カテゴリ:花
今日は、銀輪花散歩であります。
オオムラサキとコムラサキと言えば蝶であるが、ムラサキシキブとコムラサキと言えば植物である。 で、先ずはそのコムラサキから。 ![]() (コムラサキ) ムラサキシキブより樹高も葉のサイズも実の房も小振りで、枝垂れてこじんまりと上品なのがコムラサキ。 これに対してムラサキシキブは枝垂れず、野趣ある風にて、ヤカモチ的にはコムラサキよりも好ましく思われるのであります。 紫式部の娘・藤原賢子はその夫の地位などから、大弐三位などと大層な名で呼ばれていて、小紫などとは呼ばれないが、植物の方は、コムラサキという名で呼ばれる。 秋の庭 枝垂れ実をなす 小紫 いでそよその名 忘れやはする (小紫式部) (本歌)ありま山 猪名の笹原 風ふけば いでそよ人を 忘れやはする (大弐三位 後拾遺集709、小倉百人一首58) ![]() (同上) しかし、今日はコムラサキの上品さを愛でることにしよう。 そして、実の白いのもありました。 コムラサキの白品種で、名はコムラサキで変わりがないのかと思ったら、シロシキブという名であるらしい。 ![]() (シロシキブ) まあ、実が紫色でムラサキシキブ、コムラサキであるから、実が白ければシロシキブで、至極まっとうな命名であるが、イズミシキブ(和泉式部)などと洒落てみて欲しかった気もしないではない。 和泉式部も紫式部と同じく中宮彰子に仕えた女官であるが、その娘は小式部内侍と呼ばれる。 銀輪を 駆けゆく道の 道の辺に 枝垂れ真白き シロシキブ見ゆ (小白式部) (本歌)大江山 いく野の道の とほければ まだふみもみず 天の橋立 (小式部内侍 金葉集586 小倉百人一首60) ![]() (同上) シロシキブはコムラサキほどには好まれないのか、コムラサキほどには見かけない。それ故かヤカモチにはシロシキブの方が好ましく見える。 ![]() (同上) では、もう少しじっくりと眺めてみよう。 道の辺の シロシキブの実 つばらに見む 撮りてブログの 記事となすため (老家持) (本歌)難波潟 潮干のなごり つばらに見む 家なる妹が 待ち問はむため (神社忌寸老麻呂 万葉集巻6-976) ![]() (同上) 白い実をとり上げたら、赤い実もとり上げなくては平仄を欠くだろう。 ![]() (サネカズラ) サネカズラは、カズラという名が示すように、蔓性植物。 このように、もじゃもじゃと生い茂っている。高木があれば、それに絡みついて勢力を伸ばすという点ではフジと同じ。 ![]() (同上) サネカズラは、万葉ではサネカズラともサナカズラともいうがサナカズラという例の方が多いようです。 藤原鎌足が鏡王女を口説いた歌「玉くしげ見むまど山のさなかづらさ寝ずはつひにありかつましじ」(万葉集巻10-2296)という、何とも身も蓋もないストレートな歌があるが、サナとサネの音の類似から「さ寝」という恋人との共寝に通じる植物であったり、つるが枝分かれして伸びてゆき、先でまた出会って絡み合ったりすることから、「後にも逢おう」という意味が込められた植物であったりしたのである。 ![]() (同上) フジと違って、マメ科ではないので、このような美しい赤い実がなります。別名ビナンカズラ(美男葛)と呼ばれるのも頷ける。 ![]() (同上) こちらは、赤く熟す前のサネカズラの実。 まだ美男葛にはなり得ていないサネカズラであります。 ![]() (同上) 赤ついでに、これも。 ![]() (アカマツ) アカマツと言えば、秋の香、松茸であるが、この松の周囲には菌床はありそうもないから、アカン松でありました。 それでもなかなか立派な佇まいの松でありました。 松茸の 有無な尋ひそね 高々に 一つ松なり 赤松われは (松家持) 以上、紫、白、赤と、色それぞれの秋でありました。 <参考>花関連の過去記事 花(4)・2020.4.~ 花(3)・2017~2020.3. 花(2)・2012~2016 花(1)・2007~2011 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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