カテゴリ:メキシコシティ
メトロブス、というのがある。
“ブス”といっても不細工のことではない。バスのこと。 Bus、英語ではバス、と読むがメキシコではそのままブス、と発音する。 渋滞解消のために数年前にできた、バス専用のエクスプレス・レーン。 高速公共バスシステム網だ。 このレーン、バス以外の車は入れない。もちろん人も立ち入り禁止だ。 できたばかりのとき、なぜか私はそのバス以外立ち入り禁止のレーンをふらふらと 歩いていた。今思えば思わぬ好天に恵まれたせいで上機嫌になったから、と思われる。 突然、走っている車が何台もクラクションを鳴らし、 私に向かって“轢かれるぞー!!”、“あんたの後ろからバスが来てる~!!” と教えてくれて、私は直進して走った。 というのも後ろには私を追いかけるバス。左には目の高さほどあるバスのプラットホーム が延々と立ちはだかり、右には車がびゅんびゅん走っていて歩道に渡れない。 前に走るしかなかった。 もはやこれまでか!アディオス、メキシコ・・・アディオス、私の人生・・・ と 思ったその時、ぎりぎりで横断歩道にたどり着き、横に身をよけ、命拾いした。 なんのアクション映画に出演したのか? 皆が一部始終を見ていた。 「あの東洋人ばかだねー」「外人だからきっと知らなかったんだよ・・・」 などとひそひそつぶやいているのが聞こえなくてもわかった。 ところでこのメトロブス、距離に関係なく50円、と少々高めの料金設定。 高級なためか、運転手も日本の運転手のように無言でもくもくと業務を遂行する。 運転席にきらびやかな飾りを施し、ラジオの音楽をがんがんかけて、 タバコを吸いながら恋人と子供を横に乗せて片手運転、というような一般的なバスの 運転手とは違う。 物売り、流しの歌手も乗ってこない。禁止されているようだ。 それがショックだった・・・。近代化すると味わいが無くなり、どんどん機械的に なっていくような気がした。 例えば日本の昔の八百屋などは、なじみの客とのコミュニケーションがもっとあったはず。 子供が迷子になっても「あ、あれは山口さんちのつとむくんだ。このごろ少し変だが、 どうしたのかな?」などと言って声をかけてくれたに違いないが、今のコンビニでは それはないだろう。 代わってこれは今も走っている一般的な市内バス(ラジオで音楽がんがんの)。 フロントガラスが割れていたり、自動ドア開けっ放しで走ったりしている。 そして狭いのが特徴。 確かに危険だが趣はある。客とけんかなぞしたり。 メトロブスは渋滞解消には役立ったし、もちろん便利でこぎれいだが、 なんとなくさみしい様な気もする。 アディオス、古き良きメキシコ・・・。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008年06月10日 16時48分58秒
[メキシコシティ] カテゴリの最新記事
|