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偐万葉田舎家持歌集

偐万葉田舎家持歌集

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2023.10.14
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カテゴリ:銀輪万葉
(​承前​)
​​​​​​​​​​​​​ 稲荷山古墳を後にして、水路沿いの道を走っているうちに古墳公園から外れ、古代蓮の里へと続く道に入ってしまったというところで前記事が終わりましたので、そこから始めます。
 左側が旧忍川であるが一面に葦が繁茂し川面が見えない。右側は稲田が続き、稲田と道を仕切るかのようにセイバンモロコシがずっと先まで生えていて、道の反対側の葦に対峙しているかのよう。
 自転車で走る先をイナゴが次から次に飛び立つ。それを繰り返していると、イナゴに導かれながら走っているような気にもなって来る。

(古代蓮の里へと続く道)
 前方に見えているのが、古代蓮の里にある展望室タワー。
 蓮の花の時期は終わっているが、タワーに上ると田んぼアートが見られるということなので行ってみる。

(古代蓮の里)
 古代蓮の里に到着。駐車場に駐車している車もまばら。蓮の花の時期でもない平日とあって、訪ねる人も少ないのだろう。

(古代蓮の里・パンフレット)

(同上)

(古代蓮会館入館券)

(古代蓮会館と展望室タワー)
 古代蓮会館に入館し、蓮に関する色々な展示を見学した後、展望室タワーに上ってみることに。
 展望室タワーは50mの高さであるが、エレベーターに乗るとボタンは1Fと2Fの二つしかない。50mの高さでも展望室は2階になるということか。
 まあ、塔というのはそうしたものであるということですな。
​​​​​​​
(展望室タワーから眺める古代蓮の里)
 奥に見えているタンク群は埼玉県行田浄水場。
 ごくまれに咲き残っている蓮の花も見られましたが、ご覧のように既に季節は蓮の実のそれか、それさえも終わろうとしています。葉が枯れていないだけが救いであるか。
 こちらは、北西方向。反対側に回ると、田んぼアートである。

(田んぼアート)
 「翔んで埼玉Ⅱ」という文字が見えるが、何のことかよく分からない。
 調べてみると、映画化されたギャグ漫画の2作目作品とのことで、近々劇場公開される運びになっているものだということが分かりました。
 ヤカモチと同等レベルの人は、下記<参考>をご参照あれ(笑)。
<参考>​翔んで埼玉​・Wikipedia

​​​​(同上)
 古代蓮の里を出て、やって来た道を引き返す。
 来る途中で「辯天門樋」という標識が目にとまって気になっていたので、それがあるらしい脇道に入ってみた。

​​​​
(辯天門樋)<参考>​辯天門樋​・行田市ホームページ
 辯天門樋というのは、
​​​​​​​​​​​​旧忍川から農業用水路への取水口として、明治38年(1905年)6月3日に竣工した、水門である。
 辯天門樋の背後に写っているのがヤカモチのママチャリであるが、道路側から水門を撮影することはできないので、自転車を降りて、柵を乗り越え門樋側に進入、できるだけ腕を伸ばして自撮りに似た恰好で撮影しなければならない。川側に転落しないよう注意を払いつつシャッターを押さなければならないので、このアングルが精一杯である。「辯天門樋」という文字と下部の水面と水門全体が写る画像を撮りたかったのであるが、そうしようとするともう少し川側に入り込まねばならない。しかし、ヤカモチが居る側の水門の出っ張りはそれを可能にするほどにはなく、足の踏み場が確保できないので、川に転落ということになる。反対側に回れば出っ張りが長く伸びているので可能であったかもしれないが、そこまでして撮るほどのものではない(笑)。
 裏側も撮ってみようとしたが、こちらは高い草が生い茂っていてアングルがとれる位置まで進むことは不可能。
​​​​

