カテゴリ:Q輔とU子と「壁にある物」
前略。 僕は急いでいた。 一刻も早く! 急いで二階へ駆け上がれ! ヤバイ!間に合わない! 急げ!急げ!ホラ急げ! あれっ!?!?!?!? この日、この時、この瞬間、 突然僕の頭に、 聞こえるはずのない、雲の彼方からの雷鳴、 見えるはずのない、雲の切れ間のからの光芒、 僕。階段の途中。立ち止まり。動けない。 あ。眼前に。妻。登場。 ベランダでひと仕事を終え額に汗。 乾いた洗濯物が大量に入った洗濯カゴを両手に抱え。 「あんた、何しとんのこんなとこで?そんな深刻な顔して。」 妻、これ見よがしに忙しそうに僕に問う。 ・・・いやね。 ここでこうして振り返っていたのさ。 そう。これまでの自分の人生を。 「はぁ?」 今日まで自分は何をしてきた・・・。 そして何を成し得なかった・・・。 「ごめん。ちょっと忙しいんですけど・・・。」 そして君が今日まで僕にくれた 溢れんぱかりの愛の日々を・・・。 「うざっ! こぅらぁ~あんたぁ~!二度と聞かんで答えやぁ! そこで!何!し!と!る!の!」 ・・・いやね。 あれっ!と思ったらよ。 何しにきたんだっけ? 思い出せねーの・・・はは。 「・・・どけぃ!じゃまっ!」 狭い階段の途中、 すれ違いざま身を細める僕の傍らを、 大量の洗濯物と妻が行く。 背後から、 イノシシが野山の斜面を猛進するかのような轟音。 どたどたどたどたどたどたどた。 妻の気配がなくなり、 階段には、階段たる、いつもの静寂。 前略。 階段の途中で振り返ると、 吹き抜けには、マリメッコのファブリックパネル。 これ、たしか「雪いちご」って名前だっけ。 てゆーか、「雪いちご」なんて植物ねーよ。 あれ?あったっけ?・・・。 実際にあるのかないのかはっきりしない木なのだから 見方・感じ方は、見る人の、どーぞ御自由にってことでいーのかな・・・。 あれ?僕、何か急いでなかったっけ? ・・・まあいーさ。慌ててもろくなことはねー。 しょせん、ど忘れする程度の急用ってこった。 それより、いーね、この「雪いちご」。 間接照明がまるで木漏れ日のよう。 若葉のざわめきさえ、聞こえてきそうで・・・。 にほんブログ村 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2017.12.21 21:43:10
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