だったり、二人っきりしか出てこない話だ と「ゴルァ!」とその広がりのなさにげんなりするのに、木原さんが書くと、みっしり濃厚な心理描写が続くので、二人きりの話でもおなかいっぱいになる。木原さんだからして、当然痛い要素も満載で、このダメ教師は何度も女に酷い目に遭って、最後は障害を負ってしまう、あんまりな人生なわけだが。 しかし、要領の悪い教師って、自分の身近にも一人いるけど、無趣味で不器用で、真面目すぎて周囲から浮いていて、人にいいように利用されているところとか、そっくりだ。ただ、自ら生きている価値がないとか思って自殺するほど後ろ向きじゃないぞ。誰が見ても教師しか向いてなさそうなのに、そいつはしょっちゅう「もう、今度こそ教師なんてやめてやる!」と言っているからな。無理だっつうの。 ギリギリ終わりのほうにならないと、二人は結ばれないんだけど(それまではキスとペッティングのみ)、それもこれも、男同士とか年齢差とか常識にとらわれて、攻めとの関係を受容できないことを、年下の攻めはよく理解していて、常に一歩引いて見守っているからだ。今時の若者なのに、先生のそばにいるだけでいい、絶対に無理強いはしないという健気さに泣けてくる。不器用で、うまく感情を言葉にできない攻めを、ちゃんと立てながらも、守ろうとする攻め。 こんなよくできた嫁が欲しいと思うよ。ほんと。 女性は、例によってイヤなやつばっかり出てきて、これも木原さんの常套だけど、女性になんか恨みでもあるのか、それとも女によってどんどんどん底に落とされていく男を書くのが好きなのか、SとMがないまぜになっているところは、BLならではの面白さかもしれない。 ラストの20ページほどのすれ違いラブったら、まるで少女マンガのような初々しさ。でもそれが足を引きずった中年男と大学生というところが泣ける。レイプや病死、精神障害と痛さ満載の「Flower」シリーズもいいけど、こういう普通の話も面白い。 公務員辞めて故郷の雑貨屋を継ぐという設定がさ、なんだかありふれていそうで「もったいないだろっ」という違和感があるなあ。せめて勤続25年クリアしてからやめるとかさ、もうちょっとリアリティが欲しい。あと貢がせる女の詐欺まがいの手口がわかりやすすぎ。 機内で爆睡するため、徹夜してみた。さてそろそろ箱崎CAT行かなくちゃ。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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