(同上)
​ 辯天門樋の説明碑です。​


(同上・説明碑)
 太陽が西寄りに傾き、ヤカモチの影、影持が写ってしまってお見苦しい限りでありますが、雲に日が隠れるまで待っている訳にも参らねばご容赦願います。
 元の道に戻って、やって来た道を逆に辿る。
 地理感のない場所で道に迷わないためには、これが無難な戦略。
 で、水路沿いのイナゴの道に入るとすぐに右手に見えたのが、先ほどの辯天門樋。来る時にも同じ景色が見えていた筈であるが気が付かなかったのだろう。上の説明碑はこの位置にこそ欲しいと思う。

(辯天門樋・南側から遠望)
 稲荷山古墳の前まで戻り、再びさきたま古墳散策であります。

(将軍山古墳)
 将軍山古墳は、墳丘上に円筒埴輪が並んでいるのが見えたので、墳丘に上れるのかと行ってみたが、上り口は存在しない。古墳の一角に展示館のような小さな施設があったが、閉館休業になってしまっているようで閉め切られたまま。

(同上・説明碑)
 次は、二子山古墳。
 さきたま古墳群では、この古墳が最大のようです。

(二子山古墳)
 上の写真は、公園内の広い道路から、この古墳が目に入ったところで通路らしき細道(上の写真の色が濃くなっている垣根に沿った空間)を通って近くへ行ったものの、近づき過ぎていてカメラ画面に古墳の全体像が収まらない。そこで手前の草原をこちら側に歩いて、かなりの距離をとって撮影したのだが、それでも全体が入らなかったもの。

(同上)
 そこで、もう一つ先の進入路から入って撮影したのが上の写真。
 こちらが正しい進入路であったようで、説明碑も脇に設置されている。

(同上・説明碑)
 愛宕山古墳という小さな古墳の前から県道77号に出て、前玉神社へと向かう。

(愛宕山古墳)
 前玉と書いて「さきたま」と読みます。

(前玉神社)

(前玉神社の大鳥居説明碑)
 前玉神社は、浅間塚古墳の墳丘上にある神社。
 古墳全体が神社になっている。

(浅間塚古墳説明碑)
 参道を奥に進み、最初の階段を上ったところにあるのが、浅間神社。

(前玉神社摂社・浅間神社)
 浅間神社は、忍城内にあったものを勧請して祀ったとのことで、明治以前は、この浅間神社を「下ノ宮」、墳丘上の前玉神社を「上ノ宮」と称していたとのこと。
 浅間神社の祭神は、写真に写っている旗でも分かる通り、木花咲耶姫であります。神武天皇の曾祖母ですな。
 浅間神社を背にして参道を進み、右に曲がったところに西行の歌碑がありました。

(西行歌碑)

和​(やは)らぐる (ひかり)(はな)に (かざ)られて 名をあらはせる さきたまの神 (西行)

※さきたまの神=この前玉神社のこと

​​​ 岩波文庫の「西行全歌集」では上記の歌になっているが、こちらの歌碑では「やわらぐる ひかりをはなに かざされて 名をあらわせる さ記たまの宮」となっている。

(同上・裏面)
 歌碑裏面を見ると「西行法師奥州途上詠みたる歌」とあり、「西行参拝約八百年記念、金婚に当り神仏に感謝して 氏子一老夫婦 昭和六十一年丙寅四月十五日」と記されているのみで、奉納した氏子の老夫婦の名前は記されていない。昭和61年は1986年だから今から37年前。結婚して50年記念の建立であるから、20歳で結婚したとしても、現在の年齢は107歳である。今もご存命である可能性はかなり低いかと思われるが、このご夫婦の奥ゆかしいお人柄が偲ばれます。
 それはさて置き、西行さんの時代には忍城などは無かった訳だから、忍城から勧請したという浅間神社は無かったこととなり、西行さんが参拝したのだとしても、浅間神社は目にしていないということになる。

(前玉神社本殿前の階段左右の石燈籠 行田市ホームページより転載)
 前玉神社本殿前の石段の左右に万葉歌が刻まれた石燈籠が建っている。
 万葉燈籠とも呼ばれているもので、元禄10年(1697年)10月15日に氏子一同が奉納したものだとのこと。
 こんなに古い万葉歌碑を見るのは初めて。

