生きている蒸気機関車は、わたしたち人間同様、休憩している間も、その全身から少しずつ息(蒸気)を吐き出しています。そして、そのことが思いもよらぬ芸術作品を生み出すことにもなります。
わたしたちが訪れたとき、白銀の町に雪はほとんど積もっていませんでした。しかし、中国の内陸深くに位置するため、当然のことながら気温は低い土地柄です。そのため、あらゆる水分は僅かの間に氷へと姿を変えてしまいます。
お昼前に訪れた機務段(機関庫)には2輌の上遊が停まっていました。3年前に訪れたときには、機務段の職員が好奇の視線を投げかけてきましたが、今回はそういうこともありません。わたしたちは静かな構内を歩き回り、好みのシーンを撮影していきました。ふと気づくと、機関車のパイプから、筍のようにつららが長く伸びています。これまでいくつかの機務段に入らせてもらってきましたが、機関車につららが付いているのは、あまり見た記憶がありません。
お! と思ってシャッターを切ったのですが、さらに目を転ずると、キャブ(運転台)に上るステップは、それ以上に見事なつららで覆われていました。この機関車は、おそらく一晩中戸外に放置されていたのでしょう。僅かに漏れ出した水が、かくもすばらしいつららを作り出したのだと思います。真冬の、極寒の地ならでは、の光景です。