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カテゴリ:社会時評
●日本に希望はあるのか?(Can we share hopes in Japan?)
(超管理社会) ++++++++++++++++++++ 資格と規則で、がんじがらめ。 何をするにも、許可だの認可だのが必要。 地方の小さな町で、観光ガイドをするにも必要。 祭りにさえ、自由に出られない。 服装から持ち物まで決められ、許可証まで必要。 こんな国で生きていこうと思ったら、 小さく、狭い世界で、閉じこもるしかない。 ここまで書いて、以前、こんなことを 書いたことがある。 ++++++++++++++++++++ ●日本は超管理型社会 最近の中学生たちは、尾崎豊をもうすでに知らない。そこで私はこの歌を説明したあと、中学生たちに「夢」を語ってもらった。私が「君たちの夢は何か」と聞くと、まず一人の中学生(中2女子)がこう言った。「ない」と。 「おとなになってからしたいことはないのか」と聞くと、「それもない」と。「どうして?」と聞くと、「どうせ実現しないから」と。もう1人の中学生(中2男子)は、「それよりもお金がほしい」と言った。そこで私が、「では、今ここに1億円があったとする。それが君のお金になったらどうする?」と聞くと、こう言った。 「毎日、机の上に置いてながめている」と。ほかに5人の中学生がいたが、皆、ほぼ同じ意見だった。今の子どもたちは、自分の将来について、明るい展望をもてなくなっているとみてよい。このことは内閣府の「青少年の生活と意識に関する基本調査」(2001年)でもわかる。 15~17歳の若者でみたとき、「日本の将来の見とおしが、よくなっている」と答えたのが、41・8%、「悪くなっている」と答えたのが、46・6%だそうだ。 ●超の上に「超」がつく管理社会 日本の社会は、アメリカと比べても、超の上に「超」がつく超管理社会。アメリカのリトルロック(アーカンソー州の州都)という町の近くでタクシーに乗ったときのこと(01年4月)。タクシーにはメーターはついていなかった。料金は乗る前に、運転手と話しあって決める。しかも運転してくれたのは、いつも運転手をしている女性の夫だった。「今日は妻は、ほかの予約で来られないから……」と。 社会は管理されればされるほど、それを管理する側にとっては便利な世界かもしれないが、一方ですき間をつぶす。そのすき間がなくなった分だけ、息苦しい社会になる。息苦しいだけならまだしも、社会から生きる活力そのものを奪う。尾崎豊の「卒業」は、そういう超管理社会に対する、若者の抗議の歌と考えてよい。 (参考) ●新聞の投書より ただ一般世間の人の、生徒の服装に対する目には、まだまだきびしいものがある。中日新聞が、「生徒の服装の乱れ」についてどう思うかという投書コーナーをもうけたところ、一一人の人からいろいろな投書が寄せられていた(2001年8月静岡県版)。それをまとめると、次のようであった。 女子学生の服装の乱れに猛反発 ……8人 やや理解を示しつつも大反発 ……3人 こうした女子高校生に理解を示した人 ……0人 投書の内容は次のようなものであった。 ☆「短いスカート、何か対処法を」……学校の校則はどうなっている? きびしく取り締まってほしい。(65歳主婦) ☆「学校の現状に歯がゆい」……人に迷惑をかけなければ何をしてもよいのか。誠意と愛情をもって、周囲の者が注意すべき。(40歳女性) ☆「同じ立場でもあきれる」……恥ずかしくないかっこうをしなさい。あきれるばかり。(16歳女子高校生) ☆「過激なミニは、健康面でも問題」……思春期の女性に、ふさわしくない。(61歳女性) ●学校教育法の改正 校内暴力に関して、学校教育法が2001年、次のように改定された(第26条)。 次のような性行不良行為が繰り返しあり、他の児童の教育に妨げがあると認められるときは、その児童に出席停止を命ずることができる。 一、 他の児童に傷害、心身の苦痛または財産上の損失を与える行為。 二、 職員に傷害または心身の苦痛を与える行為。 三、 施設または設備を損壊する行為。 四、 授業その他の教育活動の実施を妨げる行為、と。 文部科学省による学校管理は、ますますきびしくなりつつある。 ++++++++++++++++++ 新聞社への投書の中で、16歳の少女が、「同じ立場でもあきれる。恥ずかしくないかっこうをしなさい。あきれるばかり」と書いている点が、気になる。が、私に言わせれば、こういう優等生のほうに、あきれる。「恥ずかしくないかっこうって何か」と。