(左石燈籠の万葉歌碑)
 左側石燈籠に刻された歌はこれ。

​埼玉​(さきたま)小埼(をさき)の沼に 鴨そ翼霧(はねき)(おの)が尾に 降り置ける霜を (はら)ふとにあらし
                           (高橋虫麻呂歌集 万葉集巻9-1744

※577577の旋頭歌である。
※小埼の沼=埼玉県行田市埼玉付近の沼

※翼霧る=水鳥が羽ばたき、しぶきを霧のように立てることを言うか。
​​(埼玉の小埼の沼で鴨が翼を振ってしぶきを散らしている。自分の尾に降り置いた霜を払おうというのだろう。)

 この小埼の沼とされる場所は、前玉神社の東方3kmほどの位置にあるのだが、当日は何処にあるという情報の持ち合わせがなかったので、立ち寄ることがないままでありました。残念。
 おしどり夫婦という言葉があるが、鴨は雌雄一対で行動を共にするというイメージが万葉の人々にもあり、鴨という語は「共寝」や「手枕」というものを連想させるものであったようだ。
 歌の作者、高橋虫麻呂も鴨の羽ばたきの音を耳にして、家なる妻のことに思いを馳せたのかもしれない。次の歌などとも共通する「孤愁」があると言ってもよいだろう。

葦辺行く 鴨の()がひに 霜降りて 寒き(ゆふへ)は 大和(やまと)し思ほゆ
                       (志貴皇子 万葉集巻1-64

葦辺行く 鴨の羽音の 音のみに 聞きつつもとな 恋ひわたるかも
                               (万葉集巻12-3090
​​
<参考>​高橋虫麻呂​・Wikipedia

​ 
​(右石燈籠の万葉歌碑)
 右側石燈籠に刻された歌はこれ。

​​​埼玉​(さきたま)​の 津に()る舟の 風をいたみ 綱は絶ゆとも (こと)な絶えそね
                          (東歌 万葉集巻14-3380
​​​

​​​(埼玉の船着き場に停泊している船が強い風でもやい綱が絶えるようなことがあっても、便りは絶やさないでください。)​


​​​​​​
(前玉神社・石燈籠説明碑)
 はい、前玉神社の本・拝殿です。
 祭神は、前玉彦命と前玉比売命
 前玉彦はいかなる神かは存じ上げないが、この地を治めた首長が神格化された国津神なんだろう。前玉比売は古事記に天之甕主神
(アメノミカヌシノカミ)の娘と書かれているだけで、アメノミカヌシ、サキタマヒメについてもそれ以上の記述はないので、いかなる神であるのかは不明である。
​​​​
(同上・拝殿)
 まあ、何であれ、埼玉という地名は、行田市のこの地域の町名・埼玉や前玉神社の社名・前玉に由来するものであるから、行田市埼玉は埼玉のルーツということになる。

(絵馬ならぬ絵猫)
 何故かこの神社の絵馬は猫の顔の形をしている。

(前玉神社の猫)
 そして、猫も居る。
 首輪をしているから、野良ではなく家猫である。
 神社で飼われているのか、近所の家の猫が遊びに来ているのかは、にゃんとも分からないのである。
 にゃんとも分からなくなったところで、宿泊のホテルへと帰ることとします。ホテルは武蔵水路
を挟んでさきたま古墳公園に隣接する湯本天然温泉ホテル。茂美の湯という日帰り利用も可能(多分)な温泉があり、隣接する建物は大衆演劇の劇場にもなっているというホテルである。この日は公演をやっている風にも見えなかったが、ホテルのフロントで尋ねると劇場側の建物の2階がレストランになっているとのことであったので、そこで夕食ということにしたのでありました。
 ということで、本日はここまでとします。(​つづく​)
​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​​
<参考>銀輪万葉・関東編の過去記事は​コチラ​。





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最終更新日  2023.10.16 21:10:24
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