(承前)
前頁の続編です。
雪の万葉歌全111首(但し、短歌に限る。)のうち第1巻~第10巻所収のもの73首は前頁の「雪の万葉歌(上巻)」に掲載しました。
本頁では第11巻~第20巻所収の残り38首を以下に掲載します。
まあ、自身の「資料用」みたいな記事ですから、ご訪問いただいたお方には、「単なる万葉集の歌の羅列に過ぎないではないか。」と失望させてしまう内容ですが、お赦しを。
雪の写真などで誤魔化して置きましょう(笑)。
(京都・小塩山での雪。古い写真<2012年2月17日>の再掲です。)
<参考>小塩山登山 2012.2.27.
第11巻(なし)
第12巻
み雪降る 越の大山 行き過ぎて
いづれの日にか 我が里を見む (巻12-3153)
第13巻
み雪降る 吉野の岳に 居る雲の
よそに見し児に 恋ひわたるかも (巻13-3294)
第14巻
筑波嶺に 雪かも降らる 否をかも
かなしき児ろが 布乾さるかも (東歌 巻14-3351)
第15巻(なし)
第16巻ぬばたまの 黒髪濡れて 沫雪の
降るにや来ます ここだ恋ふれば (娘子 巻16-3805)
第17巻
み園生の 百木の梅の 散る花し
天に飛び上がり 雪と降りけむ (大伴家持 巻17-3906)
降る雪の 白髪までに 大君に
仕え奉れば 貴くもあるか (橘諸兄 巻17-3922)
天の下 すでに覆ひて 降る雪の
光を見れば 貴くもあるか (紀清人 巻17-3923)
山の峡 そことも見えず 一昨日も
昨日も今日も 雪の降れれば (紀男梶 巻17-3924)
新しき 年の初めに 豊の稔
しるすとならし 雪の降れるは (葛井諸会 巻17-3925)
大宮の 内にも外にも 光るまで
降れる白雪 見れど飽かぬかも (大伴家持 巻17-3926)
庭に降る 雪は千重敷く 然のみに
思ひて君を 我が待たなくに (大伴家持 巻17-3960)
立山に 降り置ける雪の 常夏に
見れども飽かず 神からならし (大伴家持 巻17-4001)
立山に 降り置ける雪の 常夏に
消ずてわたるは 神ながらとそ (大伴池主 巻17-4004)
婦負の野の すすき押しなべ 降る雪に
宿借る今日し 悲しく思ほゆ (高市黒人 巻17-4016)
立山の 雪し消らしも 延槻の
川の渡り瀬 鐙漬かすも (大伴家持 巻17-4024)
第18巻
雪の上に 照れる月夜に 梅の花
折りて送らむ 愛しき児もがも (大伴家持 巻18-4134)
第19巻
わが園の 李の花か 庭に降る
はだれのいまだ 残りたるかも (大伴家持 巻19-4140)
この雪の 消残る時に いざ行かな
山橘の 実の照るも見む (大伴家持 巻19-4226)
ありつつも 見したまはむそ 大殿の
このもとほりの 雪な踏みそね (三方沙弥 巻19-4228)
新しき 年の初めは いや年に
雪踏み平し 常かくにもが (大伴家持 巻19-4229)
降る雪を 腰になづみて 参り来し
験もあるか 年の初めに (大伴家持 巻19-4230)
なでしこは 秋咲くものを 君が家の
雪の巌に 咲けりけるかも (久米広縄 巻19-4231)
雪の山斎 巌に植ゑたる なでしこは
千代に咲かぬか 君がかざしに (蒲生娘子 巻19-4232)
うち羽振き 鶏は鳴くとも かくばかり
降り敷く雪に 君いまさめやも (内蔵縄麻呂 巻19-4233)
鳴く鶏は いやしき鳴けど 降る雪の
千重に積めこそ 我が立ちかてね (大伴家持 巻19-4234)
白雪の 降り敷く山を 越え行かむ
君をそもとな 息の緒に思ふ (大伴家持 巻19-4281)
言繁み 相問はなくに 梅の花
雪にしをれて うつろはむかも (石上宅嗣 巻19-4282)
梅の花 咲けるが中に 含めるは
恋ひや隠れる 雪を待つとか (茨田王 巻19-4283)
大宮の 内にも外にも めづらしく
降れる大雪 な踏みそね惜し (大伴家持 巻19-4285)
み園生の 竹の林に うぐひすは
しば鳴きにしを 雪は降りつつ (大伴家持 巻19-4286)
うぐひすの 鳴きし垣内に にほへりし
梅この雪に うつろふらむか (大伴家持 巻19-4287)
川渚にも 雪は降れれし 宮の内に
千鳥鳴くらし 居む所なみ (大伴家持 巻19-4288)
第20巻
松が枝の 地に着くまで 降る雪を
見ずてや妹が 隠り居るらむ (石川内命婦 巻20-4439)
高山の 巌に生ふる 菅の根の
ねもころごろに 降り置く白雪 (橘諸兄 巻20-4454)
消残りの 雪にあへ照る あしひきの
山橘を つとに摘み来な (大伴家持 巻20-4471)
初雪は 千重に降りしけ 恋ひしくの
多かる我は 見つつ偲はむ (大原今城 巻20-4475)
み雪降る 冬は今日のみ うぐひすの
鳴かむ春へは 明日にしあるらし (三形王 巻20-4488)
新しき 年の初めの 初春の
今日降る雪の いやしけ吉事 (大伴家持 巻20-4516)
以上、38首。
第1巻~第10巻 73首
第11巻~第20巻 38首 合計111首
雪の万葉歌の数は、梅のそれよりもやや少なく、桜のそれよりもずっと多い、ということが分かりました。