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偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

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2017.08.18
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カテゴリ:万葉

 新古今集に大伴家持の歌として掲載されているものは全部で12首ある。また、「よみ人知らず」とされているが万葉集の方で大伴家持の歌となっているものが1首あるので、これを合わせると13首ということになる。しかし、うち2首は、万葉集では、ひとつは柿本人麻呂歌集の歌となって居り、もうひとつは大伴像見(かたみ)の歌となっているので、正確には11首ということになる。尤も、万葉集に登場しない歌は果たして大伴家持作の歌であるのか極めて怪しいのであるが、一応、新古今集の顔を立てて大伴家持さんの歌ということにして置きます。
 いずれにせよ、当ブログは偐万葉田舎家持歌集であるから、大伴家持の歌でないものも大伴家持の歌として掲載しても一向に差し支えないということにはなるのである(笑)。ということで、その13首を書き出して置くことといたします。
(注)
 新古今集の歌は太字表記です。
 岩波文庫「新訂新古今和歌集」よりの抜粋です。
 
万葉集に元歌があるものは、参考までにそれを併記しました。
 現代語訳は小生が適宜に付けたもので、正確性は保証しません。
 新古今と万葉の双方の歌の意味が同じものは、現代語訳は両歌兼用としました。

まきもくの檜原のいまだくもらねば小松が原にあわ雪ぞ降る(巻1-20)
(巻向の桧原はまだ曇ってもいないのに、ここ小松が原には淡雪が降っている。)
巻向の檜原もいまだ雲居ねば小松が末(うれ)ゆ沫雪(あはゆき)流る(柿本人麻呂歌集 万葉集巻10-2314)
(巻向の桧原はまだ雲もかかっていないのに、松の梢からあわ雪が流れるように降って来る。)

29桧原神社
(桧原社)

行かむ人来む人しのべ春がすみ立田の山のはつざくら花(巻1-85)
(往く人も来る人もみな思いえがきなさい、春霞が立つ、立田の山の初桜の花を。)

ふるさとに花はちりつつみよしののやまのさくらはまださかずけり(巻2-110)
(わが里の花は散りつつあるのに、吉野の桜はまだ咲かないでいる。)

からびとの舟を浮べて遊ぶてふ今日ぞわがせこ花かづらせよ(巻2-151)
(唐の人々が舟を浮かべて遊ぶという今日、皆さんも花かずらをお付けなさい。)
漢人(からひと)も筏浮かべて遊ぶといふ今日こそわが背子花かづらせな (大伴家持 万葉集巻19-4153)
(唐の人々も筏を浮かべて遊ぶという今日こそ、皆さんも花かずらをお付けなさい。)

郭公一こゑ鳴きていぬる夜はいかでか人のいをやすくぬる(巻3-195)
(ホトトギスが一声鳴いて飛び去って行った夜は、人はどうして安らかに眠られようか。)

神なびのみむろの山の葛かづらうら吹きかへす秋は来にけり(巻4-285)
(甘南備の三室山の葛の葉をうらさびしく風が吹き返す秋がやって来たことだ。)
(注)万葉で「みむろ・みもろ」の山と言えば三輪山であるが、新古今では立田の三室山のことと考えられるので、三室山としました。みむろ、みもろは神のいます処という意味で、カンナビと同じ意味である。

 三室山・竜田川対岸から望む.JPG
(三室山)

さを鹿の朝立つ野邊の秋萩に玉と見るまで置けるしらつゆ(巻4-334)
さを鹿の朝立つ野邊の秋萩に玉と見るまでおける白露(大伴家持 万葉集巻8-1598)
(牡鹿が朝に立つ野辺の秋萩に、玉かと見まがうばかりに置いている白露だ)

今よりは秋風寒くなりぬべしいかでかひとり長き夜を寝む(巻5-457)
(今からは秋風が寒くなるだろう。どのようにして一人で長い夜を寝ようか。)
今よりは秋風寒く吹きなむをいかにかひとり長き夜を寝む(大伴家持 万葉集巻3-463)
(今からは秋風が寒く吹くだろうに、どのようにして一人で長い夜を寝ようか。)

わが宿の尾花がすゑにしら露の置きし日よりぞ秋風も吹く(巻5-462)
(わが家のススキの穂先に白露が置いたその日から秋風も吹くようになった。)

芒
(尾花)

鵲のわたせる橋に置く霜のしろきを見れば夜ぞ更けにける(巻6-620)
(宮中の階段に霜が降りて白くなっているのを見ると、もうすっかり夜が更けてしまったのだ。)

鵲森宮・大伴家持歌碑
(鵲森宮の大伴家持歌碑)

はつ春のはつねの今日の玉箒手にとるからにゆらぐ玉の緒(よみ人知らず 巻7-708)
初春の初子の今日の玉箒(ばはき)手に取るからにゆらく玉の緒(大伴家持 万葉集巻20-4493)
(初春の初子の今日の玉箒は手に取るだけで揺れて音がする玉飾りの緒だ。)

秋萩の枝もとををに置く露の今朝消えぬとも色に出でめや(巻11-1025)
(秋萩の枝もたわわに置く露が今朝消えてしまうとも、それを顔に出すことがあろうか。ない。)
秋萩の枝もとををに置く露の消(け)なば消(け)ぬとも色に出でめやも(大伴像見 万葉集巻8-1595)
(秋萩の枝もたわわに置く露のように消えてしまうなら、消えてしまってもいい。そうだとしてもそれを顔に出すようなことがあろうか。ない。)

足引の山のかげ草結び置きて戀ひや渡らむ逢ふよしをなみ(巻13-1213)
(<あしひきの>山陰に生えている草を結び置いて恋慕って居よう。逢うすべがないので。)






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最終更新日  2017.08.18 22:22:38
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