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カテゴリ:BL小説
![]() 『そして恋がはじまる』月村奎 とても人気のある作家さんらしい。やはり1995年あたりにデビューした一連の新時代(つまり耽美からBLへの流れを確立した)の作家さんの一人らしい。でもなぜかこれまで縁がなくて一冊も読んでいなかったけど、やっと読めたよ。 しかもこの本、例の『ダ・ヴィンチ』での「BLに芥川賞を!」特集で、木原の「箱」と「檻」、剛さんの「花扇」と並んでベスト3に上げられていた作品だ。 いいよ、いい。こういうの好きだ。なんちゅうか、叙情派。とっても乙女のハートを直撃。リリカル、ナイーブ、センシティブ、センチメンタルとかイノセントとか、そのあたりの形容詞がみんな当てはまる。作者の作為的なところも感じないし、実に新鮮。 なんか、田舎のまじめな中学生とかにこういう小説読んでもらいたいよ。ラノベとしてもよくできていると思うし、なんか自然にBLの道に進めそうだ(笑)。 中学の頃に吉行淳之介にファンレターを書いていたような自分が、もし10代の頃にこの作品を読んでも「ケッ」とか思って、一顧だにしなかったかもしれないけど、汚れきった大人になった今なら、こういう純粋さとか恋や性を意識して戸惑うという感情が理解できる。うらやましいというか、ほほえましいというか、取り戻せないことがわかっているから、生温かい感情だけど。 ハンサムで優等生だけど、出生の秘密をかかえている平凡な高校生と、ゲイであることは自覚しているものの社会人としてその性癖に多少後ろめたさを感じている開業司法書士のお話。年の差12歳。 司法書士がね、思いを寄せる高校生に対して、ずうっと丁寧語で話すんだよね。絶対乱れない。こういう大人は実はとても危険なのだが、彼は、いたいけな高校生をゲイの道に引き込んではいけないと思い、必死で思いをこらえて、単なる茶飲み友達でいようとする。 ……あらすじは別に突飛でもワクワクでもドラマティックでもないんだ。でも出会いのきっかけとか、主人公が自分の性格を自覚していて、でもどうにもできないところとか、とにかく、言葉に出せない思いとか、家族に対する葛藤とか、心の動きがよく描けているし、とりあえず受けの高校生が、ちゃんと成長していくところが新鮮だ。 ほとんどのBLには成長譚はありえないからな。ティーンエイジャーに、ちゃんと人を好きになること、好きな人を慈しむことが、性的な関係を結ぶこととリンクするんだよということを理解させている。いい話しじゃないか。性教育BL小説(笑)。ただし、今の高校生でこんなウブな子は実際にはいないだろうな。小学校高学年でもいいかも>それは犯罪。 周囲の人間関係もよかった。高校生の家族、生みの母、司法書士を好きなゲイのお兄さんとか。みんないい人で、主人公を大事に思っている。おいおい、いい人ばっかりかよというツッコミはなしで。 ポルノ小説書いている主人公のお姉さんが実は処女で、9歳も年下の主人公の同級生に破瓜されるエピソードが面白かった。あの姉ちゃん、かっこいいよ。 続きもあるらしいので、これはぜひ読まなくては。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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