「まただれに対して、恥ずかしくあってはいけないのか」と。 顔のある子どもは、その顔を大切にすればよい。幸せな子どもだ。しかし顔のない子どもは、どうやって生きていけばよいのか。 あえて告白しよう。最近、……といっても、この5、6年のことだが、私はあのホームレスの人たちを見ると、言いようのない親近感を覚える。ときどき話しかけて、冗談を言いあうこともある。そのホームレスの人たちというのは、その少女の感覚からすれば、「恥ずかしい部類の人間」ということになる。 しかしどうしてそういう人たちが、恥ずかしいのか。多分、その投書を書いた少女は、そういうホームレスの人たちを見ると、あきれるのだろう。もしそうなら、どうして、その少女は、あきれるのか。私には、よく理解できない。 そう、私は、子どもたちを教えながらも、その優等生が、嫌い。ぞっとするほど、大嫌い。以前、こんな原稿も書いたことがある。それを掲載しておく。少し話が脱線するが、許してほしい。 +++++++++++++++++++ 【世間体】 ●世間体で生きる人たち 世間体を、おかしいほど、気にする人たちがいる。何かにつけて、「世間が……」「世間が……」という。 子どもの成長過程でも、ある時期、子どもは、家族という束縛、さらには社会という束縛から離れて、自立を求めるようになる。これを「個人化」という。 世間体を気にする人は、何らかの理由で、その個人化の遅れた人とみてよい。あるいは個人化そのものを、確立することができなかった人とみてよい。 心理学の世界にも、「コア(核)・アイデンティティ」という言葉がある。わかりやすく言えば、自分らしさ(アイデンティティ)の核(コア)をいう。このコア・アイデンティティをいかに確立するかも、子育ての場では、大きなテーマである。 個人化イコール、コア・アイデンティティの確立とみてよい。 その世間体を気にする人は、常に、自分が他人にどう見られているか、どう思われているかを気にする。あるいはどうすれば、他人によい人に見られるか、よい人に思われるかを気にする。 子どもで言えば、仮面をかぶる。あるいは俗にいう、『ぶりっ子』と呼ばれる子どもが、このタイプの子どもである。他人の視線を気にしたとたん、別人のように行動し始める。 少し前、ある中学生とこんな議論をしたことがある。私が、「道路を歩いていたら、サイフが落ちているのがわかった。あなたはどうするか?」という質問をしたときのこと。その中学生は、臆面もなく、こう言った。 「交番へ届けます!」と。 そこですかさず、私は、その中学生にこう言った。 「君は、そういうふうに言えば、先生がほめるとでも思ったのか」「先生が喜ぶとでも思ったのか」と。 そしてつづいて、こう叱った。「サイフを拾ったら、うれしいと思わないのか。そのサイフをほしいと思わないのか」と。 するとその中学生は、またこう言った。「そんなことをすれば、サイフを落した人が困ります」と。 私「では聞くが、君は、サイフを落して、困ったことがあるのか?」 中学生「ないです」 私「落したこともない君が、どうしてサイフを落して困っている人の気持ちがわかるのか」 中「じゃあ、先生は、そのサイフをどうしろと言うのですか?」 私「ぼくは、そういうふうに、自分を偽って、きれいごとを言うのが、嫌いだ。ほしかったら、ほしいと言えばよい。サイフを、もらってしまうなら、『もらうよ』と言えばよい。その上で、そのサイフをどうすればいいかを、考えればいい。議論も、そこから始まる」と。 (仮に、その子どもが、「ぼく、もらっちゃうよ」とでも言ってくれれば、そこから議論が始まるということ。「それはいけないよ」とか。私は、それを言った。決して、「もらってしまえ」と言っているのではない。誤解のないように!) こうして子どもは、人は、自分を偽ることを覚える。そしてそれがどこかで、他人の目を気にした生きザマをつくる。言うまでもなく、他人の目を気にすればするほど、個人化が遅れる。「私は私」という生き方が、できなくなる。 いろいろな母親がいた。 「うちは本家です。ですから息子には、それなりの大学へ入ってもらわねば、なりません」 「近所の人に、『うちの娘は、国立大学へ入ります』と言ってしまった。だからうちの娘には、国立大学へ入ってもらわねば困ります」ほか。 しかしこれは子どもの問題というより、私たち自身の問題である。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2009年07月04日 08時09分26秒
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